召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
M M vs. 霊能力者 (前編)
神社で神職のバイトとして働いている最神玲と物部かすみには、最近もう一人新しいバイト仲間が増えた。と言うよりも、かすみに弟子入りした、と言うのが正しい表現であろう。そのバイト仲間とは、霊能力者として有名なと言う女性である。霊能力者としての地位と名誉を既に得ている神室霊華がなぜ美土路神社でバイトをしているのか?何かの罰ゲームかと思われるが、これは彼女が自分から望んでここにやって来たことに由来する。詳しい話は別の所で語っているが、この3人で今は神社の掃除や雑務を熟していた。そんな年の瀬も押し迫る師走のある日。この日は1日中雲に覆われた天気で、しかも時折強い北風が美土路山を越えて吹き降りてきたりして、兎に角寒い。早く社務所のストーブに温まりたいと心から願いながら参道を竹箒で掃除する玲であるが、そんな彼の背後の石段から、数人の和服姿の一団が現れた。今年も年末詣の時期かと思ったものの、何か少し早い気がしなくもなかった。それよりも、この落ち葉が風に飛ばされないうちに早く片付けようと足元の落ち葉をかき集めていた時、後ろの集団が玲に声を掛けてきた。
「すいません、こちらに
神室霊華様はお見えでしょうか?」
あー、神室さんのお知り合いか、と言うことで、「社務所に居ますよ」と指差して彼らに教えた。そして、その一団は玲に何も言わずそのまま社務所に向かった。
「神室霊華様、ずいぶんと探しました。
ここ最近我々からの連絡にもご返事を頂けないし、
また会合にも出られないしで、
てっきり何か異変があったのかと心配しました」
「あら、正門様、それに皆さんまで、
ご心配おかけして申し訳ありませんでした。
私はこのようになく過ごしております」
と神室霊華は丁寧に答えた。この時かすみは、何だ、霊華さんの友達か、と言うことでそれ以上興味はなくなり、とりあえず今手にしている虫干ししていた古い書類の片付けを手伝ってもらおうと、神室霊華に声を掛けた。
「あ、霊華さん、これ片づけるの
手伝ってもらえますか?」
「はい、わかりました」
と神室霊華は立ち上がってかすみのところに向かった。それを見ていた一団は、急に鬼の形相になり、
「お、お、お前、
そのお方がどなたか分かっているのか!」
と怒り出した。お前呼ばわりされたかすみは、カチンと来たものの、こういう輩の相手は馴れているので、
「ええ、知ってますよ。神室霊華って、
有名な霊能力者で、それに旧華族の家柄の
ご令嬢やってことぐらいはね」
と神室霊華を見ながらニヤニヤして説明するかみすである。そんなかすみを見て、神室霊華は、「師匠、止めてください。恥ずかしいです」と呟いて、本気で顔を赤らめて俯いてしまった。これは明らかにかすみは楽しんでやっていることは見え見えであった。だが、その一団は、かすみの挑発に乗ってしまった。
「お、お前、分かっていてその態度は無礼だぞ」
「はぁ? 無礼て何やねん、こら。
あんたら名前も名乗らんと無礼やら言うてるけど、
そんなん社会人としてどうなん?
