異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
割合、みんな落ち着いていた。
というよりも、虚脱状態だったのかもしれない。変な薬で眠らされ、殺されそうになったのだ。感情なんて麻痺している。
それぞれがつかえる魔法と、特殊能力、能力値を確認した。
リーニくんは、収納空間持ち、魔法はつかえない。体力:可、魔力:不可。職業は驚くなかれ、娼妓。加護はと訊けば、仕事に役立つことだよと笑ってはぐらかされた。
ヴェンゼくんは、特殊能力なし。魔法は、お水を出すのと、灯を点すのだけで、それも沢山はつかえない。体力:可、魔力:可。職業は薬屋。
ティーくんは、速歩という、速度が上がる特殊能力持ち。魔法は、小さな火を出すのと、お水を出すのはできる。体力:良、魔力:可。職業は魔導士。ただし、魔導士になってやっと魔力が可だ、とのこと。
「俺は、収納空間があって、魔法はつかえない」
「ひとつも? じゃ、お仲間だ」
「職業は、ちょっと……加護は、状態異常軽減」
ということにした。三人は感心したのか、はーっと息を吐いて頷く。「すげーじゃん」
「能力値は?」
「体力が可。魔力は優」
「優? まじで? なのに魔法つかえないのか?」
こっくり頷いた。
ティーくんが頭を振る。「そっか。それで……そういうこともあるんだな」
「びっくりした。魔法がつかえないって、僕みたいな魔力のない人間だけだと思ってたよ」
「グエンも、魔力は良だけど、一覧に魔法が載ってないんだって云ってた」
リーニくんが嘆息した。
確認して解った。娼妓は、体力も魔力も低い、この世界だと弱者、が選ばざるを得ない仕事だ。
「かたまってないと危ないね」
灯を一旦消して、ヴェンゼくんが云う。リーニくんとティーくんが同意した。
俺は収納空間から、ランタンをとりだす。「ティーくん、火をつけてもらえる?」
ティーくんは狼狽えつつ、ランタンに火を点した。
「お前、収納空間にいろんなものいれてるんだな」
「これくらいしか取り柄がないから」
うーん。俺ひとりなら、冒涜魔法無双!ができなくもないけど、……いや無理だな。ふたご戦で解ったけど、俺の反射神経は死んでる。一対一じゃなきゃなんの勝ち目もない。
「あいつらの手下、女ばっかりだったな」
リーニくんが云った。ヴェンゼくんがリーニくんを見る。「そうなの?」
「うん。あー、そっか、ごめん。職業加護で、ちょっとね」
ほう。
ティーくんがぼやいた。「っても、体力優とか、魔法ばんばんつかえるとかの、私兵だろ。真正面からは無理だぜ」
「それはそうだな。よし」
リーニくんがぱちんと手を叩く。「僕が囮になろう。その間に逃げて、警邏隊を呼んで来て」