召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
最神玲、物部かすみと召喚術談議をする
最神玲は大阪から転移で帰宅した物部かすみと自宅のダイニングで夕飯を共にしながら、彼女のボヤキを聞いていた。
「全く、あいつらはええやっちゃねんけど、
よう喋りよるからな~。
聞いてるとホンマ疲れるわ~」
うちなんか、可愛いもんやで! とかすみの止まらないボヤキは続く。しかし、かすみよりも更に上を行くお喋りと言うのが玲には理解と言うか想像できなかった。
”このかすみの更に上を行くって...
もはや人なのか?”
そして漸くかすみのボヤキが収まったところで食後のコーヒーを飲みながら、玲はかすみに対し、ロムリアで明らかになった事実を幾つか伝えることにした。
「ロムリアに行って分かったことが
幾つかあるんだけど、
先ずねヴェルハムの正体が
分かったんだ」
「ん?ヴェルハム?誰や?」とかすみは呟きながら、眉間に皺を寄せて首を傾げた。まあ、忘れていてもあの事件は覚えているだろうということで、玲は昨年末の騒動を伝えた。すると、
「あっ、あー! あれか!!
サモネル教団の奴やな!!
えっ?ほな、あいつらが
信奉しているヴェルハムって...」
「うん、僕が居たサモナルドで
召喚術を最初に始めた人らしいんだ」
「えー! マジ、召喚術師の初代?元祖?
いや、家元やんかー!!」
とかすみは叫び出した。ただ直ぐに冷静になって、「でも、何でそんな家元が今、この地球におるねんな?」と当然の疑問が出てきた。そこで玲は、推測であることを断ったうえで、自分と同じ転生者ではないかと伝えた。
「うーん、その可能性はありそやな。
何てったって、目の前に1人
おんねんからな~」
とかすみはニヤニヤしながら玲を見ている。
それから玲は、ヘキサグラム型召喚門についてさらに分かったこともかすみに説明した。
「まずね、バラバラになった
ヘキサグラム型召喚門があっただろ。
あれをかすみは、
『ブーメランみたいにでけへんか~』
って言ってたけど、
ある術式を組み込むと
ブーメランになるんだよ」
これね、全部サモナルドの古代の召喚言語だったんだ、と言うことを説明しながら、実際にブーメランの術式を組み込んでバラバラにした。かすみは最初キョトンした表情をしていたが、バラバラにされたヘキサグラム型召喚門の一つを手渡されたとき、「あっ、あれかー」と思い出したようだ。そして玲に連れられて美土路山の北東方向の元雑木林のあった空き地に転移してやって来た。その場所も今年の冬の山火事の影響で全て燃えて無くなり、今は燃え残った木の切株と伸び放題となっている下草だけが残っている。
ところで彼らがわざわざここにやって来たのには理由がある。実は玲とかすみが住む住宅の東側、以前は雑木林があったところだが、そこにはもう一棟住宅が建設中なのだ。誰の住宅か?と言うと、新たに神職を雇い入れるためだという。流石に玲とかすみだけでは日常の業務全てに対応することが出来ず、現在は氏子衆の助けを借りながら何とか運営している。だが、やはりもう少し専従となる人手を確保したいということで、そのためには先ず住むための場所を確保して、安心して来てもらえるように整えている最中なのであった。そのため、玲とかすみは自宅の裏手で召喚術の確認をすることは出来ず、止む無く美土路山の麓に転移して来たのだった。
今の時刻は午後8時であり、辺りに人の姿は全くない。そこで玲が試しに手に持っているヘキサグラム型召喚門を東の空に向けて投げた。暫くするとその召喚門は玲の所に戻って来て、手の上に着地した。この様子をじっと見ていたかすみは、驚きで目を丸くしていた。そして、
「な、なぁー、玲。
確かにブーメランやけど...」
「うん、かすみの言いたいことは分かるよ。
ブーメランみたいに勢いよく
戻って来ることなく、着地したもんね」
かすみは、玲の解説にうんうんと頷いていた。そして試しに自分が持っているヘキサグラム型召喚門も投げてみた。すると確かに戻って来たが、なぜか玲の手の上に着地した。
「はぁ?何でや?何でうちの所に
戻ってこーへんねんなー!」
とぼやき出すが、もし玲が「これは人を見ているからだよ」などと冗談でも口にしようものなら、かすみから速攻でマキザッパによるシバキが始まっただろう。勿論そんなことは一切口にせず、玲が術者の所に戻るようだということを説明し、かすみに召喚の書を出してもらい、そこにこの術式を書いた。そしてかすみもそれを自分で召喚してからバラバラにし、早速投げてみた。すると、
「うわー、ほんまや!
