異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
じゃあ掲載許可を出しておこう、と決まった。許可を出したからと云ってかならずのるわけではないが、だめでもともとである。
お昼が過ぎて、俺がクッキーを量産している頃(サッディレくん達、ツァリアスさん達がお手伝いしてくれた。つまみ食い自由)、ジーナちゃんのお家の使用人がやってきた。
使用人は、ラルテナさんと云う、中年男性。収納空間持ちで、沢山のサンプルを持ってきてくれた。
サイズは、A6くらいからA1くらいまで。サイズによって差はあるが、一枚あたり大体エスター2個から14個くらいに収まる。ついでに、品質はいい。試しにお水で濡らしてもなかなか破けないし、適度な厚みがあり、手触りもごわごわしておらず柔らかい。
色が薄茶色というか生成りというか、と云う感じなのは別にいいのだが、ディファーズのひと的にはそこは減点ポイントのようだった。色が悪いのには目を瞑って戴けるとさいわいです、と二・三回口にしていたから。
計算してみたら、大きいほうが安かった。カットの手間がかかると云うことかな。セロベルさんと相談し、A1、A2、A3を買う。8000枚づつで、合計銀貨20枚。夜までには届けてくれる。おまけで、ラルテナさんが持ってきていたA4とA5の紙を、100枚づつつけてくれた。
やたら恐縮するラルテナさんへ、お菓子を売っているお店ならこれは欲しがると思うと云うと、嬉しそうに、主へ伝えます、と云って帰って行った。
「それ、手洗いに置いておくか?」
セロベルさんが、おまけの紙を示した。
ちょっと贅沢な気もするが、市場で売っているどの紙よりも安いから、落とし紙にしたってばちはあたらない。あたらないが……。
ふいと思い付いた。「これにクッキー包んで売りましょう」
「ア?その大きさじゃあたいした量包めねえだろ」
「いいんですよそれで」
例えば、ヴァニラクッキー、たまご多めクッキー、しっとりタイプのバタークッキー、の三種類が、それぞれ4枚で詰め合わせになっているとする。でも、ヴァニラクッキーだけもう2枚欲しい。かといってその為にふた包み買おうとしても手持ちが少ない……となったら、諦めるひとが多いだろう。
そんな時に、2枚はいっている包みがあったら、絶対買う。
そんなようなことを説明する。「で、価格は大きな包みを買ったときとかえません。12枚いりをエスター60個で売ってるとしたら、2枚いりはエスター10個です」
「オイオイ、小分けにする手間もかかるし、紙は小せえほうが高いんだぜ。採算が合うのか?」
「合わなくてもいいんですよ」俺は自信満々で云う。「だって、売れ筋商品が解るでしょ」
セロベルさんとツァリアスさんが、あっ、と云う顔をした。流しのお掃除をしていたグロッシェさんが振り返る。「成程。だから、小さい包みは同じ味だけ包むんですね」
「はい。それで人気の商品が解ったら、大きい包みにそれを多めにいれたり、お食事のデザートや、お茶の時間に出す割合を少し高くします。どうです?」
反対意見は出なかった。なので、それから楽しいクッキー包みタイムと相成った。