異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
お茶の時間が終わった。サッディレくん達が戻ってくる。お湯は相当な量必要だったそうで、どちらも疲れた様子で椅子に座り、テーブルへ突っ伏す。
「外から来たって、服とか泥塗れ」
「西南街道で大雨に行き会ったんですって。それからどこにも泊まらずに来たそうです」
「二回わかしなおしたっすよ-」
セロベルさんとグロッシェさんも疲れているみたいだし、はやめの晩ご飯をとってもらうことにした。用意して、テーブルへ運ぶ。
「お疲れさま。もう晩ご飯食べちゃって」
「わあ、いい香り」
「うまそー」
「セロベルさん達も、あんまりちゃんと食べてないでしょう?どうぞ」
「ああ……」
「ありがとうございます」
セロベルさんとグロッシェさんも席に着く。ミューくん達でお茶を淹れてくれた。ツァリアスさん達も、と云うと、ツァリアスさん達も腰を下ろす。
サッディレくんは、おでんは大根がひとつだけ、後はミートボールで、それにさっとボイルした腸詰めを足した。サラダはなし。
グロッシェさんは、ミートボールは少し、大根はみっつ。サラダはたっぷり。
ミューくんとジーナちゃんでお茶を配る。ジーナちゃんは、マドレーヌも配っていた。
「あ、これ旨いっす。このスープ」
「かわった香りですけれど、おいしいですね」
「えへへー、これ、リッターくんにもらった昆布とかつおぶしのストックだよ」
サッディレくんがへの字口になった。
式はいつかとセロベルさんに訊けば、しあさって、と返ってくる。急なような気がするけれど、裾野ではそんなものなのかもしれない。ミューくん達の婚約状態が長いのは、貴族(「みたいなもの」)だからかな。色々と制約が多いらしいし……。
「でもどうすんのセロベルさん?リエナさん、ひとり娘なんっすよね」
サッディレくんがドーナツをもぐもぐしながら云った。「俺の地元だったら、きょうだい居ない同士は結婚しないっすよ」
「そうなの?」
アーレンセさんが驚いたように云う。サッディレくんはこっくり頷いた。
「そお。名字がない代わりに、土地をまもるのが大事だから。どっちかの土地にはいるのが基本なんだ」
「へえー」
「跡継ぎがいなくなった土地は神さまに返さなくちゃいけないんす。それを無視しても、跡継ぎのない土地は結局は他人のものになってしまう……って、考えっす」
サッディレくんは、サキくんの話に出てきた、先住民族なのだろう。名字がないし、独特な風習のあるところで育ったみたいだから。
グロッシェさんが微笑んだ。「彼女のいとこが働いていますから、いずれはそのひとに継いでもらうつもりのようです」
「リエナはうちに来て、働く気満々だぜ。あいつ、料理人だからな」