異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
「なにきょろきょろしてるのよ」
「いやあ、誰も居ないなって。魔物が出たからだよね」
「そりゃそうでしょ。まったく、考えりゃ解りそうなものなのに、いったいぜんたいどうしてこんなに試験を長引かせてるのかしら」
ユラちゃんがいらだたしげにそう云った。俺は首を傾げる。
「試験と関係あるの?」
「……は?」
「いや、魔物が出ることと、関係ないんじゃないかなって」
ユラちゃんは蔑むような目をしたけれど、すぐに憐れみの表情が取って代わった。「……まともな大人が居なかったのね、あんたのまわりって」
??
ユラちゃん曰く、今日魔物があらわれたのは、「レントを管轄するばかものどもの所為」。
毎年、九月頭に入学式(入山式、なのかな?うまく聴きとれなかった)があり、家族やお付きの者がついてきて、レントの人口密度は一時的に上がる。凄く遠くから、二ヶ月三ヶ月かけて来る者も居るので、子どもを入山させたからすぐ帰ろうとはならない。レントに暫く滞在する訳。
その上で、十月には入山試験。遅れないように八月くらいからレントに来ている受験生も少なくないし、十月にはとんでもなく大量にひとが集まってくる。
でも、普通なら、試験はすぐに終わる。だから、ひとも減る。それが、今年は(ユラちゃんの言葉を借りるなら、「ばかみたいに」)試験が長引いている。
試験が長引いたら魔物が来る?ってどういうことだろう、と思ったが、きょとん顔の俺にユラちゃんはうんざりした様子で云う。
「あのね。人間が多く居たら、還元しなきゃいけないものの量も増えるでしょ」
……あー、そういうことか!
還元してモノを素にすると、魔物が集まってくることがある……らしい。素と魔力が似通ったもので、それに惹かれて来るんだっけ。
「でも、レントでは、還元していい場所とか、量なんかが決まってるんじゃないの?」
「レントではね。でも、普段レントに住んでない人間が沢山居るのよ。ロアなんて還元はしたい放題じゃないの。そういう決まりを知らないか、知ってても疎かにする連中が、どんどん還元するのよ」
成程、闇還元か。ターツァさんが困ってたな。
ユラちゃんはお菓子の包みをひとつとって、開けた。生姜クッキーだ。ぽりぽり食べている。「決まりを無視した還元は、還元されたものが正確になんだったのか、どれくらいの量なのか、解らない場合が多いわ。それでなくても人間が増えてて、還元しないとくず捨て場は大変なことになるし、住民から不満も出る。どれくらい還元するかは現場の判断に委ねられて、現場の人間は住民からの突き上げにたえられない。そして、還元過多が起こる、って訳」