召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
物部かすみ、不思議な女子会に参加する (後編)
さて次は、同じような怪談と言うことで、谷田美鈴と村上希美が語りだした。そして次に俵京香だが、彼女の場合、店の常連から色々と仕入れているようで、それ故に怪談話をしようなどと持ち掛けたりしたのだった。そして、その中でも自分が怖いと感じた話をこの場で披露した。流石に話馴れているのか、山本明日香に至っては耳を手で塞いで縮こまっていた。一方の物部かすみはと言うと、まあそう言うこともあるやろな、と冷静に判断している。そして京香の怪談で漸く本格的な百物語の雰囲気が出て来た所で、京香が「次はかすみやけど、かすみならぎょーさんあるんとちゃう?」となぜかハードルを高くし出したりした。ところがかすみとしては、そもそも霊体や霊界をある程度知っているため、怪談と言われても特にそれらしい話は持ち合わせていない。そのため、自分が扱って来た心霊体験を披露することにした。
「先ずな、うちには怪談とかは全くないねん。
そやけど、まあ、除霊とか色々やってるから、
まあそこそこ心霊体験はあるよって、
それについて話すわ」
と前置きして、今年の1月に体験した開かずの間の話を披露した。かすみの話す内容は舞台が明治初期の話であり、しかもそこに恐怖と言うものはあまり感じられないが、余りにもリアルに詳細まで語るかすみの話に他の4人は引き込まれていき、最後はその世界に魅了されたりした。
「かすみ~、それってホンマなんよね~?」
と美鈴が確認するが、かすみは「まあ、信じる信じないはどちらでもええねんけど、これはうちが体験した話やからね」うちはそれが実際にあったと信じてると言いつつ、あの時スマホで撮った写真を皆に見せた。
「ここにね、その人が写っててんけど、
どうやら成仏したみたいで、
もう既に消えてもうてるねんな~」
他の建物とかの写真はまだ残ってるのが不思議やねんけど、と解説した。
その後も各自が再び怪談と怪談らしきものを語るのだが、そんな時もかすみは、時折視界の隅に見える「あれ」に目を向けていた。そしてかすみが次の話を語ろうとした時、遂に「あれ」が動き出した。と同時に部屋の中にラップ音が轟いたため、かすみを除く4人は「聞こえた??」とお互いに目配せしてから音のした方に目を向けた。勿論彼女達には何も見えないが、かすみには音の原因が分かっていた。それからダイニングにあった椅子が突然倒れた時には、かすみを除く4人は、恐怖でパニックに陥っていた。そして遂に「あれ」がかすみ達の居る所に来ようとするが、残念ながらそれ以上進めない。何やら不思議そうな表情をするが、それはかすみが張った降霊召喚門のためである。ただこのままだと何も進展がないので、かすみは一旦自分の周りに展開している降霊召喚門を解除し、直ぐに「あれ」の周りに降霊召喚門を設置した。すると、
「うわわわわわわわ、
なななな、なんなん、
そそそそそ、そこ、そこ、そこ」
とビビりの明日香が叫び出したかと思ったら頭を抱えて目を瞑り、再びそのまま縮こまってしまった。そして同様に、京香、美鈴、希美の3人も、「きゃー!!」と叫び声を上げて、明日香と同様に縮こまってしまった。彼女達の目の前に、白いワンピースを着た女性が立っていたからだ。ただし、その首は不自然に伸びており、しかも顔色が土気色をしていることから明らかに生者ではないことが一目でわかる。そんな中一人かすみだけは冷静であり、早速尋問を始めた。
「あなた、名前は何て言うの?」
「・・・き、た、の、れ、な」
「そうか、れなさんね。
私はかすみ。
あなたはこの部屋で亡くなったの?」
「・・・そ、う」
そしてかすみが質問を重ねた所、次のようなことが分かった。その女性「北野礼奈」は、かすみ達と同世代のOLであった。そして礼奈は、昨年末にこの部屋にて自殺をしたのだという。丁度部屋の天井付近に部屋を横切るような梁があるのだが、そこにロープを吊るして首を吊ったのだった。
「せやから、首が不自然に伸びてたんやな」
とかすみは呟くが、そもそもこんな所に梁があること自体問題ちゃうん、と誰にともなくかすみは愚痴った。だが、これは建物の構造上取り除くことが出来ないため、そのままになっている。そして礼奈が首を吊った原因だが、恋人にフラれた、いや正確には捨てられた、と言うことらしい。相手の男は同じ職場の先輩だという。そしてその男はどうやら浮気をしていたようで、浮気相手は同じ職場で礼奈の友人でもある女性だったというのだ。
