異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
「そっか。……じゃあ、一緒につくろうか?」
こういう時こそ、慣れていて失敗しにくい作業をする、というのは大切なのではなかろうか。巧くいったら、勢いがつきそうだし。
ジーナちゃんは目を伏せて、そうね、と云った。
「料理をしていたら、気が紛れそう」
メニューは、ベーコンエッグ、野菜スープ、フルーツサラダ、発酵させたパン。パンは、ジーナちゃんに一任した。その間に市場で買いものだ。
市場はまだ閑散としていた。警邏隊の数も一時的とはいえ減っているし、その不安もあるのだと思う。まちなかをうろついていても、警邏隊をほとんど見掛けない。
根菜類、お肉は問題なくてにはいった。特にお肉は安い。くだものは、りんごと西洋梨しかなかった。還元たまご、と云うなんだかおそろしげなものも売っていたが、買う勇気はなかった。
魔物の死骸を還元して、なにか別のものにしてしまえばいいのじゃないかな……と思ったが、できるならしているだろう。魔物をまるごと還元できるひとは少ないって、ベッツィさんが云っていたし。
それに、還元して素を集めて放っておいたら、別のものになるのだ。ってことは、素を集めたつもりでもすべては集められないのでは?
人通りのほぼないみちを四月の雨亭へ向けて歩く。ルッタさんもレアディさんも、今日も来ないのじゃないかな。だから、パンは先んじて仕込んでおいた。
四月の雨亭へ戻る。案の定、行商さん、それにミスラ商会さんも、来ては居ない。流しで根菜を洗う。「ルッタさん達、来ないね」
「そうね。街道も安全とは云えないから、レアディ達は難儀しているでしょう」
そっか、警邏隊がばらけてるってことは、満足に魔物討伐できていない可能性もあるんだ。
警邏隊が居ないから来られない、と云うよりも、警邏隊に余計な負担をかけないよう自粛、と云う感じかな。魔法だの魔物だのがある世の中だから、助け合いの精神は強い。明日は我が身なのだ。
ジーナちゃんはパン生地をこね、グロッシェさんにあたためてもらっている。俺は根菜を大きめの乱切りにして、お鍋へいれた。菜種油で軽く焦げ目がつくまで炒める。人参・れんこん・大根・蕪だ。この段階で旨そう。
豚ストックを注いで、お塩を加え、煮込む。スープはこれでいい。
フルーツサラダは、りんごと西洋梨を角切りにして、水切りヨーグルトとお砂糖で和えたもの。乳清はソーダブレッドにつかえるのでとっておく。
そして、ベーコンエッグ。平鍋で厚切りのベーコンを表面かりっとするまで焼いて、たまごをふたつ割りいれる。たまごを割るのは勿論ジーナちゃんだ。ジーナちゃんは、たまごを握りつぶすどころか、からを一欠片も落とすことなく平鍋の上でたまごを割った。