異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
隊長さんは感情の読めない表情で、ゆっくり頭を振った。
「とにかく、これは傭兵協会として、恥ずべきこと。私兵のなかには傭兵崩れも居たというし……あなたがたには、後ほどきちんと賠償いたします」
隊長さんは、唖然とするティーくんへもう一度頭を下げ、失礼します、と邸のほうへ歩いていった。ヨーくんが慌ててそれを追う。
「……賠償って」
「もらっときなよ。協会としては、今度のことでこれ以上悪い印象つけたくないの」
メイラさんはぶっきらぼうにいい、それから溜め息を吐く。「実際のとこ、傭兵協会の手落ちだよこれは。よそのまちへ移ったんだって証言が出ても、本当にまちから出たのか門衛に訊くことさえしてない」
「今、協会本部に居るバルドから連絡があってね」
何故そんなことをメイラさんが知っているのだろう、という顔をしたからか、ライティエさんが苦く笑って教えてくれた。隊長さんの謝罪も、それでか。
「いいわけになるけど、娼妓が行方知れずになるのは、この何年か、今の時期に集中してるの」
「……試験に来るひとが多いからですね」
俺の言葉に、ライティエさんは頷く。
「はいる時は厳しいけど、数がとても多いから、勢い、まちを出る時の審査は適当になって。かどわかしや迷い子も増えて、出ていくひと達にまで気を配れない。でも、形の上だけでも審査はするって、協会規定に書いてあって……」
「通したような気がする、って、門衛は証言してたって。ばかだよほんと」
それは、でも、そういう事情を知っていて、ハツァル達が今の時期に娼妓を殺していたということでは。
ティーくんもそう感じたか、頭を振った。
「俺、警邏隊のおじさんに、ちゃんと話聴いてもらえました。リコの……いとこの縄張りのやつらが、嘘云ったのがいけないんだ。あいつらきっと、悪党どもに買収されて……」
「おじさんは酷いんじゃねえのか、お嬢ちゃん」
のっそりやってきたラールさんが云った。「俺ァまだ二十六だぜ」
「ラールさん」
ティーくんが立ち上がる。ラールさんはその頭をぽんぽんと撫でた。
リーニくんが、おー、と、感嘆の声らしいものをあげた。
「ラールのことだったんだ、ティーが云ってたの。最近あんまり遊びに来てくれないよねらーる?」
「語弊のある云いかたはやめろ、リーニ。またパンもってくから、お前はもう少し客からふんだくれや」
「ちびたちが待ちわびてるよ。らーるおじさんこないのー? って」
「そっちでもおじさんかよ」
ラールさんがしょぼんと肩を落とす。
……え?
「ラールさんって俺の二個上だったの?!」
こんなかっこよくひげを蓄えてて?