異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
こちらの世界での罪の償いかたは原状回復が基本、できない場合は最低でも被害の分のお金の1.2倍を支払わなければならない。そしてその賠償責任は、家族にも及ぶ。
ほかの仕事になれるならなっていたんだろうけれど、口振りからするに、能力値は低くて職業は外れ、というやつらしい。
俺はグエンくんへ目を戻す。
「グエンくん、決闘立会人なんだよね?それってかせげないの」
「それは無理でしょうね」
ジーナちゃんが云う。「決闘立会人の宣言は慥かに便利だけど、決闘以外にはつかえないわ。人間、そんなに頻繁に決闘しないし、するとしても証人がいればいいもの」
そんなものなのか。
ジーナちゃんの云ったことはその通りみたいで、誰も否定はしない。詰まり、外れ職、と。
「うーん」俺は首をひねる。「でもなあ」
ミューくんが小声で云った。「あの、俺、よっぽど性質の悪い病でなければ、治せますけど」
グエンくんがミューくんへ駈け寄る。ジーナちゃんがミューくんをせなかに庇い、リッターくんが軽々とグエンくんを抱え上げた。
「ミューに危害を加えるな」
「わたしのせりふをとらないで頂戴リッター」ジーナちゃんはリッターくんを睨み、グエンくんへ目を向ける。「ミューに必要以上に近付かないで。怪我をしたくなければね」
「ジーナ、君ってやつは、どうして俺をいじめるんだい?」
「あなたがわたしの忠告を無視したからよ。そんなことも解らないの」
ジーナちゃんの言葉がどうしてミューくんをいじめることになるのかは解らないが、グエンくんを冷静にさせるには充分だった。
グエンくんはもがくのをやめ、大人しくリッターくんに抱えられている。
ミューくんは困ったような微笑みだ。
「どんな症状が出ているか、教えてもらえるかな。実際診てみなければ、治せるかどうか、断言はできないけどね」
リッターくんがグエンくんを降ろした。ジーナちゃんが云う。「リッター、その子を大人しくさせておいて」
「勿論ミューにこわい思いはさせない」
「頼もしいこと」
皮肉っぽいジーナちゃんに、リッターくんは小首を傾げた。
グエンくんがすすり泣きながら妹の病状説明をはじめた。ミューくんがなだめながら聴きとる。リッターくんとジーナちゃんが、グエンくんが凶行に走らないか、それを間近でみまもっていた。
俺は、助かったな、と考えていた。ちょっとミューくんに期待はしていたし、頼んでみようかな、と思っていたけれど、ミューくんから切り出してくれるとは。やっぱりミューくんって、凄く偉い。
「マオさん」サキくんがこちらを向いた。「商会の財産を処分して、どうするんですか?」
俺はにこっとした。