異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
リッターくん達大丈夫だろうか。特にミューくん、めちゃくちゃ怒ってたし、血だるまだったけど。
「……ま、いっか」
彼らが無事ならいいや。俺はなんとかなる。多分。リッターくんもユラちゃんも強いし、普段穏やかなミューくんが暴言吐きまくってたし、リオちゃんとサキくんも破壊工作をしていたようだし、なんとかなっているのじゃないかな。
それより、俺はどうやって逃げよう。
とりあえずお手洗いに行きたい。寒々しい灰色の石造りの、円形の部屋を、うろうろした。扉はふたつ。把手をがちゃがちゃして開いたのはひとつ。安心したことに、お手洗いだ。奥にお風呂場もある。
用を足して、ベッドのある部屋へ戻った。さて、次は……はらごしらえだな。
はらが減ってはなんとやら、とにかくおなかを充たさないといけない。低血糖を起こす。
俺はベッドに腰掛け、収納空間からわら半紙に包まれたパンケーキをとりだす。戴きますと云ってから食べた。重曹でふくらましてあるのか、ざっくりした噛みごたえだ。甘さは控えめで、小麦の風味が感じられる。
しかしものたりないので、黒糖を口に含んで一緒に食べた。うま。これは旨い。屋台で売ってるもの、結構いけるんだよな。値段も安いし。
十枚くらい食べると落ち着いた。よし。
立ち上がって伸びをする。脱出せねば。
開かないほうの扉を叩けば、反応があるかも、と思ったのだが、その必要はなかった。
その扉が開いたからだ。
開けたのは、金と淡い茶色の髪をあみおろしにして、土台の銀に赤い宝石をはめこんだ髪飾りをつけた、壮年の男性だった。
ガーネット、かなあ。あの宝石。
それにあわせるみたいなくらい赤のチュニックは、裾に銀糸で縫いとりがしてある。シルバーグレーのローブはどろっとした質感で、絹地なのが遠目でも解った。あたたかみのある黒のズボンは、多分ディファーズふう。細身だから。
男性は左右の耳に、あわせてここのつ、金属製のピアスをつけていた。手首には髪飾りとセットっぽい、銀にガーネットのブレスレット。
顔は、整っているほう、かな。といっても、サキくんと比べたら箸にも棒にもかからない。ミューくんと比べても雲泥の差だし、リッターくんやほーじくんだってそいつよりずっとずっとかっこいい。
なんだろう。なんか、口許と眉の感じがいや。感じが悪い、と云うやつか。もとの世界での報道を思い出した。セクハラで炎上した芸能人を。
男はにこっと笑った。つくりものの、完璧な微笑み。
「初めまして、マオさん。気分はどうかな?」
思い出した。ハーバラムさんの言葉。ウロアは金と淡い茶色の斑髪。
ってことは、こいつがウロア?