異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
「ご飯どうぞ」
「ああ……」
セロベルさんもお風呂にはいってさっぱりし、サッディレくん達と三人で席へ着いている。三人とも疲れが酷いみたいで、ご飯を食べる速度はいつもより遅い。
俺も席に着いた。お客さんはもう帰ってしまったし、ご飯を食べないと低血糖を起こしそうだ。
ツァリアスさん達、グロッシェさんも席に着く。お祈りが終わると、静かな食事が始まった。全員言葉少なだ。
「これ、くいおわったら、また出るから」
「ええ。服は準備しているわ」
「ありがと」
グロッシェさんとセロベルさんの会話は端的だ。でも、親子らしいと云うか、通じ合ってる感じはした。
「警邏隊、大変ですね」
「まあな。もっと大変なのは祇畏士だぜ。ずっと滅却し続けてるからな」
そっか、魔がなくならないと、近場の動物が魔物になるかもしれないんだ。祇畏士は休む間もないだろう。
ツァリアスさんがセロベルさんに、お茶のおかわりを注いだ。「サッディレさん達は休めるんですか?」
「っすね。っても、夜までです」
「討伐は休めないので……あ、でも、傭兵の数が増えたので、明日ははやく帰れそうです」
大変なんだなあ。
なにかできないかな、と考えたものの、冒瀆魔法はもしかしたら祇畏士に察知されるかもしれないし、うーん。
「ジーナは試験か?」
ぼーっとしてると話題が変わった。グロッシェさんがええと云う。
「多分、今度が最後の試験でしょうね」
「だろうな……裁定者の加護を渡したかったんだけど」
「わたしが譲っておいたわ」
「そっか。母さんのほうが御利益ありそうだぜ」
セロベルさんがくすっとした。
セロベルさんは食事を終えると本当にすぐに出て行った。近場の村の警護だそう。お弁当を多めに渡しておいた。
サッディレくん達は、欠伸をして、それでも宿の仕事がなにかないかと気にしていた。「手伝うっすよ。寝たら魔力は恢復できるだろうし」
「熱魔法が必要なら……」
ほんとはお風呂にはいりたいのだが、疲れた様子のふたりには流石に頼めない。いいから寝んで、と厨房を追い出した。
お茶の時間までにお水で体を洗おう、と井戸でお水を汲んでいると、ツァリアスさんが出てきた。「マオさん、手伝いましょうか」
「あ、いえ、これは俺がつかうので」
「……つかう?」
「お風呂にはいりたいんですけど、無理そうなので、お水でなんとか」
ツァリアスさんは目を剥いた。
「この寒さで水浴びはいけませんよ。お湯ならわかせます」
「えっ」
「水も出せますから。あちらでいいんですよね」
ツァリアスさんはそう云って、俺がつかっているお風呂場へ行った。
追いかける。ツァリアスさんはお水を浴槽にため、あっという間にわかしてしまった。魔力が高いとは聴いていたけれど、すげえ。冒瀆魔法でもこういうことができないものかなあ。