異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
苦労して言葉をさがした。「あの」
「……うん?」
「俺、状態異常にちょっと強くて。動けなかったんですけど、会話が」
嘘ではない。動いたらまずいから動かなかった。
あー、と、ライティエさんは目をぱちぱちさせる。
「そっかあ。ベリャックの毒も、全然効かなかったもんね。捕まった子のなかに毒婦が居たって聴いて、不思議だったの。状態異常軽減なんて凄ーい」
無効なんですけどね。状態異常に強いと云うと、皆さん勝手に軽減だと思ってくれる。助かる。
メイラさんが組んだ足に肘をついた格好で、くっくっと笑った。「成程ね。わたしは状態異常わずかに軽減だけど、経験あるよ。動けないのに、意識は割合はっきりしてる。ただし飛び飛びで」
思わぬ方向から援護射撃があった。ライティエさんは完全に納得したようで、かりかりと鉛筆(の芯)でメモを取る。
「状態異常軽減なんてめずらしいから、隠したいの解るよ。報告書には書くけど、ほかには内証にしておくね」
「あ。ありがとうございます」
「ううん。あ、それと、もうひとつ。マオくん、どうしてここに来たの?」
それについてはまったく考えていなかった。かたまる。
ほーじくんが心配そうに俺の手を撫でた。「マオ?」
ほーじくんだと、手を撫でられてもいやじゃない。この子は特別。鳥さんだもん。
「あの」
ティーくんが、片手をあげた。「俺が頼んだんです。マオ、されきに目を付けられてたから、もし誘われたら断らないで、一緒に来てくれないかって」
庇ってくれた。どうしてだろう。
ヴェンゼくんが頷く。「マオ、色々聴きだそうとしてたもんね」
「まきこんでごめん」
ティーくんが悄然として侘びると、メイラさんが困った顔になる。俺は慌てて云った。「無理に連れてこられた訳じゃないし、怪我もしてないから平気だよ」
「でも、囮にまでなってくれて」
「それも、適材適所でしょ? こっちこそ、警邏隊を呼んでくれてありがたかったよ」
「あの」
隊長さんが云った。俺達はそちらを見る。
隊長さんが、頭を下げた。
「申し訳ない。娼妓が行方知れずになる事件は、ずっと前からあった。でも、まちからまちへ流れて商売する者が多いこともあって、警邏隊ではあまり重視してなかった。大金せしめてほかのまちへ行ったと証言が出たら、それを丸のみにして。きちんと調べていなくて、申し訳ない」
メイラさん、ライティエさん、マルロさん、ヨーくんも頭を下げた。
隊長さんは顔を上げ、ティーくんへ低く云った。
「あなたのように、自力で色々調べようとする娼妓が居るなんて、思ってもみなかった。わたし達がきちんと調べていればよかった話です。怪我がなかったとか、結果的に無事だったからでは済まされない」
「いえ」ティーくんは声を上ずらせた。「マオは兎も角、俺はたいしたことしてません」