異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
次の日、ジーナちゃんと市場へ買いものに行って、帰る途中、ルッタさんと一緒になった。
俺は眠くて頭がまともに動いていなかったのだが、ジーナちゃんとルッタさんは低声で言葉を交わしていた。そういえばルッタさんはディファーズからの亡命者だ。ディファーズで生まれ育っているジーナちゃんとは話が合うのかもしれない。
「ああ、廟で聴いたんですけど……」
ルッタさんが思い出したように云った。「最近、ディファーズでは、人攫いが横行してるとか……本当なんですかね?」
「よく聴くわね。このところ特に」
物騒な話だなあ。
俺は欠伸をする。
「捕まらないの?犯人」
「組織だってやっているみたいだから、末端の実行犯を捕まえてもなんともならないわ。マオ、気を付けてね」
何故か釘を刺されてしまった。俺は首を傾げるが、ふたりは真面目な顔だ。
四月の雨亭への道すがら話を聴いてみる。
事件が起こっているのは、主にディファーズ南部。狙われるのは若い女性か、少年。馬車に引き摺り込まれて袋に詰め込まれる、と云うおそろしい目に遭うらしい。で、そのまま馬車で運ばれていく。
その段階で逃げ出せた被害者がいて、手口の一部は判明しているわけだが、馬車でどこへ連れて行かれ、最終的にどうなるのかは解っていない。
「というか、公式の発表はないわ。多分、実際女や子どもをとらえる者達と、それを利用する者達が別なんでしょう。他国へ売られているのか、或いは……」
枢機卿なり司教なりの、位の高いひとへの貢ぎ物。
もしくは、お金持ちへ売りつける。
ジーナちゃんはそういうことを云いたいんだろうけれど、どこで誰が耳をそばだてているやら解らない。めったなことは口にしないが吉だ。
ジーナちゃんはちょっと目を伏せる。
「捕吏もばかではないし、きちんとお調べはしていると思うの。きっと、今にも犯人が捕らえられるわ」
「だといいね」俺は頷く。「ジーナちゃんが戻る時心配だもん」
「わたしは平気」
ジーナちゃんはドレスのスカート部分を軽く叩く。そっすね。
朝ご飯は、炊き込みごはんにした。丁度、おいしいじゃがいもがある。
お米はといで、お水に浸しておく。
具は、いちょう切りの人参・千切り大根・干し椎茸・さいの目に切ったじゃがいも。お鍋にお米をいれ、水加減をして、片手でふた掬いくらいお水を減らす。お塩をいれてよくまぜ、お米を均し、まんなかだけ少しくぼませる。お醤油をひと垂らし。そこへ具をのせて、植物油をふたまわししたら、蓋をして炊く。千切り大根と干し椎茸は戻さない。じゃがいもは多めがおいしい。じゃがいもの炊き込みごはんって信じられないくらいおいしいもん。