確かにうちの所に戻って来た!!」
でもな、これホンマにブーメランなんやろか?とかすみは疑問を口にした。玲も正直今は分からないと答えた。
それからついでと言うことで、かすみが北海道の炭鉱住宅で発見したについて、玲は説明を始めた。そして彼らの目の前にそれを実際に召喚したのだった。
「こ、こ、こ、これって......♡」
ドラちゃんやんなー!!とかすみは興奮しながら、目の前のそれを見つめていた。勿論、ドラちゃんそのものではなく、あくまでもシルエットがドラちゃんに似ているのだが。かすみは、にそっとだがそれに触れてみた。確かに何かしらの感触を確認するが、ロボットのドラちゃんのような硬さはなく、ぷにぷにしている、と表現した方がいいようである。
「ただね、エンペラールさんや
タチアナさんが言うには、
このシルエットはバンディーとかいう
ロムリア市民に昔から親しまれている
キャラクターらしく、
元は伝説上の生き物で
家や家族を守ってくれる用心棒
のような存在らしいんだって」
と玲の説明を聞いていたかすみは、「それで、あっこで用心棒してたんかなー」との感想を口にした。いや、それでも、目の前のこれは、どうみても「やっぱ、ドラちゃんやんなー」と呟くのだった。
「なあ、玲、このドラちゃん、
ただ立ってるだけやねんけど、
動かせたりでけへんの?」
とかすみは当然の疑問を玲に伝えた。
「ゴメン、かすみ、
それが全く分からないんだ」
多分古代語で命令すれば反応するかも知れないけど、大召喚術師のエンペラールでさえ古代語が分からないことをかすみに説明した。そして現在ロムリアで古代語と古代の召喚言語に関して調査してもらっているということも、併せて伝えた。
「それと、序にだけど、
幾つか新しい召喚術が
分かったんだけどね...」
これもどうやら古代語の命令が出来ないと意味がないんだ、と言いながら、玲は 死者の宴”の術式を披露した。
「ちょっ、玲、なんなん、
血生臭い匂いが漂ってんねんけど...」
とかすみがぼやき出した時、地面が割れて、そこから死体が湧き出してきた。それを見たかすみは、
「わわわわわわ、なななななな、なんなん、
ししししししし、死体がーーーーーー」
と叫び出して、頭を抱えてってしまった。
「かすみ、この死体は
何もしないから大丈夫だよ。
ただね......」
こちらからの命令が通じないため、何をさせればいいのかが分からない、と言うことを玲はかすみに説明した。かすみも少し落ち着いたのか、に立ち上がって、その死体軍団を眺め出した。そして確かに、こちらに襲い掛かる意思は見られないことから、漸く安心したようだ。だが、
「ほな、これ、何の役に立つん?」
となるのだが、これも古代語で恐らく指示を出すだろうということを玲は伝えた。そして一旦召喚を解除した。
玲は更に”魂の門を叩く者”と名付けられた召喚術をその場で披露することにした。ただし、かすみには「絶対その場から動かないでね」と言う指示を伝えた。そして「召喚!」と叫んだ。すると、
「わわわわわわ、れ、れーーーい。
どこにおんねんなーーー」
とかすみは突然叫び出した。玲は「かすみの隣にいるよ」と少し大声で伝えて、かすみもそれを聞いて少しは安心した。そして玲は一旦召喚を解除した。
「あー、ビックリした。
まさか吹雪の真ん中に
置き去りにされるとはなー」
ホンマにビックリしたで、とぼやき出した。だが直ぐに、
「でも、この暑い夜でも、何やろ、
ヒンヤリして気持ちよかってんけどなー」
と満更でもない表情でかすみは感想を口にした。そんなかすみを他所に、玲は、地面に残る霜や溶けずに残っている氷の粒をじっと見つめていた。「玲、どないしたん?」かすみが声を掛けて、漸く我に返ったようだが、直ぐに、
「なあ、かすみ、僕もこの術式で
今初めて気が付いたことがあるんだけど...」
実は玲は、てっきりこれが創成召喚だと思っていたのだが、もしそうであれば、地面に残る氷の粒は召喚解除と同時に消えて無くならないとおかしいのだ。ところが、それらはこの一帯にまだ残っている。と言うことは...
