異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
ジーナちゃんがオーブンから、あかあかと燃えている薪をとりだした。ばけつへとる。それから、マドレーヌ生地を注いだバットを数枚滑りこませた。
俺はツァリアスさんと、流しの前へ立つ。手を丁寧に洗った。ちゃんと洗わないと、手の匂いが食べものに移ることがあるのだ。お握りの前なんか相当しつこく洗う。だから手がかっさかさになっちゃうんだけど、それはまあ、後でバームなりクリームなりを塗ればなんとかなるから大丈夫。
セロベルさんが給仕へ戻る。ジーナちゃんも、オーブンの扉を閉めて、そのお手伝いに行った。
「えっと……ツァリアスさん、自炊してたんですよね」
「はい。でも、たいしたものはつくれません。お菓子も独学で……」
独学であれは凄いぞ。ツァリアスさんまじでスペック高え。
俺は収納空間から、じゃがいも、人参、ブロッコリー、腸詰めをとりだす。「じゃあ、簡単な、スープをつくりましょう。まずはお野菜を洗うところからです」
「はい」
ツァリアスさんとお野菜を洗う。じゃがいもはでこぼこしていて洗いづらいから、手で撫でるようにした後、布巾をつかってよく洗う。人参も同じ要領。ブロッコリーは、心配だったら小房に分けた後にもう一度お水に潜らせればいい。
じゃがいもの芽をとる。芽が出ていなくても、くぼんでいるところは土が洗い落とし切れていなかったりするし、気になるので全部とる。皮はそのまま。
人参は、へたをとって、黒ずんでいるところや、くぼんでいて傷みかかっているところなどを取り除く。ひげは気にしなくていい。俺は気にならないもんね。
ブロッコリーはたまに虫さんがいるので注意。虫さんも食べにくる程おいしいブロッコリーだと思えばいいのだ。むしくいの近辺を取り除けば問題ない。
ツァリアスさんの手許は危なげない。教えたことをしっかりやっている。俺のやりかたが絶対正解という訳ではないけれど、云われたことをとりあえず一度はやってみるって大事だよな。それが自分にもぴったり合っているかもしれないから。だめなら次から別のやりかたを試せばいいのだ。
人参をみじん切りにして、多めの菜種油でじっくり炒める。ツァリアスさんはみじん切りも楽々だった。包丁さばきにぎこちなさがない。
人参が黄色っぽくなったら、乱切りのじゃがいもと、スプーンですくえるサイズに切った腸詰めを投入。これはベーコンやハムでもいいです、と云うと、ツァリアスさんはこっくり頷く。
暫く炒めたら、お塩とこしょうをする。お水を注いで蓋をして煮込む。ブロッコリーは、煮込みすぎてくたくたになったやつ、あんまり好きじゃないから。
「お水でいいんですね」
「煮込むとしっかり味が出てくれますよ、お野菜も、腸詰めも」
ぐつぐつしてきたらブロッコリーを足す。食感が残るくらいの火の通り具合で。