召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
最神玲も拉致される? (第1幕)
今年も美土路神社の最大のイベントである[美土路戦勝祭]が9月下旬の週末に催される。一昨年から最神玲と物部かすみは毎年参加しており、今年も玲は神輿の担ぎ手の1人となる。例年、この祭りは差間見町を挙げてのイベントのため、町中の人達が美土路神社に集まって祭りを盛り上げるのだが、今年はかなり様子が違う。
ご存じのように、美土路神社は今年の初めに起きた山火事から奇跡的に無傷のまま難を逃れたことから、この神社が火災除けにご利益があるとの噂が広まり、ほぼ毎日のように全国から参拝客が訪れようになった。そのため、今年の美土路戦勝祭が行われる9月末の週末は、差間見町にある宿泊施設が既に満室となっているだけでなく、県庁所在地の米野市に至ってもホテルがほぼ満室になるくらいに注目を集めていた。そのためか、祭りの参加者も例年以上に気合が入るだけでなく、全国から差間見町出身者がこの時とばかりに帰省して祭りへの参加を申し出てきた。そのため、今年は神輿の担ぎ手を4つのグループに分けて対応することになった。そのうちの2つのグループは石段を下りるだけと上るだけのグループである。残りは町内を練る歩くグループだが、人数が増えた分、今年は練り歩くコースを少し伸ばすことになった。
そして玲だが、過去二年間は最初の石段を下りるグループの所属だった。ところが今年は石段を登るグループへの配置替えとなった。これはある意味名誉なことであるのだが、それだけ玲が地元の人達、とりわけ氏子衆に認められたということを意味していた。玲の日頃の真面目な仕事ぶりには氏子衆は皆感心しており、そのため、玲とかすみが休めるように大型連休や盆休みには氏子衆が代わりを務めたりしていた。そんな氏子衆の思いに感謝しながら玲は、今年はその大役を引き受けた。
さて、祭りの当日は玲もかすみも神社の業務は休みである。そしてかすみはと言うと、東京から愛弟子の神室霊華を朝から連れてきており、かすみ、神室霊華、そしてラハニ・エランの3人は、それぞれ浴衣を着て今日一日の祭りを楽しむのだった。特にラハニは日本の浴衣を着るのを凄く楽しみにしていたようで、神室霊華からプレゼントされた浴衣に袖を通した途端、子供の様にぎしていた。そして3人は揃ってスマホでお互いの姿を写真に撮って楽しんだり、屋台を見て周って祭りの雰囲気を存分に味わった。
「カスミサン、レイカサン、
ニホンノマツリ、
ナニカフシギナフンイキデス」
とはラハニの感想である。確かに西洋の祭りはパレードで街中を練り歩くとか、牛に追い回されるとか、結構派手で賑やかな印象を持つ。それに対し日本の祭りは、美土路神社の様に限られた人たちが神輿を担いで練り歩くだけとか、威勢はあるが派手さが抑えられたりする。尤もこのスタイルは神への感謝だとかを祈願するなど、どちらかと言うと古来からの風習に則った神事の意味合いが強い。そんなことをかすみはラハニに説明していた。
「まあ、うちらはあんまり深く考えんと、
こういう時はこうやって屋台を冷やかしながら、
食べ歩くっちゅうのが普通やな」
とかすみは手に持った屋台のたこ焼きを頬張りながらそんな説明をしていた。一方神室霊華は、やはりこういう祭りを見て参加するのは久しぶりと言うことで、こちらも控えめながら手に綿菓子を持って少しだけいでいた。そして、
「師匠、玲さんも参加されるんですよね」
と神室霊華は楽しそうにかすみにそう尋ねた。かすみは、
「そやで、今回は最後の見せ場に
出てくるっちゅう話しや」
と伝えたが、今回は前回までとは予定が違ってくるため、何時頃になるかは分からない。そして玲はと言うと、現在社務所にて他のメンバーと共に待機中であった。
そして女性陣の3人が食べ歩きを楽しんでいた時、神社の石段近くで動きがあった。玲を含む神輿の担ぎ手集団が石段を下りて来た。
「あっ、玲がいてるわ!」
とかすみが指差したところに、頭には白い鉢巻、上半身は白いを巻き、下は白い半ダコと呼ばれる膝上までの、そして足元は白の地下足袋を身に纏った玲を見つけた。早速3人は彼の姿を写真に収めたり動画を撮ったりした。そして最後の登りを担当する担ぎ手集団が石段下にて待機した所で、いよいよ美土路戦勝祭のクライマックスが訪れるのである。
神輿を載せた台車が美土路神社の石段下に戻って来た。そして担ぎ手の交代が行われ、いよいよ美土路戦勝祭最大の見せ場がやって来た。玲は身長の関係で石段の上段から神輿の担ぎ棒を持ち上げる役となっていた。こちらは腕力もそうだが背筋力が重要である。だが玲は特に苦しそうな表情をせず神輿の担ぎ棒の片方を支え続けている。一体彼は何時からそんな力を手にしたのか?この日の為に日頃から筋トレしているように見えるが、実はそうではない。答えは簡単で、惑星サモナルドの重力のお陰ということである。ロムリアから帰還して1カ月以上経つが、玲の筋肉は多少は衰えたものの、それでも地球人の同世代の若者からすると、まだかなり多くの筋量を有している。そんな玲を含めた男衆は、慎重にゆっくりと石段を登って行く。そして最後の石段を登り切ったところで、神輿を平行に維持しつつ玲を含む上段側の男衆が神輿の腕の下に潜り込んで肩に担ぎあげた。後に玲は、「あれが一番きつかった!!」と言うように、足腰と膝への負担が一段と大きくなる作業であった。だがこれも難なくクリアし、遂に神輿は神社の元の場所に戻って来た。そして神輿に安置されている首に代わる素焼きの壺を氏子総代の神薙宗座衛門が慎重に取り出し、それをしく掲げながら拝殿に奉納し、田所宮司の祝詞を受けてから無事壊された。これで美土路戦勝祭のメイン行事は幕を閉じた。
大勢の見物客で賑わう境内では、最後に担ぎ手全員が集まって最後の気勢を発し、今回の無事の終了を皆で祝った。その後玲は、かすみに呼び止められて神室霊華とラハニを含む4人による記念撮影を行った。すると神室霊華が気を利かして、
「師匠、玲さんとお2人でどうですか?」
と薦めるが、かすみはなぜか顔を赤くして俯いてしまう。どうやら大勢の居る前で2人だけの写真撮影に少し緊張しているようなのだ。全くどこまで純情なんでしょうね、とは神室霊華の感想であるが、結局玲とかすみは2人並んで写真を撮ってもらった。「ほな、皆もどう?」とかすみが口にするので、結局神室霊華もラハニも、それぞれ玲と並んで写真を撮った。すると玲を囲む美女軍団を目にした担ぎ手達が、自分も撮ってとやって来て、結局その場は即席の記念撮影会場となったり、最後は美女軍団を前にして全員の記念撮影まで行われてしまった。ちなみに神室霊華は、髪をアップにし、しかも淡い藤色地にやなどの秋草模様の柄の浴衣に淡い朱色の帯を締めており、雑誌などで目にする黒を基調としたシックな装いとは全く異なる雰囲気を醸し出している。そのためか、誰も神室霊華本人がそこにいるとは気づかないようだ。もっともそんな有名人が居るなどと誰も想像できないだろうが。