異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
ジーナちゃんは、とにかく食べて、とミューくんへ厳粛にいいわたし、ワゴンを押していった。ミューくんはくすくすしながら、マドレーヌのお皿をテーブルへ運ぶ。ツァリアスさんも俺も、グロッシェさんも、にやにやしてしまっていた。ジーナちゃんが可愛くて。
ベッツィさんが中庭から戻った。「お客さんの案内、終わりました」
「ありがとうございます」
「トゥアフェーノをお連れなので、干したくだものを売っている場所を教えてほしいと云われたんですが、わたし解らなくって……」
ドライフルーツなら大量に買い置いている。収納空間から、数種類がミックスされたものをとりだした。紙袋にはいっている。
「市場に売ってますけど、今の時間帯に市場はやっていないと思います。これでいいですかね」
「わ」ベッツィさんは俺の差し出した紙袋を、両手でうけとった。「助かります」
「それでエスター80個分くらいです」
「じゃあ、その値段でかいとってもらいますね」
ベッツィさんがもう一度外へ行く。随分顔色がよくなったし、ちょっとふっくらしたかも。順調なのかな。
スープができあがったのでお皿へとりだした。ツァリアスさんと味見。グロッシェさんと、マドレーヌを食べ終えたミューくんにも飲んでもらった。
「うん、巧くできてます。ツァリアスさん、包丁つかうの巧いですね」
「そうですかね……でも、これ、おいしいです」
「この上にチーズをのせたり、時期ならトマトをいれてもいいですし、たまねぎやキャベツをいれるのもおいしいですよ。お野菜は三種類以上、それに腸詰めやベーコンを加えて煮込めば、ストックいらずのスープです。煮込みにちょっと時間がかかっちゃいますけどね」
ストックやブロードのいいところはそれだよな。つくる時に多少時間がかかるけど、その分スープをつくる時には簡単に味が決まる。昆布やかつおぶしも、凄く簡単に味をつくってくれるが、あれだってつくる時には膨大な手間ひまがかかっているのだ。だからこそこっちは楽をできてる。……これも仕事の法則?
ツァリアスさんはゆっくり二回頷く。「ストックと、ブロードも、ちゃんと覚えます。マオさん、なんでもお手伝いしますから、云って下さいね」
俺も頷いた。さっきの作業で、ツァリアスさんは即戦力になると解ったし、遠慮はしない。どんどんお野菜切り刻んでもらお。
ジーナちゃんが戻ってきて、またお茶を淹れる。ミューくんがそれに駈け寄っていって、マドレーヌのことを誉めた。ジーナちゃんはなんでもないような顔をしているけれど、口に合ってよかったわ、と云う声がやわらかく、嬉しそうだった。