異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
ミューくんも朝ご飯に招くと、ジーナちゃんがにこっとした。
ミューくんは、テーブルについて、レアディさんやルッタさんと話している。ミューくんくらいの構文能力がリッターくんにもあれば、誤解されないんだろうな。
朝ご飯は、パン、馬肉(市場で安く売っていた)のステーキ、キャベツのスープに、ドライフルーツとさつまいもの煮もの。それに、急遽追加した、アーティチョークのタルタルソースがけ。
馬肉は厚めに切って、肉叩きで片面を叩く。お塩とすりおろしたにんにくをまぶして、植物油を敷いた平鍋で蒸し焼きにする。ほんとはお酒をつかいたいところだけれど、それは御法度なので、お湯を差した。火が通ったら、両面にさっと焼き色をつけてお皿に盛る。
キャベツのざく切りを豚ストックで煮込み、お塩とディルで調味したら、スープは完成。
さつまいもはひとくちの倍くらいに切って、同量のドライフルーツとお鍋にいれる。お水をかぶるくらいに注いで、さつまいもに火が通るまで煮る。煮えたら、軽くお塩をして全体に行き渡らせ、できあがり。
アーティチョークは湯がいてばらす。タルタルソースは、油に少しづつお酢をまぜて乳化させ、そこへゆでたまごの粗みじん・たまねぎをみじん切りにして軽くお水にさらしたもの・ケイパーの塩漬け・塩こしょうをいれ、しっかりまぜたもの。小鉢に盛ったアーティチョークへかければ完成。ほんとはマヨネーズがいいんだけど、ない袖は振れない。サルモネラがこわい。
トレイを持っていくと、ミューくんは驚いたような声を出す。「朝から豪勢ですね」
「そう?はい、これミューくんの分ね」
「いただきます……」
タイミングが悪かったみたいだ。お祈りの時間になり、ジーナちゃんがミューくんの隣へ座った。ふたりでお祈りしている。ディファーズ出身のルッタさんも、お祈りにはいっていた。
俺は音を立てないように気を付けながら、ミューくんの前に置いたトレイを、アーレンセさんの前へずらす。アーレンセさんはにこっとして頷いてくれた。ご飯はあたたかいうちが一番おいしいものね。
お客さんでにぎわいはじめた頃に、三人のお祈りが終わった。俺は用意しておいたトレイを三人の前へ置く。収納空間へいれて、冷めないようにしておいたのだ。ジーナちゃんが俺を仰ぐ。「わたしは……」
「先に食べてて。リエナさんも居るからだいじょうぶ」
ジーナちゃんは調理台の前に立つリエナさんを見る。リエナさんは満足そうな微笑みで、大丈夫よ、といっていた。