召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
ロムリア探訪記のその後1
最神玲は物部かすみから自分が召喚されてから現在までの事情を聴いて、特に大きなトラブルが起きなかったことに安堵の表情を浮かべた。だが、かすみの顔を見ていると何か引っかかるな、と玲は感じていた。だが今この段階でその正体が分かる訳ではないため、とりあえず今回のロムリア訪問に関してかすみに話すことにした。が、その前に、
「かすみに、お土産があるんだけど」
と言って、リュックサックの中から、あのロムリア饅頭を取り出した。
「ほら、僕が行くとき、
お土産何がいいって聞いただろ。
その時かすみが」
ロムリア煎餅かロムリア饅頭でええよ、と言うことで、
「ロムリア煎餅は無かったけど、
ロムリア饅頭はあったんだ」
と言って、かすみにあのロムリア饅頭の詰め合わせを渡した。かすみも殆ど冗談と言うか、何時ものお約束のネタだったのだが、まさか異世界であるロムリアに饅頭があるとは想像も出来なかったようで、「冗談やろ~!」と笑いだしそうな表情を浮かべながら玲を瞬きして見つめていた。
「一応、タチアナさんと試食して
確認したから大丈夫だけど、
心配なら僕が食べてみるよ」
と言って玲は一つ取り出しそれを半分に割り、「向こうのあんこは赤いんだよね」と言いながら片方を口に入れた。それを見たかすみも安心したのか、玲からもう半分を受け取りそれを口に入れた。見た目はどう見てもあんぱんのようなのだが、
「うわー、ほんまや、これ、饅頭やんか!」
とかすみは驚いたようだ。そこでその饅頭に関する種明かしではないが、どうやって作られたのかについてかすみに説明した。かすみも、「へぇー、そんなんできるんやねー」と何やら感心していた。まあ、これで一つ目のミッションはクリアしたと玲は思った。そして、
「後ね、タチアナさんからの
プレゼントじゃないけど、
ロムリアの最新ファッション図鑑が
あるんだけど見て見る?」
と言うや否や、かすみの目の色が変わり、
「ちょっ、玲、
焦らさんとさっさと見せてーや!!」
と凄い剣幕で迫って来た。そこで玲は、タチアナが用意した情報端末をリュックサックの中から取り出した。
「これはね、ロムリアで使われている
スマホみたいなものなんだけど、
ただスマホよりも凄く進化していてね」
こうすると、ほら、こんな風に三次元で表示されるんだよ、と説明しながらかすみに情報端末を渡した。まさか、端末の真上にホロスコープ以上の解像度と言うか、そのまんま小さい人じゃね?との感想を抱きながら、高精度、高精細で3次元表示される人物が現れた時、かすみは無言になって目を見開いたままその人物をじっと見つめていた。そして、そこに投影されるロムリアのファッションの色鮮やかさに心を打たれていたのだった。
「れ、玲、これ、まじ、凄ない!!
こんなん見るの初めてやわ!」
「これだったら、かすみが喜ぶと思って
タチアナさんが用意してくれたんだよ。
お礼を言うなら、来年召喚する予定の
タチアナさんに言ってあげてね」
と玲から伝えられたかすみは、
「絶対、絶対、絶対に
タチアナさんにお礼を言うし、
何かお返しがないか考えるわ!!」
と興奮した面持ちでそう口にした。そして玲は、
「あっ、後ね、その端末にかすみの
生体情報を登録しておくと、
そこにかすみ自身が投影されるんだよ」
と言うことも付け加えておいた。
「えっ?それホンマなん?
