召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
誕生日会と送別会 (後編)
「今日はうちから挨拶しまーす。
ほな、これから霊華さんの生誕祭と
ラハニさんの送別会を開催しまーす」
との物部かすみの挨拶で始まった。神室霊華は「師匠、それじゃあ、どこかの教祖様です」と小声でツッコミをいれたが、かすみはとりあえず満足して頷いた。本当は叩きが欲しかったところであるが、仕方ない、神室霊華に慣れない事をさせるのは酷であることを理解していた。それから最神玲を見て「玲、挨拶はこれ位短くせなあかんねんで!」とドヤ顔を決め込んだ。ちなみに、ラハニ・エランの歓迎会では玲が挨拶を行ったものの、かすみのを買ってしまった。そして今回はと言うと、そもそもM Mの代表はかすみなので、代表が挨拶すべきである、という玲の進言に従ってかすみが行ったのだ。
そして先ず最初に神室霊華の誕生日を祝うことにした。早速玲が米野市内の行列のできる洋菓子店にて予約しておいた最新作のチョコレアチーズケーキをテーブルの上に置いた。そして、ロウソクを3本立ててそこに火を灯した。ちなみにホワイトチョコレートのネームプレートには、[れいかちゃんたんじょうびおめでとう]としてもらった。これを見た神室霊華は、「れいかちゃんって、何か子供の時に戻った感じがして恥ずかしいです」と少し顔を赤らめながらそう呟いた。そして室内の照明を暗くしてから、皆でハッピーバースデーの歌を歌い、神室霊華にロウソクを吹き消してもらった。なおこの時の様子は、玲が召喚した自律型ビデオカメラで録画しており、後日神室霊華とラハニにその時の模様を送った。そして早速この後は、かすみお得意のエアマイクパフォーマンスが始まった。
「放送席、放送席、これから神室霊華氏に
インタビューを行います」
と何やらスポーツ実況の雰囲気で始まった。そして、
「神室霊華さん、先ずはお誕生日
おめでとうございます」
「は、はい、有難うございます」
「ところで、神室霊華さん、
今年で何歳になられたのですか?」
いきなり触れてはいけないドストレートな質問をぶち込まれ困惑する神室霊華であるが、意を決して
「は、はい、永遠の20歳です!!」
と少しはにかみながら答えた。これにはかすみは、ズコッとこけてしまった。まさか神室霊華からこのようなボケが来ると予想していなかったようだ。そして何時もはかすみが「永遠の18歳です」とボケると、そのボケに嵌って笑いが止まらない神室霊華だが、今回はそうなることは無いようだ。やはり自分でボケたからだろうか。何れにしても、この答えはかすみを大いに喜ばせたようで、
「そうですかー、では漸く
今年からお酒が飲める訳ですねー」
「はい、凄―く楽しみです」
「有難うございました。
放送席、こちらからは以上です」
とかすみのインタビューは終わった。神室霊華は何やら顔を赤くしながら、自分の手で火照った顔を仰いでいる。恐らく神室霊華渾身のボケをかましたことが見て取れる。そしてかすみだが、
「うんうん、霊華さん、なかなか良かったで!!」
とこちらも満足していた。そんな2人を眺めていたラハニは、何やら楽しそうにいでいた。どうやら彼女達のやり取りが面白かったのだろう。
さて、かすみのマイクパフォーマンスが終わったところで、早速玲が
「じゃあ、神室さん、お待ちかねの
レベルアップの時間ですよ」
と言いながら、エンペリアンを用意した。神室霊華もそうだが、ラハニも何やら興味津々でエンペリアンを見つめていた。
「霊華さん、これにな、
手を触れるとビビッときて、
レベルアップすんねんで!!」
とかすみの適当な説明があったが、だが実際はその通りである。先ずは玲が神室霊華の両手を握り今の状態を確認した。いきなり両手を握られた神室霊華は、又もや顔を赤くしたが、その気配を悟られないように、急ぎ俯いた。それから、意を決して、だがやはり怖いのか恐る恐るエンペリアンに触れた。すると、「ぴくっ、ぴくっ」と体が震えたかと思ったら、直ぐに落ち着いた。その後直ぐに玲が再び神室霊華の両手を握り、召喚エネルギーを確認すると、
「おっ、おー、ん?」
と何やら不思議な反応を示した。かすみは「れ、玲、何かトラブルあったんか?」と心配そうに呟く。神室霊華は、もしかして失敗したのかと考えた途端、目の前が真っ暗になりそうである。だが、
「いや、そうじゃくなくて、
5割は確実にアップしているんだけど...」
何となく7割くらいかな、でも倍ではないな、などとぶつぶつ呟き出した。何れにしても成功であることは間違いない。そして、
「えっ、もしいきなり7割アップやったら、
大成功なんとちゃう?」
とかすみが指摘するように、まさにその通りである。そして当の神室霊華はと言うと、先程の状態とは違い、何やら力がる感じを受けていた。そして玲から、
「多分ね、今の神室さんなら、
自宅とこことの間の転移は
余裕で出来るはずだよ」
と言うお墨付きをもらった。「早速試してみたら!」とのかすみの提案で、かすみが同行しながら自分で転移を行った。そして数分後に再び戻って来た時には、神室霊華はついにかすみの所に自分から転移で来れるんだと分かった途端、喜びを爆発させた。そして隣にいるかすみに思いっきり抱き着いた。
「師匠!!これで私は何時でも
師匠の所に来れますね!!」
うん、何時でも好きな時に来たらええで、とかすみも嬉しそうにそう口にした。念のため玲は、神室霊華に今の状態を尋ねるも、疲れとかしんどさなどはないと伝えた。一応
「まあ、あまり無理せず少しずつでいいので、
自分がどこまで転移出来るか
確認してくださいね」
と玲は忠告をした。そして、神室霊華の様子を羨望の眼差しで見つめているラハニに向かって、玲は
「ラハニさんも、1年後かな、
その時になったら同じように
レベルアップするからね」
その時は、もう少し長距離の転移が可能になっている筈だよ、と伝えた。その言葉を聞いたラハニは「アリガトウ、レイサン。タノシミニシテマス」と玲に頭を下げてお礼を伝えた。
その後、玲とかすみ、そしてラハニの3人は神室霊華にプレゼントを渡した。かすみから渡されたのは両手で持てるほどの薄い箱である。ただその箱の表には有名なロゴが記されている。
「これはね、うちと玲からのプレゼントやで!
