召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
ロムリア探訪記: 10日目 (前編)
ロムリアにやって来て10日目のこの日、最神玲、いやその中身のカーンフェルトが待ちに待った日を迎えた。自分が召喚術師養成学院に転入してからサモナルドでの人生最後を迎えるまでの10数年を過ごした街、ケンタリア。そこに今日訪れる予定である。ただし、カーンが住んでいた時代よりも千年も前のケンタリアであるのだが。それでもカーンとしてはそこにケンタリアがあるかどうか、先ずはそれを確認したい。そしてもしそこに街があり、かつその街の領主か責任者が「ケンタリア」の名前を持つのであれば、そこは間違いなく後のケンタリアであると確信できる。なぜならケンタリアの住人であれば誰でも知っている歴史のためである。 ケンタリアは初代の国王となる人の名前から付けられた国である と言うことを。
逆に、もしそこに街が無くても、場合によってはもう少し後に出来る可能性もあるため、悲観的になる必要はないと思っている。いや、心のどこかでは、実はこのサモナルドにはケンタリアと言う国は存在しない方が良いのでは、とそれを期待している自分もいる。なぜそう思うのかは、やはりあの存在のせいである。
巨大クレーター
あれは実は別のサモナルドに似た惑星の話で、今自分が居るサモナルドの話ではないと思いたいのだ。そんな両極端な気持ちに引き裂かれそうになりながら、でもやはり前に進むしかないことは自覚している。そして何とか自分の気持ちを奮い立たせようとしていた時、玲の部屋にセラスティナがやって来て、朝食に誘われたのでダイニングに一緒に向かった。
「今日はいよいよレイさん、
じゃなくてカーンさんの
故郷に向かうのよね?」
とエンペラールが玲に尋ねた。玲は若干沈み込んだ気持ちのまま、先程考え込んでいたことを2人に話した。
「僕としては、創建時のケンタリアを
見たい気持ちがあるんですが...」
と一旦言葉を切って、
「その一方で、無い方が良いかなと
考えたりするんです。何か変ですよね?」
ははは、と無理に笑顔を取り繕った。そんな玲に対しエンペラールは
「レイさん、あなたが私たちのことを思って
クレーターは実はこの世界の話ではなかった、
と言うことを期待しているのであれば、
そんなこと気にする必要はないのよ」
と言いながら玲の目をしっかりと見つめて、
「まあ、何か予期せぬことが起きるとしても
レイさんがいる間であれば、
この3人で対処できるだろうし、
その後でも私とセラちゃんで何とかするわよ」
だから心配しないの!とエンペラールはコロコロと笑いながら玲を諭した。玲も、そんなエンペラールの姿に心を打たれたのか、
「そうですね。お2人が居るんですから、
心配する必要はないですよね」
はぁ~、僕って、何かこういう細かい所を気にするみたいなんですよ、それで何時もかすみに怒られてるんですが、と玲がぼやきながらそんなことを語ると、セラスティナが
「ほんと、そうよね。
レイ君はカスミさんの言うことを
ちゃんと聞いた方が良いですよ!」
とかすみに同調するアドバイスをしてきた。「いやいや、タチアナさん、あいつのアドバイスとか、まともに聞いたら駄目ですよ」と玲は言うのだが、セラスティナは「えー、私なら、レイ君よりカスミさんの方を信じるな―」であった。何だろう、その謎の信頼感は?と玲は感じたが、お陰で気持ちとしてはかなり整理がついたようで、何だか楽になった気がした。そんな玲の表情が顔に出たのか、エンペラールも微笑みながら
「まあ、細かいことを考えずに、
今日のことを楽しみましょうよ」
今日はその後ロムリアの裏側に行くんでしょ?あそこは私も行ったことないのよね~、と嬉しそうに2人に語るのだった。そして玲も、かなり前向きになって、ケンタリアに向かう準備を進めた。
ケンタリアがあった場所はカーンしか分からないため、転移は全てカーンと言うか玲の主導で行われた。玲は
「確か、クレーターから百キロほどの所に
ケンタリアがあったよな」
