異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
リエナさんが料理人。
ああ!もしかして、はかりをつかわなくてもきっちり計量できたり、味がばっちり決まるのって、料理人の職業スキル?なのか?
アーレンセさんが目をぱちぱちさせる。
「どおりでお料理上手で」
「あいつ自身、料理が好きなんだよ。剣戟士になりゃ、入山もかなったかもしれないのに、おいしいもの食べたいからってさ」
複数人が、おでんのおかわりをついでいる俺を見た。「……なんですか?」
「いやあ」
「リエナさんとマオが仲好いの、当然だったんだなあって」
くい意地が張っていると云うことか。自覚はあります。
料理人の職業加護は、「目星」。俺の思ったとおり、目分量でほぼ確実にぴったりになると云う、嘘みたいに羨ましいスキルだった。俺もほしい。
ただし、飲食可能なもの(と当人が認識しているもの)限定で発動する。上皿天秤や、おもりの最終チェックは料理人がやるそうだ。そんなにめずらしい職業でもないのにスキルがいろんな場面で有用なのだ。家業のお肉屋さんのお手伝いが忙しいというのも、はかりなしで重さが解るかららしい。リエナさんははかりをつかわずに計量して、親御さんははかりをつかって計量すれば、はかりがふたつあるのと同じだもんな。
剣戟士は、いろんな武器を器用に扱える職業加護で、そこそこめずらしい。ただ、選んだら一生戦うのが確定するような職業である。リエナさんは、お料理が好きなのもあるだろうけれど、切った張ったが苦手なんだろう。
あと多分、料理人なら、セロベルさんと結婚したらこちらの厨房へはいって役にたてる、というのもあるんではなかろうか。恋愛経験ゼロの俺に解ることじゃないけど、さ。
ジーナちゃんやセロベルさんにくわしくきいて、俺はフルーツタルトをつまみ食いしながら云う。「じゃあ、リエナさんも厨房に?」
「そうなるな」
それは助かる。俺がおいしいものを食べる時間が増える。
にまにましてしまっていた。ミューくんがくすっとして、それからグロッシェさんとセロベルさんに水花をかける。「少し横になったほうがいいですよ」
「おお、悪いな、ミュー」
「いいえ。やればやる程俺の食事が豪華になるので」
セロベルさんが声をたてて笑った。
セロベルさんとグロッシェさんは、ミューくんの助言に従って部屋にさがった。なので、晩ご飯は俺達だけでお客さんに対処する。給仕はサッディレくん達とミューくん、盛り付けは俺とツァリアスさん、お茶を準備するのがベッツィさんで、ジーナちゃんはお皿を洗う係。
結果、なんの問題もなく対応できた。ミューくんの接客は相当評判がよく、比較されたあ、とサッディレくんが若干くじけている。ジーナちゃんも、流石にお皿を乾かすことはできないが、ぴかぴかに洗い上げてくれていた。