異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
普通の賭場ではなく、そのまま外へ出た。ほかの出入り口あったわ。ユラちゃん災難。
「送るよ」
「……うーん、拙いかも?」
「そう……」
手をとられた、と思ったら手の甲へちゅっとやられた。鳥肌。
リューは微笑む。「じゃあ、ここでお別れか。淋しいね」
「……うん」
「明日も来る?」
「そのつもり」
そう、とリューは小さく息を吐く。「じゃあ、僕も来よう。明日はここだよ。さっきエルンに聴いたんだ」
羊皮紙の切れっ端を渡された。はいはい、解った解った、そういう設定な。
俺は渡されたそれを軽く掲げ、会釈してから歩き出した。単純に建物の裏に出たみたい。ユラちゃんの部下がこっちから出てたら悲惨だ。
しかも普通に門があって、敷地を出られた。ありゃー。うん、裾野では禁じられていないとはいえ、ちょっと後ろめたいことらしいから、こそこそ出入りできるのはおかしくない。リッターくんが何日も張り込んでたのもこの所為?
ユラちゃんまで風邪をひいたら可哀相だが、俺がまた手を貸すと流石に怪しまれる。かといって、出入り口全部にはりこむのも無理があるだろうしな。
いやいや、結構手助けしたし、これ以上は手伝わなくっていいだろう。こっちはこっちでややこしいことになっているのだ。
と、思ったものの、ユラちゃんが明日の晩迷うのも可哀相だし、外に出てから表にまわって、裏口の存在と、明日の開催場所を教える。ユラちゃんは、一応礼は云っておくわ、と、くいと顎をあげた。素直じゃないんだから。
俺はじゃあまたねと云って、四月の雨亭へ戻り、特に何事もなく部屋へ辿りついて寝た。ふっかふっかのお布団にかわってる。もう十一月になるもんな。さむくなるのだろう。
十一月一日。空はどんよりと、雨模様。
ジーナちゃんと市場へ行った。「朔日ね」
「え?」
「月の初め。みんなで高く買う日よ」
なんだそりゃ。
特売日の逆、みたいなことらしい。月の初めはどこのお店も何割増しで売っていて、みんなそれを文句を云わずに買う。ご祝儀ってこと。
そういう風習なんだ。かわってる、と思ったんだけど、もとの世界でも初競りって凄い値段になってたし、その感覚に近いのかも。その月になって初めての営業だから、広義の初物。
ジーナちゃんの云うとおり、売りものはどれも高かった。とりあえず、いつも買いものするお店のものは、高くても買っておく。ご祝儀だからね。
あと、高くても必要なもの、欲しいものは買った。いつもより少なめだが。
今日はお高いものを買うつもりだったが、この調子だとはちみつもお塩もべらぼうな値になっているだろう。今日はやめとこ。