異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
男の子の友達は、性別も肌の色も、服装も様々だった。裾野系の男女に、ロア系の女の子、シアイル系かディファーズ系の女の子。
俺がお菓子をとりだすと、あしにまとわりついてくる。それぞれひとつずつ包みを持って、嬉しそうに近くの木箱へ走って行った。男の子はもう一度俺とサッディレくんへお礼を云い、友達へついて行く。
サッディレくんが、落とすなよー、とその後ろ姿へ云い、俺を見る。「マオ、ありがと。お菓子」
「ああ、いいよ。俺もお菓子あげようと思ってたから。サッディレくん、優しいね、洟かんであげて」
「習慣っす。俺も子どもの頃はあんなのだったし」
サッディレくんはちらっと子ども達を見遣る。「……でも、あいつらとは違うっすね。俺は一族の子どもしか知らなかったから。いいよなあ、ああいうの」
「あの」
はっとして、ふたりとも声のほうを見た。
小柄で、目深にフードをかぶって、マントを着けて、手袋をしている。薪屋さんだ。
サッディレくんも解ったのか、かまえをとく。「薪屋のおっちゃんじゃないっすか」
えっ、男のひとだったんだ。性別も年齢も解らないなあ。声は子どもっぽいし。薪屋さんは、ぺこっとお辞儀した。俺達もお辞儀を返す。
「昨日は助かりました。薪、ありがとうございます」
「いえ、仕事ですので……こちらこそ、お握り、ありがとうございます」
暫く感謝の応酬があって、サッディレくんがうんざり顔になった。「もー、ふたりともなにしてるっすか?」
「ああ、すみませんひきとめて」薪屋さんが姿勢をただす。「実は、その……もう一度、お握りを食べたくて。いつだったら売っているのか、うかがっても?」
「あー……」
口に合ったのかな?
でも、普段売っているものではない。原価も半端じゃないし、あの量で銀貨1枚はぼったくりだと、評判が悪くなるのではなかろうか。
しかし、フードの下から期待の目で見られているのが解って、売っていないですとは云えない。
「えーっと……いつかはまだ決まってませんけれど、結構高いですよ」
「いいんです」薪屋さんはほっとしたみたい。「その……家族が気にいって」
「そうですか。じゃあ、明日の、お昼にやります」
俺も食べたいし、かつお田麩は沢山つくってある。生姜の甘露煮もいっぱいだ。なんとかする。
薪屋さんは嬉しそうにお辞儀した。「じゃ、買いに行きます」
「待ってます」
薪屋さんがとてとてと、西へ向かって歩いて行く。「あ、薪屋さん」
「はい」
振り返った薪屋さんに訊いた。
「西にある、ユス商会って、どこか解りませんか?」
「ユス……ああ、6番区ですよ。門がふたつある、立派な建物です」
「ありがとうございます」
薪屋さんはもう一度ぺこりとお辞儀して、去って行った。
行こっか、とサッディレくんを促して歩く。「おっちゃん、あっちのほうにも薪売りにいってるんっすかねー。それとも、住んでんのかな」
「ねー」
薪屋さん、お握り気にいってくれてよかったなあ。この世界のひとにも、ものめずらしさだけじゃなく、うけいれられるんだ。
広場を出て、西の通りに這入った。ふっと違和感に気付く。俺、お握りって云って渡したっけ?云ってない気がする。薪屋さん、どうしてお握りって知ってたんだろう。