異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
えっ、とリューが帳簿を覗き込んだ。「……本当だ」
「って、ことは、よ!マオはこれを帳消しにするんでしょ?だからあの子達は自由になれるのよ!」
「だめだよ」
まくしたてるユラちゃんにサキくんが小さく反論する。
ユラちゃんがサキくんを振り返った。
「どうして!」
「彼らは養子になってるって話だったから……」
サキくんは困ったみたいに眉尻を下げる。「きちんと縁を切っておかないと、下手をしたら賠償責任が発生してしまう」
リューがふらつく。俺は一瞬頭がまっしろになった。
そうか、それを忘れていた。ウロア達が捕まった場合、各方面への賠償責任が生じる。それが、ウロア達で払いきれないとなったら、養子である彼らにお鉢がまわってくるかもしれない。
アランともうひとりが、倒れそうになったリューを支えた。ミューくんがさっとやってきて、恢復魔法をかける。サキくんが云った。
「書類をつくって、井へ持って行かないと。証人か生き証人の署名があればいいです」
「生き証人なら、居るよね、アランさん」
「あ、ああ」
「はやくつくったほうがいいですよ。捕まった後だと、責任逃れだととられて、無効になることもありますから。念の為」
サキくんの言葉に、アランが別のひとと場所をかわって、走り出ていった。リューは完全に気を失っていて、床に寝かされる。自分と重ね合わせて、相当なショックをうけたのだろう。ミューくんがもう一度、恢復魔法をかけるが、やはり精神的なダメージには効きが悪いみたいだ。
リッターくんがけもみみさんのひとりへ、低声で話しかけた。養親は誰か、を訊いている。俺はききみみをたてていた。ウロアと、ロント、エルン。あと、きいたことのない名前もあったが、リッターくんがここに居るかと訊くとついと指差していた。何度か賭場で見たことのある顔だ。リッターくんは凶悪な目付きでそちらをひと睨みし、睨まれたほうは震えあがる。
アランが生き証人さんを連れ、まっさらな羊皮紙を抱えて戻った。ユラちゃんが丸テーブルの上から書類を床へ落とし、場所をつくった。アランはそこへ羊皮紙を置いた。
生き証人さん(三号)は、戸惑ったふうだ。「おい、突然どうしたっていうんだ」
「絶縁の書類をつくるんだ。立ち会ってくれ」
「ぜつえん?」
サキくんがペンを掴んだ。僕が書きますよ、と、さらさら書きはじめる。サキくんの手跡は、丁寧で綺麗だった。
「サキくん、そんなのつくれるの?」
「はい。きちんと定型をまもっていれば、誰がつくってもいいんですよ。証人か生き証人の署名さえあれば」