異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
「みんな、ぶじだった?」
そんな間の抜けたことを云いながら立った。六人は、きょとんとしたり、首を傾げたり。ユラちゃんはぴょこんと飛び跳ねた。「マオ!!」
「うん。俺なら大丈夫だよー」
ひらひら手を振る。
私兵のひとりが、勇猛果敢というか、無謀にも、六人へ斬りかかっていった。ユラちゃんの百雷で吹き飛ばされている。可哀相なことに、周囲も巻き添えをくらっていた。俺はとっさに耳を塞いだので平気。
手を下ろす。「ユラちゃん、それやめてくれるかな……」
「あんた、なに……逃げるわよ!こっちに来なさい」
「いやあ」俺は四辺を見る。「えっと、ここって俺の持ちものになったから、逃げなくっても大丈夫なんだよね」
「はあ?」
えへへと笑う俺に、ユラちゃんはいっぱいに目を開いた。
ぱちんと手を鳴らす。エルン、黒尽くめさんが、即座に反応した。
「とりあえず、全員武器をおろして……」
何故かまっさきにその通りにしたのは、リッターくんだった。しかも、ぽいと人質を投げ捨てる。「あ痛!」
すると、リオちゃんも同じように武器を下ろし、人質を解放した。リッターくんよりは穏当に。
残りの四人もかまえをとく。のだが、私兵達はそうはしない。ただし、六人の強さを知っているからか、もう切りかかるようなばかはしなかった。
「全員武器を下ろしてってば」
私兵の数人がこちらを見た。俺は笑顔を保つ筋肉の限界を感じる。
声を低めた。「ユラちゃん達じゃなくてお前らのことだけど?」
「お前達武器をしまえっ、マオさまの云うとおりにしろ!」
エルンが大慌てで喚くと、私兵達は戸惑い顔でそれぞれの持つ武器を下ろし、また仕舞った。
一瞬の静寂の後、ミューくんのくすくす笑いが響いた。
隣のサキくんが、目を白黒させている。「ミュー……?」
「あ。ごめん。でも、流石マオさんだなって」
「そうね」
ジーナちゃんがくすりと笑う。しかし、直後に目付きが鋭くなった。「残念ですわ、卿」
きょう?
倒れているウロアの傍に立っていた、あの背の高い男性が、突然走り出した。
リッターくんがその前にすっと立ちはだかる。進路をかえた男性だったが、サキくんが杖をひょいと差し出すと、ものの見事に引っ掛かってすっ転んだ。
ミューくんが冷たい(と云うよりも、邪悪な)笑顔で、転んだ男性へ近寄っていった。恢復してあげるのかな、と思いきや、石突きで男性を小突きまわしはじめる。「こんなところで会うとは奇遇ですねマイファレット卿」
背の高い男性、つまりマイファレット卿はひっと息をのむ。
ミューくんの声には憤りと嫌悪と軽蔑がたっぷり詰まっていて、関係ない俺でもびくびくしてしまうようなものだった。「ジーナを拐かした一味とご一緒とは、どういうことか説明して戴けませんか」