召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
M M vs. 絵画窃盗団 (最終幕)
その頃、最神玲は追跡していた運送トラックの最終目的地であるビルの地下駐車場に転移して来た。そしてその転移門マーカーを神室霊華に伝え、直ぐに彼女も転移でやって来た。問題の運送トラックは近くに停車していることを確認した。ただし配達員は確か2名いた筈だが、運転席に1名いるだけであり、そのドライバーは今は居眠りの最中である。恐らくもう一人が荷物を届けに向かっているのだろうと推測した玲は、やがて配達を終えて戻って来た配達員に対し、早速魂を分離して尋問を行った。その結果、このビルの20階にある企業に荷物を届けたことが分かったところで、配達員の両手足を召喚した結束バンドで縛り上げて荷台に放り込み、それから魂を戻した。序に運転席で居眠りしているドライバーにも結束バンドで両足を固定し、更に逃げられない様にハンドルに片方の腕を突っ込んだ状態で両手を結束バンドで固定した。一応念のため車のキーは助手席側の床に放り投げておいた。これで配達員たちが逃げ出すことは無いと確認してから、次はいよいよ本丸に突入することになった。
玲と神室霊華はその場で20階のフロアの様子を確認し、消灯されているオフィス内に転移した。そしてある部屋だけ電気がついており、そこに6人いることを確認したところで、その部屋に対し早速降霊召喚門を設置して全員の魂を一度に分離した。神室霊華も最近でこそ漸く魂の分離と同期が出来るようになったが、一度に多数の魂を同時に分離するという玲の鮮やか過ぎる手際を見ると、自分がまだまだだと思うと同時に、玲の持つポテンシャルの高さに惚れ惚れするのだった。
さてそんな思いを抱く神室霊華を他所に、玲はこれから窃盗犯たちの尋問を始めることになるのだが、残念ながら玲が日本語で尋ねても誰一人何も答えてくれなかった。そこで神室霊華にお願いして、英語での尋問を行うことにした。神室霊華も久しぶりに英語を使うためか、「私の英語で大丈夫でしょうか...」と緊張するものの、いざ尋問を始めると相手はスムースに答え始めた。その結果、この窃盗団は世界中の有名絵画の贋作を手掛けており、神室霊華はその数に驚くとともに”まさかあの美術館のあれも偽物なの!!”と更に驚愕した。一応彼らの告白した内容は全て玲が自分のスマホで録音していた。録画ではなく録音なのは、「眠りの小〇郎」の如く本人が寝ているように見えるからであり、その信憑性に疑問を持たれかねないための措置である。まあ、催眠術をかけました、で通じるかも知れないが。
そして全ての贋作は、アメリカやヨーロッパの主要国に置かれているその企業の拠点にて、ここの社長室に備え付けられているような3Dプリンターで作られているという。なおその方法については、別の者が詳細な方法を答えた。そしてどうやって本物とすり替えれたのかについても尋ねた所、絵画を保存するために用意したジュラルミン製のケースの蓋の所に贋作が用意されており、蓋を閉めてからある操作をすると、その贋作が本物の上に覆い被さる様になるという、言われると単純な方法ですり替えられていた。だが、内部を黒いフェルトで覆っているため、ケースの深さを誤認しやすいのだという。
これで玲と神室霊華は必要な情報を手にしたため、この後どう対応するかについてその場で相談することにした。
「神室さんには申し訳ないけど、
ここでの出来事は全て神室さんに
任せちゃうけど良いかな?」
「えー、玲さん、それは酷いですよ!」
と神室霊華は抗議するが、別に後始末を任せるということではない。むしろ今回の功労者として神室霊華が表に立って欲しいということである。やはり玲と物部かすみが対応したというよりも、神室霊華が行ったという方が、世間に対する印象は大きく異なって来る。まあ、何時ものことだから仕方ないか、と神室霊華も諦めたようで、そこでこれからの予定を玲と確認することにした。
まず、かすみに連絡してここの詳細な場所を伝える、その後警視庁の捜査員をこちらに向かわせてもらい、彼らが到着したタイミングで魂を元に戻す。そして、その部屋で問題の絵画を見つけたことで現行犯逮捕する、と言うシナリオである。後は、霊能力者による特殊な能力で彼らを催眠術にかけてこういう情報を聞き出したということで、玲が録音した情報を提供する。勿論この情報に対する証拠能力は無いと思われるが、今後の全貌解明には役立つはずである。そうすれば、日本の警察としては盗まれた絵画を無事確保しただけでなく、窃盗団の逮捕と世界中に存在する贋作の存在を明らかにしたということで、日本の捜査能力の高さを世界に知らしめることが出来るのではと考えた。
