魔王が滅ぶその日まで
朝食を終えたフィオナは、アレフに連れられて研究室へ向かった。
部屋に入ると、机の上には何冊もの本が積まれている。
アレフはその中から一冊を取り出し、椅子へ腰を掛けた。
「今日は魔法の基礎を教えるよ。」
フィオナも向かいへ座る。
「まずは、魔素について。」
アレフは本を開きながら話し始めた。
「魔素は、この世界のあらゆる場所に存在する力だ。
空気の中にも、大地にも、水にも、生き物の体にも流れている。」
ページをめくる。
「でも、魔素があるだけでは魔法は使えない。」
「魔法を使うには、魔素へ意思を伝える必要がある。」
「その役割を持つのが――詠唱だ。」
フィオナは静かに耳を傾ける。
「詠唱とは、魔素の働きを命令する言葉。」
「命令が正しく伝われば、魔素はその命令に従って形を変え、魔法になる。」
「逆に、命令が曖昧だったり間違っていたりすると、魔法は発動しない。」
アレフは本を閉じた。
「もちろん、これだけじゃない。」
「精神力や魔力の流し方、属性との相性なんかも関係してくる。」
「でも、それはこれから少しずつ覚えていけばいい。」
研究室に静かな時間が流れる。
アレフはフィオナの表情を見る。
「……ここまでで、覚えられそう?」
フィオナは少し考え、小さく首を横へ振った。
「……難しそうです。」
その答えに、アレフは困った様子も見せず、小さく頷いた。
「そうか。」
少し考え込む。
そして、ふと思い出したように口を開いた。
「昨日、メイド長に仕事を教えてもらったよね。」
「どうやって教えてもらった?」
フィオナは昨日のことを思い返す。
「最初に、やっているところを見せてもらいました。」
「そのあと……同じようにやってみました。」
「なるほど。」
アレフは納得したように微笑む。
「君は、見て覚える方が得意なんだね。」
そう言うと、椅子から立ち上がった。
「それなら。」
フィオナへ優しく視線を向ける。
「魔法の世界を見せよう。」
その言葉に、フィオナの瞳が少しだけ輝く。
魔法の世界。
その響きだけで胸が高鳴った。
アレフは静かに息を吸う。
「──この世界の理を。
我らに示しせ。
主張せよ汝の存在を。」
柔らかな光がアレフの足元から広がる。
「一般魔法――《魔素可視化》。」