異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
テーブルに、つくりおきの食糧をどんどん出した。お握りは食べれなかったから、やけぐいだ。お手伝いしてくれたみんなも誘った。
「あ、これおいしいですね」
サキくんがとりレバーのフライを食べている。「こういう調理の仕方は初めてだな」
「こんなおいしいお菓子があるならとっとと出しなさいよね」
ユラちゃんはペカンパイを大口で頬張って、すでに一台食べてしまっていた。ジーナちゃんは優雅にフルーツタルトを口へ運び、たまにミューくんにあーんしている。リッターくんはお茶をいれる係をやってくれた。
俺は人参のナッツ和えをはさんだパンをよっつ片付け、ローストビーフサンドウィッチにとりかかっている。
「ユラちゃん、こういうのもあるよ」
「なによそれっ、おいしそうじゃない!」
フルーツゼリーだ。ユラちゃんは目をきらきらさせて、お皿を抱え込むようにして食べる。おやつの時間だからか、口数が多かった。
「ジーナ、もう充分だよ」
「だめ。あなたったら、どうして無理ばかりするの……」
「ミュー、これもおいしいよ」
サキくんがミューくんにフラップジャックスを食べさせる。ジーナちゃんがむっとした。
「わたしのは断って、サキからのものなら断らないのね」
「ジーナ、なにかりかりしてる?」
「なにも」
サッディレくん達が汚れた食器が山積みのワゴンを押して戻る。「おつかれーっす」
「お疲れさまー。お客さん、凄かったね」
「かわったものを売ってるって、口伝てでひろまっちゃったみたいですよ。還元過多から時間も経って、丁度皆さんまともに外食に出るようになった頃ですし」
ふたりはかすかに苦笑いして、食器を流しへ置いた。
「めずらしいものがあったらくいたいよな」
「ね」
そっかあ。そういうもんなんだな。気を付けとけばよかった。俺のお握り……。
「ただいま戻りました」
グロッシェさん、セロベルさん、ツァリアスさん達が、中庭から這入ってくる。四人ともちょっと疲れた様子で、受験生達が席を譲った。ユラちゃんがてきぱきとからになった食器を重ねて流しへ持って行く。グロッシェさんが席を立とうとしたが、ジーナちゃんが制した。「わたしがやるわ。ユラも、あれで皿洗いはできるの」
「きこえてるわよ。まったく、ディファーズの女は底意地が悪いんだから」
結構な罵りにも、ジーナちゃんはやり返さない。ユラちゃんの口の悪さに慣れたようだ。
リッターくんが四人にお茶を淹れた。セロベルさんが戸惑い顔でお礼を云っているのが面白い。サッディレくんがくすくすしながら、ワゴンの上を布巾で拭いた。
「衣装、どうですか?」
「古着だけど、いいのがあった。直してもらってる」
「明日、届けてくれるそうです」
「届いたら教えて下さいね。恵みを与えますから」
アーレンセさんはにこにこしている。「わたし、修復者でよかった」