異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
遠慮したらまけ、かあ。ジーナちゃんの母親はあんな感じだし、ミューくんの親も結構あれみたいだから、慥かに遠慮していたら大変なことになりそうだ。ミューくんの抵抗は正しい気がする。
「あなたが戦うのはもういやよ」
ジーナちゃんが笑いをひっこめて云った。ミューくんは優しくジーナちゃんの手を叩き、頭を振る。「俺だって、家族と事をかまえる気はないよ。でも、脅しをかけるくらいはいいだろ?勝手に婚約させられたりしないようにね」
「……それはいいけれど」
「ミューは強かったから」サキくんは微笑んでいる。「どちらのご両親も、震えあがっただろうね?」
サキくんの軽口は成功した。ミューくんもジーナちゃんもくすくす笑ったのだ。
ミューくんがサキくんへ軽く頭を下げた。
「サキ、俺も謝らなくちゃ。一昨日は悪かった。ジーナが拐かされたり、マオさんのことがあって、いらいらしてたんだ。君に相当きついものいいをしてしまったろ」
「いいよ。僕だって、大切なひとが傷付けられそうになったとしたら、一昨日の君みたいになるさ。……勿論、君みたいに無茶はできないけど」
ジーナちゃんが横目でミューくんを見る。「ほら、ミュー、サキだってあれを無茶だって云ってるのよ。二度としないで頂戴」
「約束はできないなあ」
「まあ、このひとったら」
ジーナちゃんが楽しそうに笑い、ミューくんとサキくんは目を細めてそれを見ていた。
朝ご飯は四月の雨亭でどう?と訊くと、サキくんは嬉しそうに頷いた。
四人で四月の雨亭へ向かう。サキくんは紳士的に、ジーナちゃんからは距離をとった。間に俺とミューくんをはさんでいる。
「僕も四月の雨亭へお邪魔しようかな。家の者と居ると窮屈なんです。連邦と裾野出身者以外との付き合いを制限されてしまうし……」
「ああ、ロアもなのか。俺達ははじめ、ディファーズ出身か、ディファーズ系としかろくに言葉も交わせなかったよ。試験中も、ディファーズ出身者とだけ協力しろ、ってさ。俺には関係ない話だったけど」
「君は一次で通ったものな」
サキくんとミューくんは、顔を見合わせてくすっとした。ジーナちゃんもうっすら笑っている。
「わたし達、試験会場で会っていたかもしれないわね。あなたはそういう格好だったのでしょ?」
サキくんは、ごわっとした麻地の開襟シャツ(ぼたんでなく、細い紐で前を停めている)、ヴェスト、くらい色合いのずぼん、短いブーツ、綿地のローブだ。シャツの裾は出している。
「そうだね。こういう服しか持っていないから」
「ロア出身とすぐに解るから、会っていたとしても近寄らなかったと思うわ」
あー、そうか。それでスルーしてたんだ。成程。