早速神室霊華はかすみに電話をし、絵画が運ばれたビルにいることを伝えた。電話を受けたかすみは、直ぐにその場で
「叔父さん! 今神室霊華さんから連絡があって
盗まれた絵が東京都内の○○ビルにあるって!」
とその場で叔父の宗座衛門に伝えた。その時、応接間にて絵画の行方を追っていた県警捜査2課の槙枝は、実は先程警視庁から連絡を受けたばかりであった。ただしその内容は、残念ながらしいものではなく、警視庁の方では首都高速からの行方を一時見失ったようで、今現在急いで料金所の監視カメラ映像をチェックするように捜査員を向かわせている所だという。だが、かすみの報告を聞いた途端、まさか素人集団がそんな正確な場所を見つけられるのか?と半信半疑の状態に陥った。だが、この女性が言うところの霊能力者の能力を我々一般人に置き換えても意味が無いと思うに至り、槙枝は半ば思考停止な状況になりながら、捜査協力をお願いしている警視庁に対し今の情報をそのまま伝えた。
警視庁の捜査員はその情報に基づき急ぎ現場に急行すると、追跡対象のトラックが地下駐車場に停車しいていることを確認した。そして運転室と荷台を確認した所、それぞれの場所に1名ずつ拘束されていことを認めたことで早速2人を確保した。その後20階に向かったところで、霊能力者の神室霊華と名乗る女性の出迎えを受けて、早速問題の部屋に向かうことにした。そして、その部屋に踏み込むや否や、6人の外国人が捜索対象の絵を囲んでお祭り騒ぎをしている状況を確認したところで、その場で全員を窃盗の容疑で現行犯逮捕することになった。
ところで、このとき部屋に居た6人は、何やら気を失ったもののその後何事もなく意識を取り戻したため、改めて祝勝会を開催するところであった。その時、社長室の入口の扉が突然開かれたと思ったら、日本の警察を名乗る十数名の者達に囲まれ、そのまま手錠をかけられた。まさか、自分達の計画が露呈したのか?常に成功を収める勝利の方程式に則っていただけなのに、どこでしくじったのか?と疑念を抱くのだが、今の彼らにはその答えを導く余裕はなかった。
更に彼らに追い打ちをかけるように失意のどん底に陥れたのが、神室霊華がその場で再生した社長ことセルジオの自白であった。まさか、俺がそんなことを自白したのか?と驚愕の表情を浮かべるが、そこに録音されている声と内容は、まさに彼しか知ることのない内容であった。そして、後日改めて現場に乗り込んだ警視庁の捜査員による現場検証の結果、そこで贋作が作られたことを確認するとともに、この6人がICPOから国際的に手配されていた組織のメンバーであることを突き止め、直ちに外交ルートを通じて当該国での贋作被害に関する調査が行われるに至った。
さて無事にデルベッキオの絵画を確保したという一報は、警視庁から○○県の警察本部にも伝えられた。そして神薙家にて捜査を指揮していた捜査2課の槙枝の元にもその情報が直ちに伝えられた。まさか、本当に盗まれた絵画を確保しただけでなく、それを行った組織も拘束したのか?と思うと、何やら複雑な表情を浮かべた。本来なら喜ぶべきことなのだが、残念ながら日本の警察組織による成果ではなく、僅か数名の霊能力者集団によって成し遂げられたことであるため、その心境は複雑であった。ただし、神薙家で連絡役を務めている物部かすみと言い、現地の捜査員に協力した神室霊華と言う著名な霊能力者と言い、彼女達は自分達の成果として誇ることはしないようなのだ。むしろ警察への協力は一般市民の義務です、みたいな感じを受けたのだが、本当にそう受け取って良いのだろうか、彼の心中は複雑極まりない状況を呈していた。とりあえず、かすみに対しては、「捜査にご協力頂き有難うございました」と敬礼しながら感謝の言葉をかけることは忘れなかった。そしてかすみはと言うと、無事事件が解決したことで、長かった一日が終わってホッとしていた。まあ、後のことは警察に任せて、事の真相については後で玲と神室霊華から聞くことにしようということで、叔父の宗座衛門に
「叔父さん、とりあえず無事解決したようなんで、
うちは一度家に戻るね」
と断りを入れて一旦自宅に戻った。
かすみが美土路神社の神職用住宅に転移で戻って来たとき、玲は少し遅い夕食の準備をしているところだった。そこで早速玲にこれまでの経緯を聞きながら、窃盗団がやっていたことの詳細に関する説明を受けた。そして暫くすると、神室霊華が転移でやって来たので、3人で簡単な慰労会を行ったのだった。