おかしいやろ、ほんま」
とかすみは自分の頭を指で突きながら、なおも挑発するのだった。そんな時、呑気に玲が神室霊華に声を掛けてきた。
「神室さん、そっちが済んだら、
こっちの落ち葉を片付けるの、
手伝ってもらえますか?」
はい、分かりました、と答える神室霊華であるが、これがまたその一団の怒りを誘うのに十分であったようだ。だが、そんな彼らを無視して玲は真剣な顔をして、
「かすみ、この人たちって、
神室さんの親衛隊か何かなの?」
とかすみに尋ねた。これには、かすみも当の神室霊華も、最初キョトンとするが、そのうち2人して声を出して笑いだした。「し、親衛隊って……れ、玲、な、なんでそんなん知ってんの?」とかすみは腹を抱えて笑いながら玲に問いかけたが、玲は真顔のまま何かの番組でそんなことやってたから、としか答えられなかった。だが、彼らのやり取りで、ほぼ一団の怒りは頂点に達したのだった。
「き、き、貴様ら、よくも我々だけでなく、
神室霊華様も侮辱したな」
ん?そこ逆じゃね、神室霊華だけでなく、我々もだろ、と冷静にツッコミを入れようとしているかすみである。まあ、とりあえず、侮辱も何も、今は普通に対応しているだけだからと、この連中の相手は玲に任せようとしたのだが、
「あなた方も霊能力者ですか?」
と一団の中の別の人物からそう問われた。そこで、代表してかすみが
「うーん、霊能力者って言われると、
ちょっとちゃうねんな。
正しくは召喚術師やねん」
と何やらとぼけた態度で答えるかすみである。こうなるとかすみは、ほぼ無双状態に突入するのだった。だが相手の方は、召喚術師が何たるかが理解できないようで、だが神室霊華が師事している様子から、霊能力と関係あるのだろうと推測した。そこで、その一団は何やらヒソヒソと相談事を始めたようで、数分後には、代表して正門なる人物が玲とかすみに対し、
「お前たち、そこまで我々を侮辱した以上、
それなりの実力があるということだな。
では、我々と霊能力対決をしようではないか。
どうかね?」
と何やらニヤニヤしながら玲とかすみに対し挑戦状を叩きつけた。玲もかすみも本来なら、こういう輩を相手にすることはないのだが、この時は何故か2人とも乗り気になってしまい、その対決を受けて立つことにしたのだった。ところで、なぜ彼らが受けて立とうと思ったかと言うと、単に面白そうだから、である。かすみならいざ知らず、玲がそのような感情を持つに至ったのは、恐らくかすみの悪影響だろう。全く、かすみには困ったものである。そして、神室霊華であるが、何やら自分を心配してここまで来た霊能力者の仲間たちが、自分の師匠達と何やら対決するということで、かなりというか相当不安になり、そのうちパニックに陥りそうになったりした。だが、そんな時でもかすみは神室霊華を気遣ってフォローするため、彼女はかすみの心遣いに感謝したのであった。そして、その対決だが、最初は差間見町と米野市の境にある廃墟でとなった。ところが、その場所を確認したところ、
「ここって、この間霊華さんが除霊したとこやね」
とかすみが玲に確認した。「うん、確かにそこだね」「はい、そうですね」と玲と神室霊華が同意したため、それを聞いた一団は、「流石、神室霊華様、既に除霊されていたんですね」と何やら訳の分からない解釈をし出した。まあ、間違ってはいないから、と言うことで玲とかすみもそのままにしたが、そうなるとどこで対決するかとなる。そのうち、一団の一人が
「そう言えば、隣の○○県の山中に
かなり危ないと言われる廃村がありますが、
そこはどうでしょうか?」
と提案してきた。廃村と聞いて、かすみは少しビクッとしたが、かすみが捕らわれた廃村とは全く違う場所なので、取り越し苦労であったのだが。それでも、彼らの言う廃村はかなり危ないとの噂があるため、除霊も兼ねてそこでの対決となった。日時は今すぐと行きたい一団だが、玲とかすみと神室霊華が自由になるのは週末だけのため、ここは神室霊華の都合を優先して週末にすると宣言された。それだったら、別にうちと玲でもええやん、とかすみは突っ込みたくなったのだが、こういう輩は、自分たち優先かそれ以上に神室霊華優先で動くから仕方ないか、と諦めながらも同意した。そして時間は、雰囲気が出る夜8時となった。それなら、別に今日でもいいし、週末にするんだったら別に夜じゃなくても日中でもいいんじゃない、その方が暖かいんだけどな、とは玲の個人的な感想である。対決の日時が決まったことで、一団はその場を去って行った。
「ごめんなさい。最神さん、かすみさん」
と頭を下げて謝罪する神室霊華だが、これは全く彼女に責任はない。そのように玲もかすみも神室霊華に伝えて、ただし、自分達も一般の霊能力者がどういうレベルなのかが知りたいので、丁度良かったですよ、と気楽に答えたのだった。かく言う神室霊華も、今の自分が彼らから見ると果たしてどうみられるのかについて興味があるので、とりあえず週末の対決を楽しみに待ちますと言って、その日は仕事を終えた。