召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
誕生日会と送別会 (前編)
10月に入っても、美土路神社は相変わらず多くの参拝客で賑わっている。勿論秋の気配を感じてなのか、夏の時期と比べると再び参拝客は増加傾向にある。そして今日も、最神玲と物部かすみは社務所にて何時もの仕事をこなしている。加えて、アメリカからやって来たラハニ・エランもその輪に加わって慣れた手つきでお札やお守りを販売している。ラハニが玲とかすみの所に来てから一カ月以上が経つ。この間、毎日神社での仕事を行いつつかすみから召喚術を教わって、今では最初の頃に比べてそこそこ召喚エネルギーが増えて来た。だが彼女が期待されている転移術には、まだ不十分である。この点はラハニも自覚しており、最低1年間は今の修行を続けていくことにしていた。そんなラハニも、そろそろ帰国の準備をする必要が出てきたようで、
「レイサン、カスミサン、
ワタシ、ソロソロ、
モドルジュンビシマス」
とある日の夕食でそのような事を口にした。玲もかすみも、特に何時までに帰国してくれとか、何時まで居ないといけないとかの時間的な制約は一切設けていない。それこそ本人が希望するのであれば何時までも居てもらうことに全く問題はない。だが、どうやらラハニには事情があるようで、少しはにかみながら
「ワタシニハ、フィアンセガイマス」
と突然の告白に玲もかすみもビックリ仰天した。「まさか、ラハニさん、婚約してたんか!!」とはかすみの驚きの声である。そしてどうやら、そのフィアンセからの強い要望があるようなのだ。
「ところで、その彼氏って、軍人なん?」
とかすみはラハニに尋ねた。
「ハイ、カレモグンジンデス」
と言うのだ。どうやら近いうちに人事異動があるようで、それを機に結婚して所帯を持ちたいらしいのだ。
「そっか、ほな、ラハニさんの
送別会をせなあかんな!!」
とかすみは早速その準備を色々と考え出す。その時、玲が
「あっ、でもかすみ、
神室さんの誕生日も近いよね」
と口にした時、「そやった、霊華さんの誕生日もあるねんな!!」と言うことで、
「ほな、霊華さんの誕生日会と
ラハニさんの送別会を一緒にしよか?」
と玲に尋ねてきた。玲としては全く問題ないので、後はかすみの思うようにすればいいよ、とだけ伝えた。そこでかすみは、今度の週末が丁度タイミング的にベストとみて、早速ラハニには送別会を週末に開催することを伝えた。それから神室霊華に連絡して、今度の週末に神室霊華の誕生日会とラハニの送別会をしたいけど予定は大丈夫かと問い合わせた。週末の予定はなく全く問題ないということで、かすみはそのスケジュールで行動を開始した。
さて日時は決まったので、あとは場所をどうするかである。何時もの美土路神社の神職用住宅でも問題はない。だが、神室霊華の誕生日を他人の家で祝うのは何か変である。そこで、かすみは玲にその辺のことを相談してみると、
「うーん、確かにかすみの言うように、
誕生日会であれば自分の家で行いたいよな」
あるいは何処かのレストランを貸し切るかだな、との意見を出した。もっとも、レストランなどの貸し切りは人数的には少な過ぎるため、そうすると
「やっぱ、霊華さん家やろなー」
とかすみはそう呟く。だが、玲は、
「でもなー、かすみ、誕生日を
祝ってもらう人の家に行って
僕らが飾りつけの準備するのも
何か変じゃない?
それとラハニさんの送別会のことも
あるしね」
とかすみに率直にそう伝えた。
「そやねんなー、玲の言うことももっともなんよ」
とかすみはそう口にして悩みだす。そんな時にかすみが、ポロッとこんなことを呟いた。
「こういう時に、うちら専用の
事務所とかあるとええねんけどな―」
確かに、M Mのオフィスと言うか拠点はそろそろあっても良いように感じる玲である。それか一層のこと
「タチアナさんの所みたいな
別荘にするかだねー」
と玲はかすみに同調した。それを聞いたかすみは、
「玲! それええやんか!!
