異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
さてさて、お茶の時間だ。ジーナちゃんと焼いたクッキーを出すことにした。マシュマロがないからお安い。
お茶は、りんごを細かい乱切りにしたものを沈め、香りとほのかに甘みをつける。結構おいしいんだよね、これ。
それと、ごまのクリーム。くろごまを(冒涜魔法で)すりつぶして、お砂糖とちょっとのバターをまぜたもの。クッキーにも合うけど、ごわっとしたパンにつけて食べてもいいんだよねえ。
お茶の時間が一番にぎわっている気がしたのだが、気の所為ではないようだ。
「まーお」
メイラさんが、組んだ脚に肘をついて、クッキーのお皿をテーブルへ並べる俺へ云う。「相変わらずおいしいねえ、あんたのお菓子」
「それはどうも。メイラさん、夜ご飯、食べたいものあります?」
「なーんでも。ね、最近西のほうでさ、あんたのお菓子真似してるお店があるんだよ。でも全然。高いばっかり」
「ここ、安くておいしいから、お客さんがだいぶ流れてきてるみたいだものね?」
ライティエさんがお茶を飲んでにっこりする。
メイラさんは早速クッキーをかじった。「うま。よそはさあ、けちってんのよ、材料費を。そんで、しゃれたクロスとか、カーテンとか用意してさ。あんなんより量と安さだわ、わたしは」
「わたしもー」
うーん、でも、おしゃれなお店で、おしゃれなテーブルと椅子に綺麗なレースのクロスがかかってて、磁器のティーセットなんて出てきたら、結構気分いいと思う。そういう時間と空間を買ってるって思えば。
「そこはまあ、お店によりけりじゃないですか?」
「でもお菓子はまずかったわよ」
「それはいけませんね」
本末転倒だ。沢山が無理ならおいしいお菓子をちょっと出せばいいじゃないか。お茶を楽しみに来てるんだぞ!
メイラさんは、協会の仕事でそちらのほうの喫茶店? でお茶をしたらしい。そしたら、メイズオブオナーもどきのもどきが出てきて、えぐいしむつっこいしまずかったそう。
「ちゃんとした菓子職人を雇ってるはずなのにさあ。もう片方んとこでは、ほら、りんごのやつ。あれの偽物が出てきたよ」
俺のも本物かどうかは微妙だが、本物を食べたことなら何回かある。それがあるとなしでは大違いだ。見たことも聴いたこともないものは上手につくれないし、まずいものを食べてたらまずいものをつくってしまうのである。
「つくりかたならいくらでも教えてあげるんですけどねえ」
「げ、マオあんた、そういう変に気前がいいの、やめなよ。損するよ」
「でも、そしたらメイラさん達がいつでもおいしいお菓子食べられるじゃないですか? たーつあさんみたく、きたくてもこられないひと、いるし。それに俺も食べてみたいです」