召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
美少女降霊術師の心霊事件簿7: 夏合宿 in 北海道 (後日談)
北海道での取材旅行から帰った2日後のジーエックスのスタッフルームでは、社長兼プロデューサーのが今回の取材旅行に参加したスタッフ達から話を聞いていた。ディレクターの山崎慎吾ら取材に同行したスタッフらは、昨日一日で使える素材があるかどうかを徹夜でチェックしていた。そして使えそうな部分を抜き出して動画にまとめ、何とか今日の全体会議に間に合わせたのだった。そこで最初は、湖周辺の探索を行っていた有田雄介からの報告から始まった。共有フォルダ―にある動画をクリックして映像を映し出したが、何とも微妙な映像となった。やはり誰かしら霊能力者のサポートがあれば良かったのかと悔やまれるが、一方で物部かすみも神室霊華も大した霊体はいないと言っていたので、ある意味これが限界なのかとも思われた。そして次は廃団地班の映像となった。まずはが撮影した映像を映したが、こちらは少し遠方からではあるが、かすみが霊道に入って行く様子が撮影されていた。その時のかすみは手を上げながら突然消えてしまったが、その場でこの映像を見た全員が驚きの余り声を無くしてしまった。何かそこに別の世界への入口があるような感じを受けたのだ。尤も彼らには既に分かっており、それは別の世界ではなく霊道であるのだが。その後の來田の映像では、霊道らしきものの中に現れる何かを捉えているが、残念ながら誰もそれが何かを把握できない。場合によっては、後日神室霊華の所に出向いて話を聞くべきだろうか、と山崎は考えていた。
さて次は山崎の撮影した映像である。と言っても、実は殆どはかすみが霊道内で撮影した映像なのだが。実はかすみの撮った映像は相当な量があるため、それを編集するのにかなりの労力が必要であった。だがそこはプロである。しっかりとそのままでも使えるような形でまとめてきたのだった。そしてモニターにその時の映像が流れだした。
映像が終わった後も、全員何も口をきけない状況である。確かに、編集した山崎本人ですら、こんな映像を今までの人生で見たこともないという程の衝撃を受けていた。まずかすみがカメラを受け取り、そのまま霊道に入った時、一瞬だが画面全体が不自然に揺れた。その後元に戻ると、そこに映されていた光景は、まるで時間が遡ったのかと思われるような光景を映し出していた。丁度かすみの正面にある炭鉱住宅が映されたが、まるで昨日建てられたかのような真新しさがそこにはあった。残念ながらその建物の中にも外にも人影は見当たらなかったが、確かに建物の窓に割れやはなく、外壁の塗装の剥がれなども全く見られない。これはどういうことなのか?残念ながら山崎には分からない。ちなみに、かすみ本人はと言うと、そんなこと全く気にしておらず、まあ彼女の性格からして十分あり得るだろう。それからかすみが何やら独り言を呟くが残念ながら聞き取れない。尤も、自分もこんな所に一人で取り残されたら、独り言でも呟かないと気が変になるよな、とかすみに同情したりした。
その後なぜか録画が止められたのか途中から画面が急に切り替わったようで、かすみが学生たちを呼ぶ声が録画されていた。それから2人の学生が現れて、無事かすみと合流できたシーンが映し出されていた。その時の彼らの安堵の表情は、決してそれがやらせや演技ではないことを物語るに十分な迫力があった。それからかすみが、霊道の外に神室霊華が一瞬だが見えたと言っていた。勿論その瞬間は映されてないが、その後かすみが学生を押し出した時、彼らがその空間から消える所、そして確かに一瞬だが白い制服を着た人物がその向こうに見えたのを確認した時には、確かにかすみが言ったことが事実であることが裏付けられた。それからかすみは前方に向き直るが、何やら走り出そうとするも全く動いておらず、その後何やら文句を言い出した様子が録画されていた。恐らく、かすみが「と言う名のもんには絶対負けられへん」と言った呟きが拾われたようだ。