うちらどうせお金あっても余り使わへんし、
今直ぐは無理やけと、何か考えへん?」
とかすみは意外と乗り気である。尤も玲は仮に別荘にするとしても、どこが良いとか悪いとか、そんなことが分からないため、ここは実家が不動産関係の会社を経営するかすみにお任せすることになるのだった。
さて、自分達の拠点作りは後回しにして、とりあえず差間見町でレンタルルームを探して今週末に借りれないか検討することにした。無ければ米野市で探してみることになるが、玲もかすみも転移すれば済むので多少遠方であっても気にはしない。そこでまずは差間見町で玲とかすみで手分けして当ってみることにした。ウェブで検索すると差間見町商店街の外れに一軒あるのを見つけたのだが、
「なあ、玲、これって...」
レンタル集会所やな、とかすみはそう呟いた。畳敷きで座卓と座布団が置かれている、まさに集会所である。
「これだったら、美土路神社の
集会所で間に合いそうだよね」
とは玲の印象である。勿論、速攻で却下である。その後米野市内のレンタルルームを検索すると何件かヒットしたので、ホームページに掲載されている部屋の雰囲気をみて、あるレンタルルームを借りることにした。かすみが選んだその部屋は、何やら女性専用の女子会向けとか書かれていた。
「玲も女子に紛れちゃえばええんちゃう!!」
とかすみは呑気な事を言っていたが、玲は直接転移して行くため、別にどこでも構わない。とは言え、室内に防犯カメラがあると困るのだが、そこは外廊下のみに設置されているので転移しても問題はない。そこで、かすみの案で進めることにした。そして場所も押さえたことで、かすみは早速神室霊華に時間と場所を連絡した。尤も、当日はかすみが神室霊華を迎えに行くので、場所で迷うことは全くないのだった。
神室霊華の誕生日会とラハニの送別会が開催される週末がやって来た。レンタルルームは午前11時かから午後5時まで借りているため、玲は午前中にケーキとオードブルとサンドイッチなどの軽食、そしてアルコールとソフトドリンクの調達を行った。そしてそれらは一旦美土路神社の自宅に保管しておき、後で転移して取りに来る予定である。一方かすみはと言うと、午前11時から使用できるため、早速近くの公園に転移し、そこから歩いて目的のレンタルルームに向かった。かすみが予約した部屋は、パステルカラーで彩られており、お洒落なローソファーとローテーブルが備え付けられた女子向けの装いである。かすみは早速召喚術を使って飾りつけを行った。こういう時に召喚術は非常に便利であることをかすみは実感していた。飾りつけの細かな調整については、手伝いを召喚すれば問題ない。そして片付けは召喚解除するだけである。そしてこの飾りつけ作業も、微調整を含めてたった10分で終えてしまった。
その後かすみは一度外に出て誰もいない場所から転移して自宅に戻った。かすみの場合、レンタルルームから直接転移で戻っても問題ないように思われるが、レンタルルームの外廊下には監視カメラが設置されており、その対策として取った行動であった。なお、玲は直接部屋に転移することになっているため、男子禁制の部屋であっても見つかることは無い。そしてかすみは思いの外早く準備が出来たため、神室霊華用とラハニ用のプレゼントを自室に取りに行き、一度転移門経由でレンタルルームにプレゼントを置いた。そして、神室霊華を迎えに彼女の自宅に転移して行った。5分後にかすみは神室霊華を連れて美土路神社の自宅に戻って来た。
「玲、そろそろ行こか!」
とかすみが声を掛けた。玲はラハニの部屋で彼女の召喚術の練習に付き合っている最中である。
「かすみ、まだ早くないかい?」
「しゃあないやん、準備できてもうてんから」
とかすみがぼやき出した。仕方ない、「ラハニさん、行きましょうか?」と玲はラハニに声を掛けた。一旦玲は自分の部屋に戻り着替えをしてから、かすみに「かすみ、先に行って。僕は直接転移して行くから」と伝えた。そこでかすみは神室霊華と着替えを終えたラハニを伴って先に転移して行った。玲の準備はと言うと、まずエンペリアンである。これには既に神室霊華のレベルアップ用の召喚エネルギーが注入済みである。それと神室霊華とラハニ用のプレゼントも用意済みである。その前に、ケーキを冷蔵庫から取り出して、ダイニングテーブルの上に置いてあるオードブルや軽食などを持って一度現地のレンタルルームに転移した。それを何回か繰り返して、最後にプレゼントとエンペリアンを持って転移して行った。