異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
ゲームは、ちんちろりんみたいなやつだ。掛け金の上限は、なんと貝貨100枚。冗談じゃないし尋常じゃない。ふざけてるのか?
しかし、俺は賭けごと大好きという役柄を維持しなくてはならない。ので、ワアスゴイ、みたいにはしゃいで、貝貨を5枚賭けた。そうしたら40枚になって戻ってきた。うわあ、えぐい。えぐいよ。
表情に出してはいけないので、俺は幸運に大喜びという演技で、きゃっきゃっと笑った。このキャラ疲れるう。
エルン、リュー、アラン、全員満足げににこっとした。俺が勝ったのにここまで嬉しそうってことは、やっぱりそういうことな。
四巡くらいしたところで、俺は貝貨200枚を持っていた。「わあ、すっごく勝っちゃった」
「ついてますね」
「やあ、かなわないなあ」
「なかなかやるね、美人さん……」
おいおいまじかよ。これで騙されると思ってんの?本気で?
申し訳ないが、それなりのイケメンであるリューやアランに誉められてもまったくいい気はしなかった。ていうかうざい。きしょい。これがほーじくんだったら照れちゃう自信あるけど。……って関係ねえ!
やばいやばい、気が逸れていた。俺はにこにこして貝貨をおしやる。「じゃ、次はこれだけ賭けます」
「よし、僕はこれだけ」
「俺はこれを」
さいころを振った瞬間、背後のテーブルから悲鳴が聴こえてきた。
肩越しに見る。あの女性が泣き顔になっていた。負け始めたらしい。同じテーブルの男性達がしきりとなぐさめているが、今日はもうやめておく、と、女性は席を立つ。男性のひとりが女性と一緒に出て行った。
「マオさんの番ですよ」
「あ、はい」
目を戻す。さいころを振った。なにかの役ができたそうで、俺の勝ち。ややこしいので覚える気力が出ない。
その後は勝ったり負けたりで、終わる頃には貝貨を100枚くらい持っていた。もう遅いから帰ります、と席を立つと、リューがエスコートを買って出る。わあ、いやだー。
俺はにこっとして、リューの腕をとった。いやだけど仕方ない。俺はカットがかかるかおなかがすくまで役をやり通すタイプである。
リューは、赤みの強い茶髪を短く整えて、カラフルな紐と羽根で飾り、瞳は濃いグレー。肌は、ミルクばっかりのココアという感じ。
「マオ、君ってとても可愛いね」
うわ、ぞっとしたぞ。まじで。
「そう?」
「ああ。君が可愛いものだから、投げても投げてもまともな役にならなかった」
リューは俺を口説く役目らしい。巧くいったら続行、だめならアランに交代、かな、多分。相手役がかわるのは混乱のもとなので、続行してもらおう。俺は可愛らしく小首を傾げた。「リューさんはとってもかっこいいね」