「何だろう、何かと契約召喚したのか、
それともどこかに転移門が置かれて、
そこから吹き込んできたのか......」
残念ながらそこに結論を見出すことが出来ない。だが少なくとも創成召喚ではことだけは確かなようだ。そんな物思いにる玲に対しかすみが、
「玲、この術式は何の役に立つん?」
と当然の疑問を投げかけてきた。そこで玲が、転移がまだなかった古代サモナルドで、追っ手を撒くためとかそんなことに使ったのか、あるいは何かを冷やすためか、そんな推測をまず伝えた。そして、
「ただね、僕らとしては、
例えば緊急事態が発生して
急遽転移したいときなんか、
これを煙幕みたいに出来ないかな、
と考えたりしたんだけどね」
どうだろうね、かすみ?と玲はかすみの意見を聞くことにした。かすみは腕組みをして考え出すが、
「うーん、何や、よう分からんわ。
ただな、あの吹雪の中に
うちらの家があったら、
こんな暑い夜でも涼しくなって
寝やすいんちゃう!」
と玲が全く予想もしないことを言い出した。
「そうなると、
『あそこの家はどうなってるんだ!!』
と噂が広がって騒がれちゃうぞ!」
と玲は至極真っ当な意見を言うのだが、実はかすみの案、意外とそれもありかな、と思ったりしたのだった。例えば、今の玲であれば、降霊転移門のシールドを自分の周りに展開し、更に”魂の門を叩く者”を記述したヘキサグラム型召喚門に自動追尾機能が装備できれば、その中に入って敵の攻撃を凌ぐとかなんとか...でもそれだったら、転移した方が早いかな、と思ったりして、結局自分の中でまとめることは出来なかったが、とりあえず術式はかすみにも教えておくことにした。
さて、一旦家に戻り、リビングで今までのことをまとめて説明している時、かすみがふと気になることがあるということで玲に尋ねた。
「なあ、玲。このヘキサグラム型か、
これって古代の召喚術やんな?」
「うんそうだよ」
「ほいで、玲は、古代語は分からへん、
と言うことやんな?」
「うん、そうだけど、何か気になるの?」
「なあ、玲、召喚術を作動する時の
『召喚』って言葉、あれって何なん?」
「.........?
.........?
......... !!」
「おー、確かにかすみの言う通りだ!!」と玲はかすみの指摘に驚愕した。そう彼らが「」と叫ぶ言葉、玲はてっきりいつも使う召喚言語と同じ語源のものだとずっと思い込んでいた。だがかすみが指摘するように、ヘキサグラム型は古代の召喚言語しか受け付けない。なのに召喚する時は同じ「」で発動した。と言うことは
「そうか、僕らが召喚術を発動する時に使う
と解除する時のは
全て古代語だったんだ...」
知らない内に古代語を使っていたという事実に玲は驚嘆した。もう少し早く、自分がロムリアに居る間にこの事実に気づいていたら、エンペラールやセラスティナの古代語調査の一助になったかもしれないと思うと、悔やまれて仕方ない。まあ、彼女達であれば、既にその事実が分かっていたかもしれないし、あるいは当然知ってたよね、などと逆に指摘されたかもしれない。いやそれよりも、この事実を見出して指摘したかすみと言う存在に玲は驚くとともに、何やら畏敬の念を持つのだった。
その後それぞれ風呂に入って体と心をリラックスさせた後、玲が撮影した未編集のロムリアの映像の一部をリビングのテレビでかすみと一緒に見て時間を過ごした。そしてかすみはと言うと、ロムリアと言う都市の凄さに目を見張っており、「絶対、こんな街って地球にはないよな」とか「この塔の高さ、一体何メートル、ちゃうな何キロあんねや?」と呟いたりしていた。そして恐らく一番驚いたのは、街中に人を殆ど見かけないことであろう。
「な、なあ、玲、街の中を誰も
歩いたりしてへんけど、何でなん?」
これってCGか?と疑い出したが、玲は
「そもそも、ロムリア市民には
転移が普通にあるから、
わざわざ道を歩いて
職場や学校に行くとかしないんだって」
と言う説明をかすみにした。「何か、寂しくないんかなー」とかすみは感想を漏らすが、「慣れてるみたいだから気にしないんだって」とセラスティナから教えられた事実をそのまま伝えた。その後、たまたま2つの太陽が地平線に沈んでいく様子が撮られた映像を見た時、かすみは、
「うわー、これかー、
玲というか中身の宇宙人のカーンが
よく言ってたやつ」
「おいおい、宇宙人は余分だろう」と玲は一応ツッコミを入れつつ、かすみが見惚れている2つの太陽の映像の解説をした。
「何か、幻想的だね、これ。
でもCGです、と言われても
信じてまいそうやねんけどなー」
とそんな感想を口にした。そしてロムリアの映像を見終わった頃、丁度日付が変わる少し前であったが、明日から何時もの日常に戻るため、2人はそれぞれの部屋に向かい床に就いたのだった。