うちが3Dになるん?」
とかすみは驚きの表情で玲を見つめながらそう呟いた。一応玲は、生体情報の登録の仕方も教えてもらっているので、後日改めてそれを行うことをかすみに伝えた。そして、この情報端末は地球には存在しないテクノロジーが使われているので、かすみには公にしないことをお願いした。勿論、かすみはそんなことをするつもりは1ミリも持ってないのだが。そしてバッテリーは、地球であれば10年近くは持つということも伝えた。「スマホでも数日もたへんのに、何なんこのテクノロジー?」とかすみは不思議がるが、バッテリー切れがほぼないのは嬉しい限りであった。
それと、ロムリア王家から贈られた衣装もあるので、それをかすみに見せることにした。かすみの傍に置いてある箱をかすみに開けさせたところ、かすみの目の色が変わった。やはり実物を目にするのはファッションデザインにおいて大事なようで、かすみは一つ一つを手に取りながら、「これが、ロムリアの衣装何か?」とか「へぇー、ロムリアってつなぎ服が主流なんや」とか「うーん、この素材って何なんやろ?」などと口にしながら、吟味していた。そのうち、かすみは何やら首を傾げながら、疑心に満ちた表情で玲を見つめながら
「ところでな、玲、
何でロムアリの王家から
こんなん貰ったん?」
と尋ねてきた。うーん、一瞬話すべきか迷った玲だが、かすみはロムリアにも、サモナルドにも無関係な人種であるから、話したところで害はないと判断し、チーターの話をした。暫く黙って聞いていたかすみだが、玲が話し終わると早速
「うーん、うちやったら、
直ぐにゴマすっておくねんけどなー」
と言い出した。おいおい、何でそうなるんだ、とかすみにツッコミの名の抗議をした玲であった。まあ、かすみの冗談であることは分かっていたが、一応ツッコミを入れないと不機嫌になると考えたのであった。そしてやはり、このツッコミはかすみを機嫌良くした。尤もツッコミとしては不十分で、出来れば「なんでやねん!」と言いながらの叩きがあったらベストであったようだ。
そう言えばこんな時間に起きていても大丈夫なのかをかすみに確認すると、
「あっ! あかん、あかんわ!。
明日、じゃない、今日、
大阪に行かなあかんねん。
そやから、今から寝るわ!!」
と言って、かすみは「玲、お休み!」と言いながら自分の部屋に慌ただしく戻って行った。今の時間は午前3時少し前である。所謂三つ時であった。全く、かすみの奴、相変わらずやりたい放題だな、と玲は毒づくが、何だか久しぶりにこんな気持ちになったことに、正直嬉しかった。そして玲も着替えてベッドに横になるのだが、「あっ、この感触、この枕、やっぱ何時ものこのベッドだよなー」と感想を漏らすように、寝慣れたベッドと枕は玲に安心感をもたらしたのだった。
朝の8時を迎えた頃、玲はベッドから起き出した。そしてそのまま洗面所で顔を洗い、その後リビングに向かった時、ダイニングでかすみと朝食の準備をしていたと鉢合わせした。玲は「あっ、華蓮ちゃん、おはよう」と声を掛けたが、華蓮は一瞬ビックリし、その後直ぐに何やら怯えた表情を見せてかすみの陰に隠れた。あれっ、僕なんかやらかしたんか?と疑問に思いながら、傍に居るかすみに「ちょっと、かすみ、こっちに来て」とかすみを呼び出した。かすみは「はぁあ?今、朝食の準備中やねんで!」と切れ気味に玲に言うが、玲が「なんで華蓮ちゃん、僕にビビってんの?」とかすみに尋ねた。すると、かすみは何やらモゾモゾし出したが「そ、そんなん、うち、知らんわ!」と言い出した。おや?何かあいつ隠しているぞ!と玲は直感でそう感じたが、かすみに問い質しても絶対口を割りそうにないとみて、玲は直接華蓮に話を聞くことにした。そして、怯えながらも彼女が口にしたことを聞いた玲は、
「おーい、かすみ、
ちょっとこっちに来て!!」
とかすみを強引に呼び出した。かすみも華蓮が白状するとは考えてなかったのか、顔面蒼白ではないが、かなり動揺して目が泳いでいた。そして玲は、かすみの襟首を掴んで自分の部屋に連れて行き、かすみを床の上に正座させてその場でマキザッパを召喚してかすみをシバキにかかった。
「おい、かすみ、何で僕が変態なんだ?」
と言いながらかすみの頭に一発お見舞いした。そして、
「この落とし前、どうするんだ?」
と言いながら、もう一発お見舞いした。かすみはぐうの音も出ず、「ゴメン、玲、つい出来心で...」とか言うのだが、玲も日頃のが溜まっていたのか、「かすみ、2度とこういう事をするなよ!」と言いながら最後の一発をお見舞いした。これで玲もスッキリしたようで、かすみも「以後気を付けます」としおらしく謝罪したのだった。だが内心、「くそっ、絶対今度倍返しや」と心に誓っていたことを玲は知らないのだが。