その後は特に何の動きもないのでその部分はカットしたが、それからかすみが鞄から日傘を取り出してそれを差すところが録画されていた。特に他愛もないシーンなのだが、非現実的な状況に於いても日常の行動が平然と行えるかすみと言う人物の魅力を伝えれるのではないかと山崎は考えて、このシーンを採用した。そしてそのうち、最初は冗談かと思われたが、本当にかすみはその場で居眠りをし出したのだ。と言ってもカメラにかすみの寝顔やが録画されていた訳ではないが、途中でカメラの持ち手が緩んだようで、そのまま横倒しになったのだ。そしてそのまま車窓から外を眺めるような映像に暫くなるが、その時に不可解な存在が映し出されていたのだ。それはカメラのレンズを覗き込む沢山の霊体の姿である。恐らくかすみが昼寝していたのは数時間だろうが、その間に目撃した霊体の数は、100を優に越えており、それ以上数えるのが馬鹿らしくなって止めてしまった。ちなみに、今の映像技術でもこういった映像は作れなくもないが、一体一体異なる霊体を数百体用意するのは、かなりの時間と労力が必要となる。まあ、映画であれば、それで数十億円、数百億円と稼げれば何も問題は無いが、我々の分野はその1/100とか1/1,000、あるいは1/10,000の規模である。従って全く費用対効果が伴わないのだ。
そのうち、かすみが起き出してカメラのフレームを正面に向けた時、突然画面の中央にそれが現れたのが確認された。かすみと神室霊華が言っていた霊界への入口である。尤も映像では綺麗なグラデーションの夜空の中にぽっかりと穴が開いている感じにしか見えないが、確かにそこに数体の霊体らしきものが吸い込まれていく様子は確認できた。いや、実際はそれ以上と言うか、画面を埋め尽くさんばかりにたらしい姿の霊体が吸い込まれていったのだが。この様子を再現していた時、上本ハンナは血の気が引いたように顔色が悪くなり、そのまま部屋を出て行った。恐らくあの時の光景を思い出したのだろうと思うと、彼女には気の毒であった。勿論山崎本人もあの映像を思い出すだけで気分が悪くなるが、やはりこの業界に長くいるからか、ある程度の免疫は出来ていたようだ。そして最後に、ブロックノイズが激しい中、突然フレームから霊界への入口が消えてしまった。どうやらこの時に、かすみが言う選別されて落とされた状態なのであろう。その後ゆっくりと下降する様子が映されており、時にかすみがカメラを霊界への入口方向に向けるも、最早そこには何も映されていなかった。どうやら、あの映像は、霊道の中からしか映すことが出来ないようなのだ。そして無事かすみが着地して、録画が停止となったのだった。
「社長、どうですか?」
と山崎は恐る恐る鬼之口に今回の取材の成果を尋ねた。鬼之口は目を瞑りながら腕組みをして何かを考えていたようだが、に目を開けてから、その場にいる全員に向かって、
「皆、今回の取材、ご苦労様でした。
この映像は恐らくとんでもない
事態を招くかもしれないけど、
最後まで気を抜くことなくやり切って欲しい」
と言うことで、無事発売に向けて動き出したのだった。
それから数カ月後、[心霊怪動画蒐―北海道恐怖編―]と言う題名で発売されたDVDは、事前に動画投稿サイトを通じて宣伝をしていたためか、爆発的な売れ行きを示し、いきなり10万本完売するという快挙を達成した。その中でも、やはり神室霊華の存在は大きく、彼女がDVDの中で生き生きとした表情で映し出されたことで、彼女の人気に益々火が付いたのは言うまでもない。だがそれ以上に、やはりと言うか、噂に聞いていた霊道が実際に存在し、しかもその中からレポートされるという、幽霊を信じない者達からはフェイクと一蹴され、幽霊を信じる者達からは称賛されるという、昔とは異なる形の心霊ブーム到来という社会現象を巻き起こすことになったこの動画のインパクトは絶大であった。だがそうなると、当然あそこでレポートしている女性は誰だ、という問い合わせを頻繁に受けてしまう。そして残念ながらジーエックスのスタッフからその名前を伝えることは出来ない。もしそんなことしようものなら、今後M Mからの協力は得られなくなる。そのことをジーエックスのスタッフは分かっているため、只管謝りながら答えることを控えていた。だがある時、一つのアイデアが浮かんだ。それは神室霊華の友人と言うシナリオである。神室霊華は当然そのままDVDに名前と顔が映し出されているが、かすみが彼女とよく一緒にいるシーンも幾つか存在していた。そのため、神室霊華の友人と言うことで対応することになり、これで一応納得してもらえるようにはなったのだった。もしそれ以上のことが知りたければ、神室霊華様に尋ねてくださいと言える訳だから。
とろこで、あの廃団地はその後どうなったかだが、霊現象が無くなったというお墨付きを得たことで、債権者はあの土地の整備に早速取り掛かった。以前は何か工事を行うと誰かが事故に遭うなどの事態に遭遇していたが、今回は何も問題なくスムースに整備が進んだという。鬼之口としても、債権者との約束を果たせたことで面目躍如となり、自分の株を上げることも出来た。そして更に、山崎以下ジーエックスのスタッフ全員に特別ボーナスを支給したのだった。そしてM Mだが、彼らも当初の百万円よりも少し多い金額を受け取ることが出来たのだった。