一応うちが選んだものやねんけど、
ホンマはうちが自分で作りたかってん」
「ただなー、まだその力ないから堪忍してや!」と言って神室霊華に箱を渡した。早速神室霊華は「開けていいですか?」とかすみに確認してからその箱の蓋を開けた。中にはミッドナイトブルーのシフォンドレスが収められていた。神室霊華はそれを慎重に取り出し、そして立ち上がって自分にあててみた。それは胸元から裾にかけて柔らかく流れるAラインと肩の所のオフショルダーが特徴で、よく見るとシルバーのが入っている。
「もし霊華さんが似たようなドレス
持っていたら交換してもらうけど、
大丈夫かなー?」
とかすみは心配そうにそう呟くが、神室霊華は
「いいえ、こんな素敵なドレス、初めてです!!」
師匠、有難うございます、と感激で目元を潤ませながら頭を下げてかすみと玲にお礼を伝えた。ラハニはそのドレスをうっとりした目で見つめながら「レイカサン、スゴクステキデス」と口にした。
「ラハニさんの誕生日にも
素敵なドレスをプレゼントするから、
楽しみにしててな」
とかすみから言われた途端、ラハニは「アリガトウゴザイマス」と嬉しそうに微笑みながらかすみにお礼を言った。
そして玲からは、ある物がプレゼントされた。それは金のブレスレットである。ただし、
「ちょっと剥き出しのままでゴメンね。
これは実はね」
と言って説明したのが、そのブレスレット、実は小型のエンペリアンであった。今の玲とかすみには不要であるが、神室霊華やラハニの場合、何時自分の召喚エネルギーが不足するか分からない。そこでこれを身に着けておくことで、普段召喚術を使わないときはブレスレットに召喚エネルギーを補充しておき、いざとなったらその補充されている召喚エネルギーを自分に戻すことで安心して召喚術が出来るようになる。
「使い方はね、ここにスライドスイッチがあってね、
これをこっちにすると召喚エネルギーの預け入れ、
こっちは引き出しになるからね」
との説明を受けた神室霊華は早速ブレスレットを身に着けた。通常はニュートラルの位置にしておき、預け入れの場合自然回復量に相当する分しか預け入れはされないことを伝えた。
「そして、こっちはラハニさん用ね」
と言って玲はラハニにも同じものを渡した。ちなみに、神室霊華とラハニ用で少し構成が異なる。これは自分達の持つ召喚エネルギー量に関係するためである。そして、
「また来年の誕生日位になったら、
僕の方で調整するから、
その時は一時預かりとなるよ」
と2人に伝えた。それともう一つ彼女たちに渡した。
「このカフリング、神室さんは知ってると思うけど、
ラハニさんは初めてだよね」
と玲はラハニに確認した。ラハニは不思議そうにそのカフリングを手に持って眺めているが、神室霊華がそれを耳に装着したのを見て、ラハニも自分の耳に装着した。すると
「ラハニさん、聞こえますか?」
と神室霊華がラハニに向かって囁いた。片方の耳には神室霊華の声は聞こえないが、カフリングを装着した側だけ彼女の声が聞こえたことでラハニは驚いて「レ、レイカサン、レイカサンノコエガ、スグチカクデキコエマシタ」と声を発した。
「ラハニさん、それはね、
うちらが使っている通信機なんよ。
そしてね」
召喚術師だけが使える特殊な通信機だということをかすみは説明した。
「ただね、通信範囲は10キロ位なんやけどね...」
異次元にいてもそれで通信できるんよ、とかすみは伝えた。流石に異次元での通信とは信じられず、ラハニはポカンとしていたが、かすみが霊道に入った時の話や、神室霊華が異空間に迷い込んだ時の話をラハニに聞かせた。
「私も、異空間に迷い込んだ時は
もう戻れないのかと絶望を感じたのですが、
これで玲さんと通話できたときは、
凄く嬉しくて涙がでてきました」
と神室霊華は当時のことを思い出しながらそう語った。そして玲が
「そう言えば試したことないけど、
もしかして霊界でもこれで
通話できたりするのかな?」
と疑問を口にした。するとかすみが、「ほな、ちょい試してみたらええがな!」と言って、早速降霊転移門を設置して、神室霊華とラハニを連れて霊界に向かった。そして暫くすると戻って来たが、神室霊華とラハニの顔には驚きの表情が浮かんでいた。
