召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
最神玲、呪い返しと遭遇する(その後)
最神玲の話を聞き終えた物部かすみは、果たして玲の体験が現実のことなのか、それとも自分をっているのか、一瞬判断に迷った。だが、目の前の玲の姿を見ると、決して冗談ではないことは分かり、そうなるとそんなことが現実に起きるものなのかと考えた途端、ただ呆気に取られて茫然としてしまうのだった。そしてまず何がどうなったかを整理しようとするも、何をどう整理したら良いのかが分からない。そして結局訳が分からないままにかすみが発した言葉は、
「玲、お帰り」
だった。先程は玲がかすみの帰宅に対し贈った言葉だが、かすみの言葉は玲が無事生還できたことに対しての言葉である。玲も苦笑いをしながら、「ただいま」と返してくれたことは、かすみにとっては嬉しかった。ところで、
「玲、あんた病院行かんでもええんか?」
と、玲の酷い姿を見ると、どうしても心配になってしまう。だが、玲は全身擦り傷だらけであるが、骨折とかはないという。しかし、頭のダメージだけでも検査した方が良いのではとかすみは玲にアドバイスしたのだ。だが、残念ながら医者や病院は、大型連休のためどこも休みである。休日診療をしている所が無くはないが、脳の検査が出来るような体制にはなってない。救急車を呼べば、どこかの救急センターに搬送されて検査を受けることは出来るだろうが、ではなぜこんな大けがを負ったのか?それを説明することになり、それは玲にとって甚だ迷惑と言うか面倒な事である。従って、連休が明けるまでは様子見と言うことにした。まあ玲の場合、ロムリアからの転移者の中に医者がいる事を知っているので、最悪の場合はその人に連絡して診てもらうことを考えていた。後は連休明けの神社での仕事であるが、出来るだけ肌の露出を避け、口元はマスクをすればある程度は大丈夫だろう。
さて、玲の壮絶な体験を聞いた後、かすみは自分のことを報告するのになぜか気後れしてしまった。だが、そもそも玲の体験が異常なのであり、それと一緒にすべきでは無い筈である。そして一通りかすみが体験したことを玲に語ったところ、
「ほー、神室さん、もう3種類も召喚したんだね。
で、名前はどうしたの?」
もしかしてフクロウのかすみちゃん(仮)になったんじゃない?と、まさかこいつ知るはずもないのに、何でピンポイントにそれを当てるか、とかすみは驚くとともに、何か腹が立ってきたので、
「はぁー?何言うてますの、玲さん、
そんなん決まってるやろ、
フクロウのレイちゃん(仮)だって」
いやいや、おかしいだろ、何で僕がそこに出るんだ、と玲もかすみに抗議し出した。まあ、最終的にどう決めるかは神室霊華次第なのだが。そんな感じて漸く、何時もの日常の風景を取り戻した玲とかすみである。玲はともかく、かすみはやはり玲が心配で仕方なかったのだが、こんな何時もの何気ない会話が出来たというだけで、何だか嬉しくなり、そして気持ちが楽になったりしたのだった。
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大型連休4日目の夜、東京都内のある1ルームマンションの一室で、男は缶ビールを飲みながら目の前のテーブルの上に積まれた札束を眺めて、満面の笑みを浮かべていた。
「しかし、ちょろいもんだよな。
少し手を加えるだけで使いまわせて、
しかも1回で俺の1カ月分の給料以上を
稼ぐんだからな」
そのテーブルの上には、これまでに副業で稼いだ現金が積まれていた。その額一千万円。
「この調子だったら、直ぐに数千万円か、
もしかして一億になるのか。
まあ、ちょっとした小遣い稼ぎとしては
丁度いい感じだな。
あるいは、こっちを本業にしても良いかもな」
この男は都内の中小企業に勤めるサラリーマンである。そして今は副業である仕事をしていた。それは、呪い代行業である。尤も、この男が直接呪いを行うことは無く、むしろ呪いを実行したい相手に対し効力絶大の呪術を売ることを副業にしていた。昨日も男のところに呪術依頼の問い合わせが来た。しかも直ぐに不特定の人物に対し呪いを実行したいようで、向こうからの連絡があった直ぐ後に現金が送られてきた。ちなみに、もし彼が行う場合、その料金は一千万円としていた。そして殆ど例外なく、自分で行うとなるのだが、もし一千万円払うから男にやって欲しいと依頼があった場合、彼はどうするか。答えは簡単で、その人物との接触を断つことにしていた。なぜか?これは自分がやるには危険すぎるから。いや、誰がやっても危険すぎるからか。だがどうしても呪いたい相手がおり、そいつを今直ぐに呪い殺したいという願望を持つ者に対し、やめておけ、と止める気はない。それよりも、「ここに良い物がありますよ」と言って売り渡した方がお互いの利益になる。そう割り切って、この副業を続けている。
そんなことを考えると笑いが止まらなくなる。そしてこの男のスマホの使い捨てメールアドレスに、あるメールが届いた。それは宅配業者からの通知である。どうやらまた荷物が送られてきたようだ。じゃあ早速受け取りに行こうか、と手にした缶ビールをテーブルに置いて腰を上げた時、インターホンが鳴った。液晶画面を見ると見知った3人の奴等の顔が。そして、
「おーい、いるんだろ。出て来いよ!」
と突然ドスを利かして大声を出しながら玄関扉を叩き出した。くそ、またあいつ等か、あのどもが、と悪態をつく中本である。この男、は、玄関前で大声で怒鳴っている連中から、パシリのようにこき使われている。中本はその連中にとっては都合のいい遊び相手であり、いいカモである。何だかんだと中本を呼び出しては金を貢がせ、挙句の果てには何か気にいらないことがあると中本を殴ったり蹴ったりする。そんな連中なら、さっさと縁を切れば良いのだが、向こうがそれを絶対認めない。そこで中本は、こいつらを合法的に葬る手段を考えるようになり、そして辿り着いたのが今の副業で売込んでいる呪術である。
