【第一章完結】霊が導き、霊を導く悪魔祓いの異世界霊能者~異世界で霊視持ちの俺、聖魔の力で悪魔祓いやってます~
「……つけられてる?」
ふわっとした記憶の元、レビュアンスに向かっていた俺は誰かがつけてきているような気配を感じた。
ランカーのファイターになると金も知名度も段違いになる。
何かを狙ってコソコソ追いかけ回してくる奴らもゼロとは言い難い。
町中だからと油断はできないので、割といつでも精神が尖っているような状態になってしまっている。
ただ今回はそれが功を奏した。
「んー……」
軽く町中をぶらぶら移動する。
その結果、やはり気のせいではない確証を得られた。
「一人じゃないな……複数だ」
問題がややこしいのは、俺を尾行している奴が一人じゃないってことだ。
一人なら撒くことも、直接対峙することもそんなに難しくない。
しかし複数となると対処も面倒だし、相手の目的がより一層分からなくなる。
複数人で組織的に追いかけてきていて、ただのファンですってことはないだろう。
俺を害する目的の可能性も高い。
「どうしようかな……」
町中での争いは厳禁。
騒ぎになれば警備の奴らが飛んでくるし、拘束されたらかなり面倒なことになる。
実際多少の騒ぎ程度では動かないので、ぶん殴って追い返すことも普通に選択肢ではある。
ただ少し後に悪魔に命令されてファイトしなきゃいけない身としては変なリスクは避けたいところだった。
一番確実なのは人気の多い場所に居続けることだ。
人が多くいるところなら相手も手を出せない。
家に帰るのは諦めてどこか一夜、人の多い場所で過ごせば相手も諦める可能性はある。
「問題は諦めなかった時、だよな」
すぐに諦めてくれたらいいのだけど、相手の目的も分からない状態で動くのはリスクが高い。
「……追い返すか。なんなら力尽くでも」
外に悪魔がいると伝えるためにもレビュアンスに行かねばならない。
引き受けてもらえるかどうかも分からないのだから、早めに行動する必要がある。
こんなところでダラダラと時間を消耗している余裕は俺にはなかった。
俺は相手に気づいておらず、なんてこともない風を装いながら歩いていく。
メインの通りを外れ、人の少ない方を選んで向かっていく。
「……思ってたよりも情熱的だな」
声でもかけてやれば襲ってくると思っていたのだけど、かなり人気のないところまで来たら一気に俺のことを取り囲んだ。
せいぜい五人ぐらいかなと推測していたのだが、その倍はいる。
気配だけで相手の人数を把握するのは難しい。
想定よりも多くの奴が俺を追いかけていたようだけど、それでも負ける気はしていない。
魔力も使えるし、懐にはデラから受け取ったナイフもある。
「……何が目的だ?」
「一緒に来てもらおうか」
サインが欲しいとでも答えてくれればいいのに、やはり物々しい雰囲気だった。
「なんで? 理由を教えてくれ」
「それは言えない」
人気が少ないとは言っても、まだ少し走れば人がいるところに行ける。
どこへ行くのか、なんの用事かも分からないのにホイホイとついていくバカじゃない。
ここよりも人気がないところに連れ込まれて殺される可能性もまだまだ考えられる。
人の目が届かないアングラな場所は、グルデンダカンには多く存在している。
「あんたが俺なら、いきなり囲まれて一緒に来いと言われて行くか?」
「俺なら行くね」
集団の中でも比較的年上っぽそうな無精髭の男が、俺の言葉に返事をする。
ファイターっぽくはない。
あまり強そうな感じもない。
悪魔っぽさもないし、特に幽霊がついている様子もない。
生きてる人間はあまりいないけど、意外と幽霊がいて物珍しそうにこちらのことを見ている。
死んでもなお野次馬根性があるようでため息を漏らしてしまそう。
死んだ奴らには何か期待できるわけじゃない。
ただ幽霊の感じを見ても悪魔関係という雰囲気ではなかった。
「俺は行かないんだよなぁ。何されるか分かったもんじゃないからな」
「大人しくついてきた方が身のためだぞ」
「安い脅しだな」
よく聞く脅し文句に笑ってしまいそうになる。
十人もいるのはツラいけど、全体的にも強そうとは思えない。
魔力が使えるやつでもいるなら話は別だが、十分に勝てる自信があった。
「なら来いよ。身のためってやつを教えてくれ」
余裕の態度は崩さない。
これもまた相手を威圧するための方法だ。
「…………」
無精髭の男は険しい顔をする。
取り囲まれた圧はあれど、本気で襲いかかってくる感じはない。
「ブレない男は嫌いじゃないわよ」
「……あんたは、フエメス」
「あら、覚えていてくれたのね?」
睨み合いの膠着状態が続いていると俺を取り囲む男たちの後ろからフエメスが現れた。
男なのだけど赤いドレスを着て、派手なメイクをしているフエメスは、俺が名前を呼ぶと驚いた顔をした。
「一度会ったらあんたは忘れられないよ」
こんなに堂々と女装した男はこの世界じゃ珍しい。
会いに行くような用事もなかったが、思い出そうと思えばすぐに思い出せる相手であることは間違いない。
「光栄ね」
「それはそうとして……これはあんたが仕組んだのか?」
こんな現れ方をして関わりがないはずがない。
それはフエメスに睨みつけるような視線を向ける。