「あちゃー、なんかドロドロしてきそうな、
2時間ドラマでありそうなネタやなー」
とかすみは呑気にそんな感想を口にした。その証拠に、かすみの頭の中では、あの音楽「♬てて、てーてー」が鳴り響いていた。そして彼氏に裏切られただけでなく、友人と思っていた女性にも裏切られたことで精神的に参ってしまい、それで最後はここで自殺したというのだ。だが、
「ほな、ここやなくて、
どっか公園とか雑木林とかで
首吊ったらええんとちゃうんか?」
とかすみは礼奈に疑問を呈した。だが礼奈が言うには、この部屋は、自分が中学から高校時代にかけて、同級生の親友と楽しく過ごした場所であり、自分にとってはかけがえのない、いい思い出が詰まった場所であり、それ故に最後はここで迎えたいと勝手にそう思ったらしいのだ。
「うーん、まあ、人それぞれやからな、
何とも言われへんねんけど...」
とかすみは腕組みをして考え込んでしまった。ところで、かすみを除く4人は、まず幽霊が目の前に現れたことでパニックに陥っていたが、どうやら自分達に襲い掛かることは無いとみて安心し始めていた。そんな時、かすみが何時もの口調で何やら幽霊と会話を始めたので、彼女達は再び恐怖心に駆られながらも、それ以上に好奇心が芽生えてしまい、少しずつだが会話の内容に興味を持ち始めていた。そして今は、かすみの言うことに、うんうんと頷きながら2人の会話を耳にしていたのだ。
「ほいで、礼奈さん、
あんたどないして欲しいんか?」
成仏したいならさせてあの世に送るけど、とかすみが尋ねると、礼奈は自分も話に混ぜて欲しいと言い出したのだ。実は礼奈は、この部屋で女子会が行われている時、自分も参加したくてこうして現れるというのだ。それを聞いた5人は一斉に「マジかー!!」と叫んだのは言うまでもない。だがかすみは、4人の思いに関係なく
なんか知らんが幽霊と女子会って
めっちゃおもろない?”
と内心ほくそ笑んでいたことを4人は知らない。そして、
「しゃーないなー、京香、
混ぜてあげてもええか?」
とかすみがニヤニヤしながら京香に尋ねると、京香はいきなりそんな話を振られたことで、内心パニックに陥っていた。そして何も考えることなく、ただうんうんと首を縦に振っていた。
「一応、オーケーがでたんで、
ほなそこに座り!」
と言って直接床に座らせた。
「なななな、なぁ、かかかかか、かすみ、
だだだだだ、大丈夫なんか?」
と明日香が恐る恐るかすみに尋ねた。かすみは「結界を張ってるから、うちらに手出しはでけへんよ。そやから、安心してな」と皆にそう伝えた。それでほっとしたのか、早速京香が
「ほ、ほな、ゆ、幽霊さんを交えての
じょ、女子会と行きますか?」
と宣言し、5人の生者+1体の死者による前代未聞の不思議な女子会がここに幕を開けた。
不思議な女子会の最初は、かすみの心霊トークから始まった。話の内容は、つい先月に体験したばかりの廃施設における怪異である。かすみが複数の霊に憑りつかれ、それらの霊が体験した記憶を見せられたこと、そしてその霊達はある男に殺され、そしてその男も施設内で自殺したのだが、そこに肝試しに来る者達が怨霊と化したその男の毒牙にかからない様に守っていた話を語った。それを聞いた4人(生者)は一様に驚きの表情を浮かべた。
「かすみ、そんなことってあんねんな~」
とは一番ビビりの明日香の感想である。
「ホンマ、そやねん。この話聞いたら、
恐らく幽霊の概念が変わるんちゃう?」
とかすみが口にすると、皆も「うーん、確かになー」「ホンマやわ」などと口々にそう呟く。そしてもう一人の参加者である礼奈(死者)も、無言ながら頷き返した。やはり何か感じることがあったのだろうと推測された。
かすみの後は京香が再び常連から仕入れた怪談を語りだした。今度は流石にかすみを除く3人(生者)は、体を震わせながら聞き入っていた。一方の礼奈(死者)は、自身が幽霊であるにも関わらず、なぜか耳を塞ぐ仕草をしていた。余程怖かったのだろうと思うものの、かすみとしたら「怖い存在の自分が、何怖がってんねん!!」と思わずツッコミを入れそうになっていた。そして次は礼奈(死者)の番である。礼奈も何かを語ろうとするのだが、上手く言葉が出てこない。どうやら過去の記憶が曖昧になっているのか、あるいは記憶を上手く引き出して、それを話すことが出来なくなったのか、どちらにしろ喋れぬまま黙り込んでしまった。かすみが
「多分な、記憶が曖昧か、
思い出して喋ることが
難しくなったんやわ」
気にすることないで、と礼奈を元気づけていた。いや、そもそも死者を元気づけるってどういう意味なのだろうか?