ところで、中本がこの呪術を知ったのは、実は偶然である。切っ掛けは、誤配送なのだが、2年以上前に彼は通販サイトから呪術に関する書物やアイテムを買い集めていた時期があり、その時なぜか自分が頼んだ品物とは全く異なるある物が送られてきた。そこには呪術の詳細が書かれたA4用紙数枚だけと言う、下手するとぼったくられたかと怒りたくなるような内容だったが、よく読むと中々に興味深い呪術であることが分かった。そしてその資料にはURLが記載されており、中本は早速そこにアクセスした。すると何やらアプリをダウンロードするようになっていたので、胡散臭いと思いながらもそれをダウンロードした。そして立ち上げると、それは音声認識機能の付いた翻訳ソフトのようであり、しかもそのアプリのヘルプには、呪術を行う者の名前をマイクを通してアプリに伝えるか直接ダイアログに書き込むと、その人専用の呪術言語に変換すると書かれていた。そしてこの呪術言語と資料があれば、呪術が可能となる、とあったのだ。増々怪しいというか、絶対嘘だろうと思った中本だが、しかし効果の程を確認せずに捨てるのは惜しかった。だが自分が実験台になることは御免被りたい。
そこで中本は成り済ますことを考えた。誰に成り済ましたかというと、先程玄関前に現れた連中の一人である。実は先程玄関前で大声を出していた連中は、元々4人組だった。そのうちの1人と中本が飲みに行き、その男を酔い潰した時にその男の体液を頂戴したのだ。そして、その男の名前を使って呪術言語を作成し、次に呪う相手として、同じ4人組の中の別の1人を選んだ。そして中本は呪術を行ったのだが、効果はであった。呪術を行った翌日、ターゲットなった男が心不全か何かで死んだという知らせがその連中にされ、当然中本もその事実を知ることとなった。こうなると、この呪術はまさに本物だと思えたわけで、これで漸く自分の念願が達成できると期待した。そうであれば、中本もさっさと外の連中に対し使ってしまえば全て片が付くのだが、問題は効果があり過ぎて、下手すると自分の命を失いかねないのではないかと危惧したのだった。
だからと言って、このまま闇に葬りたくないし、これはある意味天が自分に与えた宝物と考えたことで、中本はこれを他人に売って商売することも可能と判断した。そこで、早速中本は商売の仕組みを考え始めたのだった。なお、この時に重要な点は、支払われる金をどのように受け取るかであった。闇組織に伝手があれば第三者の銀行口座を取得できたりするだろうが、中本にそのような伝手はそもそも存在しない。またクレジットカードなども足が付きやすい。とは言え、別に副業だということで税務申告すれば問題ないのだが、どうしても欲が出てしまい、このまま全額自分の懐に入れて、なおかつ足がつかないようにやろうとしたのだ。そして得た結論は現金の受け取りである。ただし現金書留は論外。そこで宅配で配達してもらうことにしたのだが、当然これは違法行為であるため見つかれば没収されるし、警察の手が及ぶ危険性が高い。そこで、レンタルオフィスを利用してそこに宅配してもらうことにしたのだ。ただし、レンタルオフィスを借りる時に身分証明が必要となるが、そこは最新設備がありセキュリティ万全なところである。古いオフィスで常に空きがあり、閑古鳥が今にも鳴きそうなところは、少し多めに契約金を支払うと無条件で貸してくれたりするため、中本はそう言うところを利用して架空の会社を立ち上げた。ただしセキュリティは期待できないため、宅配が届いたら直ぐにでも取りに行くようにしていた。
後は電話だが、これは本来する必要のない行為である。だが、敢えて電話をすることで相手を安心させる効果があることは自分の体験上分かっていた。そこで、ネットで足のつかない方法を調べた所、あるIP電話アプリを使うことで海外の電話番号を取得できることが分かり、それを使うことにした。念のためスマホは中古を使用することで、どう頑張っても警察がここに辿り着くことはないと判断した。いや、警察よりもマルサを警戒したと言うべきか。
そのうち、外の連中が諦めて帰ったのか、静かになった。尤も外の様子を見にうっかり顔を出すと、扉の死角からひょっこり現れて、そのまま部屋の中に連れ戻されて殴られる、なんてことが過去にあったので、そこは用心することにした。特に今は、現金一千万円がテーブルの上に置かれた状態である。あいつらのことだから、この現金の出所を白状するまで居座って暴力を振るい続けるだろう。そうならないためにも、今は亀になって首を出さないにこしたことはない。まあ、時間も遅いし、届いた荷物は明日取りに行けば良いか、と言うことで、中本は再び座ってビールを飲みだした。そしてこのままテレビでも見てから寝るか、と考えていたその時、彼の背後に何かが現れた気配を感じた。振り向くとそこには何もない。無いが何かがある気配を感じた。そしてじっとその部分を凝視していると、僅かに空気が揺れる気配を見て取った。そして、その空気の揺らぎがはっきりし出すと、何やら実体化した物が現れつつあった。こ、これって、ま、まさか、あ、あの資料のやつか!! 咄嗟に中本は机の引き出しからその資料を取り出し最後に書かれている行を読もうとしたが、時すでに遅し。彼は背中とお尻がくっ付いた形で二つに折られていた。そして彼の手には、その資料が握りしめらており、最後の一文
[※ 呪術者が呪い返しを回避した場合、
あなたに呪い返しが来ますのでご注意ください]
が血で赤く染まりだした。