【第一章完結】霊が導き、霊を導く悪魔祓いの異世界霊能者~異世界で霊視持ちの俺、聖魔の力で悪魔祓いやってます~
俺はイエスと答えるしかなかった。
ひとまずその場をやり過ごし、外に悪魔がいると伝えねばならなかった。
「クイラーデさん!」
俺はブルームランキングクラブを抜け出し、会計事務所に戻ってきた。
「エリシオ? 今日は試合じゃ……」
こっちの仕事は休みのはずだったので、俺が現れてクイラーデは驚いた顔をしている。
「話があるんです。時間、いいですか?」
「……ああ、分かった。少し休憩します」
俺の顔を見て、クイラーデも事情を察したらしい。
二階にある休憩室に向かい、窓やドアをしっかりと閉める。
「…………見つけたんだな?」
クイラーデも少し興奮した様子だ。
俺は頷いて答える。
「ただ……かなり危険です」
「なに?」
「相手の悪魔は……ナンバーズです」
「……なんだと?」
俺が持っていたリストは教会内部にいる悪魔や悪魔崇拝者を並べた裏のリストだが、それとは別に表のリストがある。
正体が判明しているもので、まだ倒されていない悪魔はちゃんと情報をまとめてある。
そうした悪魔のリストの中でも、中でも凶悪な悪魔には数字が振ってあった。
「No.7、暴食のグラトン……」
最初は名前を聞いてもピンと来なかった。
しかし幽霊を固めたアメ玉や会場中の幽霊を喰らい、ぶくぶくと太った体、それに人間を美味しく食べようとファイトクラブを利用しているという点が繋がって、表の悪魔リストに載っていた存在を思い出した。
「アイツは五等星の悪魔です」
ここはとんでもない化け物に支配されている。
俺はいまだに背中が冷たいような思いがしていた。
悪魔の等級分けである等星の基準は教会の中で決められるもので、基準はややあやふやだ。
一等星から三等星までは大きな差がない。
厄介なのは四等星からで、五等星になると災厄と言ってもいい。
六等星になると国一つ滅ぼせるぐらいのものだが、六等星の悪魔同士で牽制し合うような関係性があるらしく、意外と表に出てくることは少なかったりする。
だから実質的には五等星が表立っての敵なのだ。
悪いやつは強くなって上になるほど表に出なくなってくるのは悪魔でも同じである。
「早急に外に情報を伝えねばなりません。方法はありますか?」
単に悪魔を見つけたというだけでなく、五等星の悪魔だと伝える必要がある。
今の備えからさらに増強する必要性もあるかもしれない。
「次の定時連絡は十日後……」
「……それじゃ遅いかもしれません」
俺は思わず顔をしかめる。
「何かがあるのか?」
「七日後……俺は一位になるために戦わなきゃいけないんです」
グラトンからされた提案は受け入れるしかなかった。
次に試合があるのは七日後。
その時に九位から順に一位に挑んでいき、最後に俺が一位のゴーデッドを倒すことになっている。
倒せるならまだいいかもしれないが、倒せなきゃ俺の命は試合か、はたまた試合後に奪われることになる。
他のランカーたちも無事では済まない。
時間がなかった。
「……外に連絡を取るのに、一つ方法がある」
クイラーデは悩むように目を閉じて考え、小さく頷いた。
「レビュアンスという店を知っているか?」
「レビュアンス……どこかで聞いたことあるような」
俺は眉をひそめて記憶を探る。
どこかでそんなもの聞いた覚えはあるのだけど、どこで聞いたのか、それがなんなのか思い出せない。
「男娼だよ」
「……ああ、思い出した」
グルデンダカンに来た時、最初に声をかけてきたフエメスという人がレビュアンスで働いていると言っていた。
特に男娼に近寄ることもなかったので、完全に忘れていた。
「やはり性を取り扱うところは強い。外とのパイプがある」
「じゃあ、そこに行けば……」
「ただ簡単じゃないぞ」
「どういうことですか?」
クイラーデは渋い顔をしている。
「外と連絡が取りたいなんて言ってそうですかと連絡させてはくれないんだ。言ってしまえばグルデンダカンのルールに反することだからね」
当然ながら外部への連絡サービスは表立ってのものじゃない。
立場と信頼、それにお金があって初めて利用させてもらえるものなのだ。
「信頼を得るにはどうしたら……」
男抱かなきゃダメなのか。
俺は思わず頭を抱える。
金はあるので糸目をつけなきゃなんでもできるぐらいはあるけれど、信頼を築けるまでにナニをしなきゃならないのか非常に怖い。
「レビュアンスを利用するぐらいしか方法は思いつかない。ただ一回二回じゃ無理だろうしな」
俺とクイラーデは二人して悩んでしまう。
せっかく悪魔を見つけたのに、それを伝える手段がない。
「……あまり他の潜入してる奴には接触しないんだが、方法がないか聞いてみよう」
「お願いします。俺は……レビュアンスに行ってみます」
可能性は低くともゼロじゃない。
外と連絡が取れる手段があるのなら試すだけ試してみてもいいかもしれない。
フエメスも訪ねてこい、みたいなことを言っていたような気がするし、チャンスはあるかもしれない。
男娼になるつもりも、利用するつもりもないけれどランカーにもなったのだし無理を通せる可能性はある。
「行くのか?」
「ダメでも早い方がいいでしょうからね」
動くなら早いほうがいい。
俺はクイラーデと別れて外に出た。