異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
「還元で魔物が呼び寄せられるって、ほんとなの?」
「因果関係はあると思うわよ」
ユラちゃんは懐からお財布をとりだして、貝貨を数枚寄越した。俺は笑顔で、1枚もらって残りを返す。
ユラちゃんは不満顔でクッキーを噛み砕いた。
「……ロヴィオダーリ領でも、人口増加に伴って魔物の襲撃が増えてるの。レフオーブルは人口の増減が激しくないから調べようがないけれど、リッターのとこはこの何十年ですからね、人口が急激に増えたのは。養蜂家や採蜜家をよびこんで、当然その家族もついてくるし、はちみつを加工して売る人間も必要になる。儲かって道が整備されて、学校や劇場ができれば、それ目当てに移住してくる者が居る。ロヴィオダーリ領は五歳まではただで癒し手に治療してもらえるし、学校も二年目まではただだから」
へー、ロヴィオダーリ領って福祉が手厚い。移住したいひとが多いのも解る。
ユラちゃんはクッキーを包み直し、懐へいれた。
「ロヴィオダーリ領で魔物が大量発生するのは年に少なくとも二回。わたしが知る限りで、一番多くて年に七回、主要なまちが魔物に襲われてるわ。信じがたいことにそれでもばかな人間は住み続けるのよ。ま、今じゃ、まちから離れたところに、それも魔物の少ないところにくず捨て場を設けて、そちらで還元するようにしたおかげでなんとか被害は減らせてるけど……レントは近場に幾つも村があるし、普段から魔物がうろついてる。外で還元して、防衛機能の劣る近在の村に犠牲を払わせるより、自分達の尻拭いは自分達でしようって考えなんでしょ。試験を長引かせなきゃすむ話なのに、愚か者はどこまで行っても愚か者なのね」
流石、ユラちゃんは成績優秀なだけあって、話がわかりやすかった。ところどころ暴言がまざるところもユラちゃんらしい。
「ユラちゃん、賢いねえ」
「ふん、これくらい常識だわ。子どもじゃないんだから知ってて当たり前よ」
ユラちゃんは胸を張ったけれど、ちょっと慌てたふうに付け加える。「ま、まあ、学べる環境がなかったら知らなくても仕方ないと思うわ。それは当人の所為じゃないものね」
「うん?……あ、ねえ、ロアではどうして、還元に関して決まりがないの?」
「土地柄じゃないの。あっちは魔力を持った人間が生まれにくいくらい、魔力のうすい土地だもの。還元を制限したら、寧ろ生活が成り立たなくなるわ」
ああ、そっか。魔力を持った人間が少ないかわりに、土地は豊かなんだっけ。還元を怠ったら、土地が痩せたりするってこと?