【本編20万字完結】カストラート 〜傾国の歌劇(オペラ)〜【幕間更新あり】
【統一暦七八二年九月十六日 条】
一、当家嫡嗣ならびに二男御誕生の件
本日、黎明の光差す刻限、エルザ奥様におかれましては無事ご分娩あそばされ、我がトラッド辺境伯家の嗣子となられるご長男カース様、ならびに双生児の弟君にあたらせられる二男ジュリアス様の二公子の御生誕をみたり。
産室に侍したる乳母の言によれば、多胎のご産導のゆえ奥様の御疲労は著しくあらせられるも、幸いにも母子ともに御経過は至極良好に渡らせられる。
ルドルフ旦那様・エルザ奥様は深く御歓喜あそばされ、殊に日頃厳格なお姿にて領内を威厳をもって統べられる旦那様におかれましては、常の御威容を和らげられ、深い感涙を流されて奥様の御無事を御感悦の旨、双生児の御生誕を心より祝されたり。
【家令添え書き】
本日お生まれになられた双子の若君方は、まことに天より遣わされた天使の如き麗しき御容姿であり、愛らしさこの上なし。
また、両若君が湛えられた旦那様より受け継ぎし薄紫の御瞳には、生後間もなき身でありながら、すでに類稀なる叡智の兆しが伺える。
我がトラッド辺境伯家の未来を照らす双璧として、両若君の健やかなるご成長が心より待望される。