【第一章完結】霊が導き、霊を導く悪魔祓いの異世界霊能者~異世界で霊視持ちの俺、聖魔の力で悪魔祓いやってます~
「どうせ呼んでも聞こえないからな」
「うっ……」
煙突のある家のドアをゲルディットが無造作に開ける。
骨まで響くような金属を叩く音が大きくなり、焼けてしまいそうな熱気がドアから漏れ出して俺は思わず顔をしかめた。
真っ赤に熱された金属の塊を一心に見つめ、ハンマーを振り下ろすヒゲの男が一人。
「声をかけないんですか?」
「変なタイミングで声をかけると不機嫌になる」
中に入り、ゲルディットは壁に寄りかかる。
デラは適当な椅子に座って、パシェはいつものように仁王立ちである。
この人が俺の武器を作るのかと思うと、少しばかり気がはやる。
だがどんなものでも適切なタイミングというものがあるもので、作業中に声をかけてはいけないようだ。
「オッドバース」
金属を水につける。
熱された金属によって水が蒸発する音が広がっていく。
作業の合間を狙ってゲルディットは声をかけた。
「おお、ゲルディットか。生きていたのか」
「ああ、まだ死ねないんだ」
「ずいぶんと大きな人だな」
オッドバースという職人が立ち上がる。
鍛冶をする際の熱のせいなのかチリチリとしたヒゲと対照的に頭はツルリとスキンヘッドだ。
ハンマーを振るう腕は見た目に筋肉で極太だったのだけど、立ち上がってみるとオッドバースは全体的にデカかった。
鍛冶仕事のための作業服の下に鍛え上げられた肉体を感じる。
さらに身長も結構高い。
鎧装着のパシェにも負けない威圧感がある。
鍛冶職人なんかより余程悪魔祓いっぽそうにも見えた。
「紹介しよう。こいつがエリシオ。新しく武器を作ってやってほしい」
「話には聞いている。特別な力を持っているそうだな。聖魔どちらも体に秘めている……か」
オッドバースが俺の前に立つ。
じっと目を見つめてくる。
目は澄んだようなブルーで、意外と綺麗だった。
「俺の力のこと……知ってるんですか?」
特別な力と言われて一瞬ドキッとした。
霊視能力の方のことかと一瞬思ったが、そちらではなく神聖力と魔力の両方の力を持っていることだった。
「もちろんだ。武器を作る相手のことを知らねばな。直接騎士団長から手紙を受け取って知った話だ」
「そうなんですか」
「ゲルディット似の皮肉屋だとも聞いている」
「そんなことないですよ? 品行方正、真面目で努力家、付き合いたい男ナンバーワンです」
「ゲルディットより酷いな」
「ほらな?」
やや掠れたような重低音の声をしたオッドバースは目を細めて首を振る。
何がほらなのかと、俺は怪訝そうな目でゲルディットのことを見る。
「さて、早速武器の話だが……今はタイミングが悪いな」
「タイミングが悪い?」
「最近近くに山賊が住み着いた。根城にしている場所が運悪く鉱山の入り口近くなんだ」
オッドバースがため息をつきながら椅子に座る。
体格のいいオッドバースが座ると、椅子は大きく軋んだ。
「山賊だと……」
ゲルディットが険しい顔をする。
俺たちの記憶にもまだ山賊の存在は新しいものだ。
「奴らのせいで鉱山に入れない。手持ちの素材が少なくてな。お前さんのような特殊な力を持っているならそもそもの素材を惜しむわけにいかない」
「その回りくどい言い方やめろ」
「……ふふ、まあ言いたいことは分かるだろう?」
ここまで来れば俺もオッドバースが何をさせたいのか分かる。
「山賊どもをぶっ殺してくればいいんだな?」
「その通りだ」
オッドバースは武器が欲しければ山賊を追い払えと言っている。
まあ、ちょっとお怒りのゲルディットがいるのだから、ただ追い払うだけで終わらないのは言葉の通りだ。
俺も武器作りに水を刺された気分なのでゲルディットに反対する気はない。
「はぁ、せっかくお金渡して通ってきたのに、結局こうなるのね?」
「どうせそのうち討伐されるんだ。俺たちがやっても構わないだろう」
「そういうことじゃないんだけど」
デラはため息をつく。
ひとまず、山賊たちは変な場所に陣取ってしまったせいで悲惨な運命を辿ることが決まったのだった。
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「なんというか……一番強そうなのはオッドバースさんですね」
めんどくさがるデラをなだめて俺たちは山賊討伐に向かう。
ただ四人だけではなく、オッドバースともう一人採掘担当のベンドという男も一緒に来ている。
武器がわりにツルハシを肩に担ぐベンドも体つきが良くて強そうなのだけど、やはりオッドバースが六人全員の中で一番体格が良い。
純粋に力のみでぶん殴るとしたら、オッドバースが強く見えるだろうと思った。
腰に剣を差しているのでオッドバースも戦えるようだと俺は見ている。
「決して弱くはないぞ。この男も職位としては魔の聖騎士だ」
「……そうなんですか」
「一線で戦った記憶などもう忘れるぐらいのものだ。期待はしないでくれ」
只者ではない。
そう感じていたが、オッドバースも魔力を扱えるらしい。
「あそこが山賊の拠点です」
ベンドは道案内役。
山賊が拠点としているところまで道なき道を案内してくれた。
少し小高くなった丘から山賊の拠点が見えている。
「割としっかり拠点にしているな」
周りを柵で囲み、粗末ながら家のようなものまで建てている。
思っていたよりもちゃんと拠点であった。