異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
「やめて」
「どうしてだよ」
「誰がティーくんのいとこを殺したか解らない。それにこいつらは荒れ地送りにしないと。でしょう?」
ティーくんは俺を睨みつけ、しかし、目を逸らした。畜生、と喚いて。
鉛筆の芯みたいなやつを、リーニくんが見付けた。工具箱のなかにあったのだ。
それで、俺が持っていた紙に、娼妓殺しを告発する文をティーくんが書く。四枚つくって、全員で持った。もしはぐれても、この紙を警邏隊へ渡す。死んだとしても、荷物のなかから見付けてもらえるよう。
四人がかりでハツァルとジュアをブランケットでぐるぐる巻きにし、部屋を後にする。
「あの……ふたごは?」
「ああ、ベッドの柱に括りつけておいた。起きてたから、一発蹴って」
リーニくんは爽やかに笑う。「マオとヴェンゼが手洗いに立った後、あいつらいきなり僕とティーを押さえ込んで、舌がぴりぴりする薬をませてきたんだ。こわかったよ。すぐに気絶しちゃって」
ぴりぴり、かあ。それをごまかすための炭酸水割りだったのだろうか。
「マオ、おでこが赤いよ」
ふらつきつつもひとりで歩けているヴェンゼくんが、雪だるまの頭のほうの部屋までくると、俺の額を示した。「大丈夫? 殴られたの?」
「さあ。倒れた時に打ったかな」
「お前、どこに捕まってた?」
ティーくんが訊いてきた。俺は、えーと、と、思い出すふりをする。
「普通の客室っぽいとこ。目が覚めて部屋を出たら、廊下の左右に、扉がいっぱいあって」
「あ、じゃあ俺とおんなじだ。マオも、衣装戸棚に?」
「衣装戸棚?」
「違うのか」
ヴェンゼくんが小首を傾げ、ティーくんは横目で俺を睨む。
「俺はさっきの部屋だったけど、目が覚めたあとお前らをさがした。お前とはすれ違わなかったよな」
俺は苦笑いした。「俺はすぐに逃げようとしたから、こっちの部屋に」
カーテンをめくり、雪だるまの体のほうの部屋へ這入る。
三人もそうした。「成程な。でも、じゃあどうして戻った?」
「ひとりは心細いよ。でしょ?」
「……そうか。そういうことにしとく」
ティーくんはそう云って、クッションをひとつ、蹴っ飛ばした。「あいつら、荒れ地送りになるといいよな」
それには全員頷いた。
扉は、錠が降りていたりはしない。
でも、やたらと重たくて、四人がかりで体重をかけ、漸くと開いた。手首を痛めたらしいリーニくんも、扉に肩をつけ、顔を真っ赤にして頑張ってくれた。
廊下は真っ暗。ヴェンゼくんが右手を胸の高さにして、ぶつぶつ云うと、ぼうっと光があらわれる。「熱魔法? 凄いなヴェンゼ」
「これと、水を出す魔法しかできないよ。それも、ほんのちょっと」
感心するリーニくんに、面映ゆげに返し、ヴェンゼくんは廊下の左右をうかがう。
「で、どうする?」