異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
「捕まるって?」
我に返ったグエンくんが喚いた。「どういうこと」
「えーと、捕まるようなことを沢山してるからね、知らなかった?」
グエンくんはおろおろと四辺を見た。
「だって、……裁定者だろ?捕まるわけない」
成程そういう認識か。
そうだな。この世界のひとにとってみれば、裁定者と開拓者は勝ち組以外のなにものでもない。かたや、常に正しい答えが得られ、かたや、間違ってもやり直せる。しかも、開拓者は回数制限が厳しいけれど、裁定者は(裁判官的な立場にならない限り)そうでもない。ウロアは一日十回も好きに質問できるのだから、完全にチートだ。捕まる訳がない、と云いたくなるのも解る。
ただ、多分だけど、裁定者の質問に対する答えは、「今の情況なら」こうだ、なのだと思う。ウロアがセロベルさんとかエウゼくんを手にいれようと動いていたのは、一年とか半年くらい前からの筈。その段階では、巧く行く計画だったのだろう。
俺がこっちに来てから四十二日目だ。計画が立てられた後に、よそから舞い込んだ要素である。流石の裁定者でも予測はつくまい。
俺は半笑いで頭を振った。丸テーブルを示す。「や、捕まるよ。証拠もそこにあるし、所有は俺だからね。警邏隊に提出する」
「やめてよ」グエンくんが叫ぶ。「マオ、全部マオのものになったんだよ?そんなの隠してしまえば」
「無理」
「僕の妹が死んでもいいって云うの!?」
「そうはいってないけど」
睨んでくるのを見詰め返す。
妹が病気になって、死にそうで、治療に莫大なお金がかかる、となったら、俺だって血迷うかもしれない。でも、だからって、人身売買や、売春の強要を見過ごすことはないだろう。
リュー達へ目を向けた。笑みかける。「グエンくんは、妹さんが死んだら困るんだね。リューさん達は?」
「……俺達は娼妓上がりだ。ろくな魔法もつかえないし、能力値も低い」
まさか、もと・娼妓だったとは。
でも、よく考えれば解ることだったのかな。だって、リューもアランもたまに、こちらを憐れむような目をしたり、いかにも気がのらないような顔をして慌てて取り繕ったりしていたし。あれは、同病相憐れむってやつ?俺ももと・娼妓って役どころだから。
リューはぶちぶち千切れるみたいな喋りかたをする。
「俺達は。みんな、賠償責任が。とにかく、金が必要で。指定の客に、金をつかわせたら、その分。とくべつに、手当がもらえて。償わなくちゃ、ならないから。俺の親はひとを殺したんだ……」
ティーくんと同じパターンのようだ。