異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
マシュマロをクッキーにはさむ。クッキーは、刻んだアーモンドとくるみいりだ。粗熱がとれたら、紙に包む。チェルノーラ家から三日に一回届けてもらっているが、相変わらず安定して上質だ。リボンをかけたら完成。
「はい。ユラちゃんと、耳持ちさん達に」
「ありがとう」
リッターくんは包みをうけとって、外套のポケットへ振り分けた。ポケットいっぱいあるなあ。
もうひとつ渡す。「これはリッターくんの分ね」
「……ああ」
リッターくんは俺の手をとって、軽く頭を下げる。「たべる」
「うん。たべて」
サッディレくんが俺とリッターくんの間にはいってきた。「はい、離れて」
「サッディレくん」
「なに、マオの手握りしめてるっすか。やめろよな」
引き剥がされた。サッディレくん、リッターくんとも相性悪いのかなあ。
リッターくんは包みを両手で大切そうに持って、ゆっくり瞬く。
「……では、帰る」
「無視すんなっす!」
リッターくんは俺とサッディレくんにぺこっと頭を下げ、出入り口へ向かう。
と、くるっと振り向いた。「ミュー、また会いに来る」
「はあ?」
ミューくんの返事は聴かず、リッターくんは出て行った。ミューくんは啞然。ジーナちゃんは、ぐっと眉根を寄せる。「ミュー、リッターが血迷ったらすぐに呼んで頂戴」
ミューくんとジーナちゃんは、ジーナちゃんが誘ってお買いものへ行った。リッターくん対策にピアスやなんかを買うそうだ。リッターが妙な気を起こさないようにね、と云っていた。
仮眠をとる。お茶の時間用のお菓子はつくってあるから、心配ない。奉公の試験、残念だったなあ、と思いながら、ベッドにはいる。
お茶の時間くらいに目が覚めて、身繕いしてから厨房へ行った。欠伸を嚙み殺す。寝た感じがしない。なんだか、疲れているような。
「マオ」
厨房では、みんなでお茶を淹れたり、お菓子をお皿へ盛り付けたりしていた。リエナさんが焼きりんごをつくっている。アーチからセロベルさんが顔を覗かせた。「顔色がよくないわよ、座ってて」
「マオ、お前まだやすんどけ」
「あれえ、せろべるさんもどってたんですかあ」
三人分声が重なる。一拍あって、俺達は笑った。
ふたりに云われたので、席についてお茶を戴くことにした。サッディレくんがにやにやしてお茶を運ぶ。セロベルさんは警邏隊の格好をしていない。髪がつやつやしていたから、戻ってきてお風呂にはいったみたいだ。
焼きりんごを食べる。おいしい。芯を抜いたりんごに、刻んだデーツをまぜこんだバターを詰め、オーブンで焼いたもの。甘酸っぱいりんごに、ねっとり濃厚な甘みのデーツが隠れている。旨い。