異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
ジーナちゃんにサキくんのことをなんとか巧く伝えようとしたのだが、結果は芳しくない。サキくんが「巡らせるもの」だといえば、魔力切れは起こさないでしょうね、と返ってくるし、魔物狩りに行っていて、といえば、実戦経験も積んでいるのね、と頷かれた。ジーナちゃん……。
ジーナちゃんのこと好きみたいだよ、と口から出そうになったが、飲みこんだ。それを云ってしまうのは大変な裏切りだ、絶対云わない。
巧くいかないうちに、ジーナちゃんはまかないを食べ終えて、部屋へさがっていった。俺は残りの食料を口へ詰め込み、汚れた食器を流しへ持っていく。セロベルさんが手を丁寧に洗っていた。サッディレくんは不満顔で、チーズをごりごり切っている。「マオ、そいつと仲いいんだ?」
「気が合うし、話も合うよ。一緒に食べたパンケーキおいしかったし」
あのパンケーキにごまクリームはほんとにあうと思う。サキくんとは食の好みが近い気がするんだよな。
サッディレくんは鼻を鳴らす。
「入山できるかも解らないおぼっちゃん。セロベルさんは教員やってたから上っす」
「補助教員な」
セロベルさんがうんざり顔で訂正し、お茶を淹れ始める。
「補助でも教員は教員っす。凄いんです!」
「いやあ、補助だと推薦はできないし、歴然と扱いに差があるぜ」
セロベルさんの言葉に、サッディレくんが頬をふくらませた。たこみたいになってる。「でも凄いことじゃないっすか」
「凄くないとは云わねえけどよ、五、六年補助教員ってのは、そんなにめずらしい話でもない」
アーレンセさんが食堂から戻ってきた。「あと10、お願いします」
「おう」
サッディレくんがナイフを置いて、手を洗った。「アーレンセ、かわるよ」
「ううん、まだ平気。これ持っていっていいですか」
「はい」
アーレンセさんはトレイをワゴンへ乗せ、押していく。
ツァリアスさんが鍋つかみ(にしているなかに綿がはいっている布)を一旦置いて、手を風の魔法で冷やした。ツァリアスさんは魔法のコントロールが素晴らしく上手で、温度調節も完璧にできる、みたい。
「セリィさんは凄いですよ。成績も素行もよかったじゃないですか」
「ツァリアス、お前はのっからなくていいんだよ」
セロベルさんは呆れ声を出したが、サッディレくんの機嫌は持ちなおした。「そうっすよね。ただ顔がいいだけのやつに負けないよねセロベルさん」
「まず戦わねえし競いもしねえよ」
セロベルさんの切り返しが面白くて、俺は笑ってしまった。
……あれ?
サキくん、どうして、俺がジーナちゃんを知ってるって解ったんだろ?