それから何とか華蓮の誤解を解いて、玲と華蓮は楽しく、かすみはかなり不機嫌になりながら朝食を共にした。それから10時を過ぎた頃、かすみが「ほな、そろそろうちは大阪に行くんで、華蓮ちゃん出よか?」と言って華蓮を伴って出掛けて行った。正確には華蓮は、そのまま自宅に戻ることになったのだが。そして一人残された玲は、特に何かすることもなく、とりあえず自分のスマホを立ち上げてみたのだが、「うわー、何だ、この量は?」と玲が突然独り言を呟きながら驚いていた。彼のスマホは暫く使わないというか使えないため電源を切っていたのだが、電源を入れてログインした途端、溜まっていたメールや電話の着信履歴が一斉に表示され、それで若干パニクッたのだった。尤も殆どはジャンクメールなのだが、10件ほどM M宛ての依頼メールが来ていたのには正直驚いていた。なぜ驚いたかと言うと、かすみが作ったホームページが余りにもシンプル過ぎて多分見る人はいないか、いても絶対コンタクトしないだろうと思っていたからである。ところが、どうやらあのホームページで依頼する人が現れたようで、玲は早速そのメールに返信をした。まあ、手遅れだったら仕方ない、お気の毒様としか言えないのだが、そうでなければ出来るだけ対応しようと考えていた。それ以外では、警視庁の千歳警部補からも連絡があったようだが、こちらはかすみの方にも連絡を入れていたようで、既にかすみと神室霊華で対応済みなので、特に返信することは無かった。そして明らかにジャンクメールと分かるメール以外をめた所、特に重要なメールは無かった。
次に机の上に置きっ放しのノートパソコンを立ち上げて同様にメールの確認を行うと、こちらはスマホの比ではなく、更に大量のメールが溜まっていた。その数百件近くはあった。「うわー、これ確認するの面倒だー」と独り言を呟くが、一旦確認の方は保留にして、今必要な作業を優先させることにした。まずサモパラのホームページを立ち上げて、そこの掲示板を確認した。次にA4のコピー用紙に手書きで「先程、無事ロムリアから帰還しました」とサモナルド語で書いてスキャナーで読み込ませ、そのデータを掲示板に張り付けて送信した。それから一旦ブラウザを閉じてから、今回撮影した動画データを保存したUSBの確認と動画の編集を行うことにした。なお、地球残留組へのメッセージは単に動画データに問題ないかどうかだけの確認に留め、後はそのデータを保存したUSBと預かっている土産を1つにまとめて、本人に手渡しすることにしていた。一応この作業は1時間程で終えることが出来た。その後は玲が撮影した膨大なロムリアの映像の編集である。これには恐らく最低でも1週間はかかるかと覚悟を決めていた。とりあえずデータを全てノートパソコンに吸い上げるが、かなりの容量を占めるに至った。とは言っても、玲のノートパソコンの記憶容量は殆ど空き状態なので、容量不足に陥ることは無かった。
それから動画編集ソフトを立ち上げて動画の編集作業を行うのだが、そもそも玲のパソコンにはそう言ったソフトは初めから入っていない。そのため動画編集ソフトをインストールする必要があるのだが、ではどうやってそれをインストールできたのか?そして彼は、それを使いこなせるのか?恐らく疑問に思われる方がおられるだろうが、実は1カ月程前に、パソコンソフトのことならこの人、神様仏様の様こと室様に相談していたのだ。尤も彼女も動画を編集するということは未経験だが、知り合いの霊能力者に尋ねてもらったところ、このソフトが使いやすいよ、と言うことを教えてくれたので、それを購入してインストールしたのだった。そして早速動画編集ソフトを立ち上げて、先ずは短い動画データを読み込ませた。そして不要な所を削除して保存を行う。こうして編集された動画データを再度読み込ませ、順番を並べ替えながら一つにまとめると、確かに一つの動画としてめられることが分かった。なお、プロであれば効果音とか字幕を挿入したりするのだろうが、玲にそのようなテクニックを要求するのは酷である。それに、見ている方は効果音などは全く期待せずむしろ邪魔であり、出来ればロムリアの街の音や自然の音などを楽しみたいと感じるだろう。従って、編集以外何もしないようにした。そうやって見て行くうちに、
残留組の人達の家族の元を
訪れた時の映像も
入れた方がいいよな
と思うに至り、早速その部分を抽出した動画を作成した。そしてそのデータを各自宛てのメッセージが保存されているUSBに一緒に保存した。こうすれば、単にメッセージの再生だけでなく、自分が訪れた時の家族の反応などを見て楽しめると思われた。
なかなか慣れない操作が多かったため、初日は残留組家族の訪問時の動画を編集するだけで終わってしまった。そのうち夜になると、かすみが転移で戻って来た。玲は丁度台所で夕飯の準備をするところで、
「あっ、お帰り、かすみ。
これから夕飯だけど、どうする?」
と尋ねると、
「うん、食べるねんけど、
今日はホンマ、疲れたわー」
とそのままダイニングの椅子に座った途端ぼやき出した。そして、かすみの止まらないボヤキが始まったのだ。