異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
書類仕事もあるみたいだし、片手で食べられるサンドウィッチがマストだろう。
パンは今朝沢山仕込んだのだけれど、多分足りない。なので、パンケーキを焼くことにした。生地を用意して、焼くのはツァリアスさんだ。
具材はつくりおきがあるローストビーフ、なのだが多分足りないので、今朝がたお安く手にはいったお肉をローストビーフにした。オーブンに突っ込んでおけばいいから楽だ。
発酵させたパンに切れ目をいれて、水にさらしたスライスたまねぎ・うすく切ったローストビーフを甘辛いソースで和え、詰め込む。
パンケーキは上下に割いて、買い置きがたんまりあるジャムに角切りのりんごを混ぜたものをはさむ。すぐ食べるみたいだから大丈夫だろう。ライティエさんにも、日持ちはしないと伝えてある。
それらをふたつづつ紙に包んだ。ライティエさんはまだ食べ足りないようで、おかわりをもぐもぐしている。
「俺が運びましょうか」
「うーん、多分わたしで運べると思う。お昼のお客さん、そろそろ来ちゃうでしょ?」
「そうですけれど……」
ああ、そうだった。サッディレくん達は居ないし、俺が出掛けたらツァリアスさん達しか給仕ができない。シアイル貴族がもしやってきたら、拙い。
ツァリアスさんはパンケーキを器用に焼き続けた。満足するまで食べたライティエさんが、お弁当を収納空間へいれていく。「足ります?」
「多分。まだ書類仕事くらいしかできないけど、隊長も復活したし、沢山持っていかないとみんなおなか空かせてるし~……うん、なんとかなるよ」
食堂から声が響く。お客さんが来たようだ。
アーチを潜って食堂へ行くと、泊まりのお客さんだ。お昼はお代がかかるから、人数分の銀貨をカウンタへ置いている。「これで」
「はい、かしこまりました」
扉が開いて、別のお客さんがはいってきた。近所のひと達だ。人数を確認して、銀貨をうけとり、厨房へ戻る。
ベッツィさんがお茶を淹れてくれていた。ワゴンにのせて運ぶ。「マオくん、これだけあれば大丈夫。ありがとうね」
「はい。足りなくなったらまた来てくださいね」
「うん。お代、ここに置いとくね」
ライティエさんはテーブルに貝貨を1枚置いて、紙包みを抱え、出て行った。収納空間では間に合わなかったみたいだ。
ツァリアスさんがアーチから食堂を覗き、頷く。
「運びますよ」
「お願いします」
お膳を仕上げて、ツァリアスさんに給仕を任せた。人数が少なくなると、お客さんがあまり居なくても大変だ。どうしても提供までの時間が長くなる。
お茶のおかわりを注いでまわり、厨房へ戻ると、サッディレくん達が戻ってきて、お風呂場へ直行した。その直後、セロベルさんが戻った。