【第一章完結】霊が導き、霊を導く悪魔祓いの異世界霊能者~異世界で霊視持ちの俺、聖魔の力で悪魔祓いやってます~
「人があまり通らない道……って感じだな」
一応ブレイムズまでの道はあるものの、人が通らないせいか草が生え放題になっている。
周りよりも草の背が低いから、ここが道なんだろうと分かるぐらいの荒れ具合だ。
歩きにくいことこの上ないが、この荒れ具合なら山賊が待ち受けているなんてことはないだろう。
こんなところまで待っていても通る人なんてまずいない。
「ねえ、エリ君」
「嫌ですよ」
「もう……」
「おんぶしてくれって言うんでしょう? 荷物も背負ってますし、無理ですよ」
「荷物はパシェちゃんに持ってもらって」
「だから、嫌です」
本気なのか冗談なのか知らないが、デラは時々歩き疲れたからと自分を背負えと俺に要求してくる。
子供じゃあるまいし、と毎回拒否している。
旅の最中は食料などの荷物も持っているので、よほどのことがない限り人を背負うような余裕なんてない。
「はい、これで歩いてください」
「つれないわね? 女の子にモテないわよ?」
「俺は顔がいいんでモテますよ」
俺はデラに神聖力を送り込む。
背負ったり後ろから押してやるより、よほどありがたい支援だ。
それでもデラは不満そう。
実際悪魔祓いとして活動しているデラがちょっと歩いただけで、歩けなくなるほど体力が無くなるなんてあり得ないのだ。
「顔だけじゃダメよ?」
「イケメンに加えて、家庭的で優しくて力持ちで男らしい。他に何が要りますか?」
「そういうことを自分で言わない謙虚さかしらね?」
「俺の謙虚さはかなりのものですよ?」
こんな感じで毒にも薬にもならないような暇つぶしの会話をしながら歩いている。
ただそんな会話も長続きしない。
山賊と会ったところからおよそ二日をかけて移動して、ようやくブレイムズが見えてきた。
「正直俺だったらごめんだな」
遠くに見えるブレイムズは小規模な村という感じだった。
ブレイムズなんて立派な名前に比べて、随分と貧相さが目立っている。
普通の町にいても娯楽なんてないのに、こんなところにいたら暇で死んでしまう。
「あれが噂の鍛冶屋なのかな?」
大きな煙突がある家が見えている。
煙突からは煙が上がっていて、鍛冶仕事をするための火を焚いているから煙突や煙が見えているのだろう。
「相変わらずね」
「こんなところで武器作ってるなんて、尊敬するな」
立地的な問題はあるとしても、半分島流しみたいなところで武器作ってるのはすごいと思う。
こうした人たちが悪魔祓いを支えてると思うと感慨深いものもある。
「まずは荷物を置いてこよう」
ブレイムズに着いた。
ただ人っ子一人歩いていない。
俺たちはブレイムズの奥の方にある家に向かった。
「おや? おお、もうご到着か」
ゲルディットが家のドアを開けると、中にはホウキを持った口髭の男性がいた。
「ゲルディットだ。もうすでに連絡が来ていると思うが……」
「ええ、もちろんでございます。ゲルディット様が最後にこちらに訪れたのは十年前でございますね。剣の調子はよろしいですか?」
「……絶好調だ。悪魔を倒しすぎて毎夜怨嗟の声が聞こえるぐらいにはな」
「そちらの方が新しく武器を作られるエリシオ様ですね? 私はクリス。ブレイムズの雑用全般を任されております」
クリスは深々も頭を下げる。
不思議な雰囲気のある人だった。
「十年前って……来た人のこと覚えているんですか?」
俺はちょっとした疑問を口にする。
クリスはゲルディットが最後に来訪したのは十年前だと言った。
いかに人の訪問が少なくとも十年前に来たゲルディットを本当に覚えているのだろうか。
「もちろんです。パシェ様は去年、デラ様は三年前ですね。ゲルディット様は三十三年前が最初でございます」
「……俺を見られても俺自身が覚えていない。確かにそのぐらいの時期だがな」
俺は思わずゲルディットを見る。
しかし本当に三十三年前なのかどうかゲルディットも少し曖昧なようだ。
クリスは中年ぐらいに見えたが、三十三年前からいるとしたらもっと年がいっているのかもしれない。
「エリシオのことも覚えておきますよ。私がこの仕事を続ける限り」
「もしかしたら何回か世話になることもあるかもしれないので忘れておいてください」
「ふふふ、残念ながらもう覚えてしまいました。お部屋の準備はできております。好きなようにお使いください」
今いる家が俺たちの泊まるところとなっている。
クリスが清掃して整えていてくれた。
「いつも悪いな」
「いえ、これが仕事なので」
「食料も持ってきた。使ってくれ」
「ありがとうございます」
持ってきた食料のいくらかをクリスに渡す。
多めに買ってこいとは言っていたが、離れた地に暮らすブレイムズに渡すという意味もあったようだ。
大きな家の中は一人一部屋使えるようになっていた。
そんなに広くもないが、ちゃんとベッドもあるし泊まる上では不便なこともなさそうだった。
「次は職人に会いにいくぞ」
部屋に荷物だけ置いて、俺たちは煙突がある家に向かう。
ずっとブレイムズに金属を叩く音が聞こえていた。
その発生源はやはり煙突のある家だった。