「玲、どうやら霊界でも使えるみたいやで」
「は、はい。玲さん、霊界でもラハニさんと
普通に会話出来ました!!」
と興奮しながら玲にそう伝えた。
「そうか、まあ、霊界は通常の電子機器は
全て使えなくなるけど、
これは電子機器じゃないからね」
そうすると、常にカフリングは身につけておいた方が良いみたいだね、と玲はかすみにそう伝えた。かすみも頷いて
「何時うちらも霊界に行くか分からへんから、
まあ、それが無難ちゅうことやな」
その後ラハニも神室霊華に自分で作ったネイティブアメリカンの部族に伝わる幸運を呼ぶネックレスを贈った。こうして神室霊華の誕生日会は一旦幕を閉じた。
その後はラハニの送別会となるが、かすみからは送別の品ではないが、こちらもロムリアのショルダーバックをラハニに贈った。これは帰りの荷物にならないように配慮して選んだ品である。そして神室霊華からは、銀座にある行きつけのブティックで買ったブランド物のキャップと財布を贈った。ラハニは感動して、「ミナサン、アリガトウゴザイマシタ」とお礼を述べた。それからアルコールやソフトドリンクを飲みながら、各自思い出話に花を咲かせた。特にラハニの結婚に関しては、かすみと神室霊華が相手とはどこで知り合ったとか、どういう人なのかという話しで盛り上がった。そして2時間程した頃にかすみが、
「そう言えばな、この間玲と話しててんけどな、
うち等M Mのオフィスか、
別荘みたいなもんがそろそろあってもええかな、
と思ったんやけど、どう思う?」
と神室霊華とラハニに尋ねた。すると神室霊華が
「私はあっても良いと思います。
ただですね、オフィスを持つということは、
今の美土路神社の仕事を辞めることになりますね」
と指摘した。当然その点は考えているが、かすみにしても玲にしても、今の仕事を中途半端に投げ出すことはしたくない。そのため、
「うち等としては、やっぱ仕事については
今のままでええか、と思ってんねん」
そうすると別荘一択と言うことになる。だがそうなるとどこに別荘を建てるか、あるいは購入するかとなるが、この点については玲から
「僕らの場合、転移でどこでも行けるから、
わざわざ人の多くいる場所の別荘を
購入する必要はないと思うんだよね」
そんなことしたら、自由に転移出来なくなるしね、との懸念を示した。そして
「それとね、例えば誰も近寄らない
山奥であっても、召喚術を使えば
土地の開墾からログハウスを建てるまでは
問題なく出来ちゃうんだよ」
と言うことを伝えた。
「それやったら、ホンマ、
土地代だけでメッチャ安く済むんちゃう?」
しかも山を丸ごと購入できるんちゃうん?とかすみが指摘するが、まさにその通りである。
「そうすると人里離れた所に
ポツンと建つ訳ですよね」
何だか秘境感があって楽しそうですね、と神室霊華は楽しそうにそんなことを口にした。そしてラハニは、
「アト、オンセンアルト、カンペキデスネ」
と指摘するが、それに対しかすみが「ラハニさん、それ、メッチャええやん!!」とかなり乗り気になって来た。そうなると、どこか人里から離れた温泉が湧き出そうな場所を購入して、そこに別荘を建てる、と言うプランが何やら動き出そうとしていた。ただ残念ながら玲にはそのような場所に心当たりはない。神室霊華に尋ねると、
「温泉と言うことは、
どこかの火山の近くでしょうか」
と言うのだが、そんな都合のいい場所があるのか、と言うことになりそうである。そんな時かすみが玲に向かって
「なあ、玲、あんたの召喚術の中に
温泉を見つける術式とか無いんか?」
と訳の分からないことを尋ねてきたので、玲は「そんな都合のいい術式ある訳ないだろ!!」とかすみに指摘した。だが、
「もっとも、掘削とかは出来るから、
適当に場所を決めて穴を掘って
確認するとかは出来ると思うよ」
とは伝えた。さて思いの外、別荘作りの話題に花を咲かせることになったが、どうやら具体的に動き出し始めることになりそうである。そして、午後5時近くになったところで、神室霊華の誕生日会とラハニの送別会は幕を閉じたのだった。