その後、京香のネタが尽きたということでなぜか恋バナが始まった。と言っても、かすみを除く4人(生者)は、職場での恋愛模様だとか、どういう所で出会いがあるのかなどが中心である。一方、礼奈(死者)はと言うと、どうやらこの話は語れるようで、とだが自分の高校時代の恋愛体験を話し出した。5人(生者)は、礼奈の話に相槌を打ったり、所々で質問したりし、そのうち何やら笑顔になったりして大いに盛り上がった。礼奈(死者)も漸く自分の口で語ることが出来たことで嬉しくなり、その表情には最初に見られた険しさが和らいできたように感じられた。
そして不思議な女子会も既に3時間近く経過し、今は午後7時少し前である。最初はとした表情のかすみを除く4人(生者)の女性は、礼奈(死者)の恋バナに引き込まれていき、そのうち美鈴に至っては、幽霊にアルコールを勧めるに至ったりした。流石に礼奈は飲み食いできないため遠慮するが、そんな時の彼女の表情には、最早険しさや怨念の情が一切なくなったのをかすみは感じ取っていた。そして京香が「そろそろ、この部屋の制限時間になるから帰る準備しよか」と宣言したことで、この不思議な女子会はお開きとなった。なお、この時の模様は希美がスマホで動画を撮影していたようで、「後で皆に転送しとくな!」と言うことで、それを楽しみにした。そしてかすみだが、
「礼奈さん、これからどないする?
もし成仏したいならそうするけどな」
と言うと、礼奈は「・・・お、ね、が、い、し、ま、す」と答えたので、かすみは「ほな、これでホンマのお別れやで」と言って降霊召喚門からお見送りした。5人(生者)は、礼奈(死者)に向かって笑顔で手を振って別れの挨拶をし、そして礼奈(死者)は皆に頭を下げながらその場から消えて行った。その様子を眺めていた明日香が、
「かすみ、これで礼奈さんは成仏したんか?」
と尋ねるので、かすみは「うん、間違いなく成仏したで」と笑顔になりながら答えた。そして、希美がその様子も動画に撮りながら、
「幽霊や言うても、
怖いもんばっかちゃうねんな。
見てくれはあかんけど、
心は人の時のままなんやね」
と感慨深げにそう呟いた。まさに彼女のこの言葉に尽きると、かすみは皆にそう伝えた。
そしてかすみがこの部屋の怪異を浄化させたことで、この部屋の心霊スポット化はこれで解消されたのだった。そして序に、
「そや、除霊の代金貰わな!!」
と言いながら4人に対し代金を請求し出したのだ。これに対し京香が、
「うわー、マジでかすみ、請求すんのか?」
と騒ぎ出すが、約束は約束である。もしかすみが何もしなければ、彼女達の誰かに憑りついていた危険性はあるのだ、と言うことをかすみは説明すると、4人は顔色を変えて「わ、分かりました」と言いつつかすみにお金を渡した。だがかすみは、そのうち1万円ずつを4人に返した。と言うのは
「まあ、除霊はしたけどな、
それ以上に楽しませてもろうたんで、
そのお礼やね」
と言うことらしい。その後5人は部屋の片づけをしてから外に出た。そして、
「何や、よう分からん一日やったなー」
と京香が4人に対しそう呟くが、尤も、
「でもな、うちはめっちゃ楽しかってんけどな」
と希美は笑顔でそう答えた。そして「みんな、有難うな!!」と頭を下げながらお礼を述べた。
「そう言えば、希美を励ます会やったもんな!」
と京香が本来の趣旨を思い出してそう口にするが、「満足したんやったらそれでええんちゃう」と明日香が皆にそう伝えた。
「そうやね~、希美が楽しんだんやったら、
それが一番やしね~」
と美鈴も明日香の意見に同意した。かすみは、
「まあ、うちとしては、
臨時収入があったから、
なーんも問題あらへん!!」
と一人だけご満悦な表情であった。だが内心は”ホンマ、メッチャ疲れたわー”であったのだが。その後彼女達は、明日香と美鈴は明日から仕事のため、このまま東京に帰ると言う。そしてかすみも、やはり明日からの仕事のため直接帰ることにし、京香と希美だけで夕飯を共にするということになった。そして、この日の女子会はこれにて解散となったのだ。