というな記憶を頼りにケンタリアの場所をサーチした。すると幾つか候補地が見つかったが、その中から比較的大きな街を選んで、そこに転移マーカーを設置した。そして、エンペラールとセラスティナに対し、
「先ずはここに向かいますので、
宜しくお願いします」
と断って、3人はその場所に転移した。
そこは、ロムリアの郊外と言うよりも、ロムリアからはかなり西に大きく外れた所にある街である。そこからロムリアの方を見ると、視界の中にぼんやりとだが平べったい固まった存在が見てれ取れるが、そこがロムリアである。そしてこの街だが、総戸数が数十軒程の小規模な集落であり、カーンからすると何となくケンタリアの旧市街の趣を感じるという。そこで、街の住人にこの街の責任者について尋ねた時、「あー、フィルさんね。彼女はあそこに住んでるよ」とその建物を示した。そこで3人はその建物に向かうことにした。
「すいません、
この辺で人を探しているのですが...」
と玲は扉をノックしてそう尋ねた。すると、年配の女性が外に出てきたので、玲は、
「お休みの所すいません。
僕らは人を探してまして...」
と用件を言い終わるより先に、その女性はエンペラールとセラスティナに目を向けた途端、目を開けたまま固まってしまった。どうやら、大臣の1人が目の前に現れたことで、 自分が何かやらかしたのか?”と不安に陥ったようなのだ。そして何かを察したエンペラールが「今回私たちはこちらのレイさんの付き添いですので、御心配には及びませんよ」と優しく語り掛けた。すると、気持ち的に落ち着いたようで、「そ、そ、そうでしたか。すいません、突然大臣様がお見えになったのでビックリしました」と言って先ずは3人に対し謝罪した。そして改めて玲が来意を説明した所、
「うーん、ケンタリアと言う名前の人は
この街にはおりませんよ」
であった。そっか、残念! と心の中で残念がる玲だが、気を取り直し「有難うございました」とその女性に礼を述べて再び探索に戻った。ただ残念ながら、この近辺の街にはケンタリアなる人物は見つからなかった。そして玲は、気落ちしたのか
「うーん、もしかしてまだこの時代には
現れていないということなのかなー」
と溜息をついてそう呟いた。そんな玲を見てセラスティナが
「レイ君、もう少し足を延ばしたらどう?」
と提案したので、そこから更に西にある街に向かうことにした。
そこは、数件程度の農家が軒を並べるだけの村と言うか集落であった。外で畑仕事をしていた壮年の男性に対し、玲がケンタリアなる人物が居ないか尋ねた。すると、
「ん?わしのことだが、
お前さん、わしに何の用だ?」
その言葉を耳にした玲は、一瞬虚を突かれたかのようにただその男性を見つめていた。そしてその男性は、怪訝な表情で玲を見ていたが、直ぐに興味を無くし、自分の仕事に没頭し出した。玲は漸く意識が戻ったようで、だがやはり心のどこかが空虚なのか、心ここにあらずなのか、ぼんやりとしていた。そんな玲を見かねたセラスティナが、その男性に「すいません、お邪魔しました」と断って、玲を無理やり連れだした。玲はセラスティナに手を引かれるまま、とぼとぼと歩き出した。3人がその集落かすら少し離れた所にやって来た時、漸く正常に戻った玲が興奮を隠しきれず騒ぎ出した。
「そっか、ここ、ここなんだ!!
僕が千年後に住むケンタリアは!!」
それからロムリアのある方向に目を向けると、王宮の先端部がかろうじて目に出来る程度であることが分かった。そうなると、やはりあそこは...
「......僕の居た時代のクレーターは、
やはりロムリアの跡なんですかね」
とポツリとそう呟くのだった。
「ほらほら、レイさん、
そんなこと今考えても意味はないのよ。
先ずは今日これからのことに
集中しましょう!」
と落ち込んだ玲を励ますように、エンペラールがそう口にした。そしてセラスティナが、
「さて、次はいよいよロムリアの
裏側に向かうけど、
皆さん準備は良いですか?」
玲も何とか気を取り直して、「はい、大丈夫です」と元気よく答えた。そして3人は、ロムリアの裏側の世界に転移して行った。