召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
M Mの別荘作り (第1幕)
10月の上旬に行われた神室霊華の誕生日会をどこで行うか、と言う話題に端を発したM Mの別荘計画であるが、どうやら本格的に進めることになった。特に普段は余りこういうイベント事に関心を持たない最神玲が、何やら率先して行っている模様だ。なぜ彼がこれほどまでに別荘計画に関心を寄せるのかと言うと、実は彼が今取り組んでいるアーティファクト作りと深く関係している。彼は今年の夏にタチアナことセラスティナによって惑星サモナルドのロムリアに召喚された。そこでセラスティナの指導の下、アーティファクト作りの基礎を身に着けるに至ったのだが、地球に戻ってからも時間を見つけては何やら作っていた。だが、地球での環境、特に美土路神社の自室で何か作業をする場合、どうしてもその狭さがネックになって思うようにらない。特にロムリアから持ち帰った資材の置き場所に難儀をするため、今は仕方なくタチアナの別荘の地下に設けられている実験室にて材料の削り出しと計測を行ったりしていた。だが、所詮は借り物であり、やはり自前でこういう施設が欲しくなるのは時間の問題であった。そんな時にかすみから「そろそろ、うちらのオフィスとかあってもええんちゃう」という話しが舞い込んできたことから、オフィスではなく一層のこと別荘にしようか、となったのだった。そして自分達の別荘であれば、好きなように実験室を設けられるわけで、その為に彼は今積極的にどこに別荘を建てようか考えているのである。
候補地としては、幾つか考えていた。まず、玲とかすみ、そして神室霊華が行き来しやすい所である。まあ、玲とかすみに関しては、それこそ地球の裏側でも問題は無いが、そうすると神室霊華が難儀する。そのため、美土路神社のある差間見町と神室霊華が住む東京との中間地点を先ずは第一候補とした。そこに自分達が希望するような場所が無ければ、少し関東寄りで探そうかと考えている。そしてある程度場所が絞られた段階で、更に人里離れた場所を選ぶことにしていた。やはり、転移で移動することを考えると、人が多く集まる場所はNGである。加えて、山の中に別荘を建てるにしても、そこは私有地であることが絶対条件となる。当然のことだが、国有地や県有地が多く存在する訳で、そんな所に勝手に別荘は建てられない。そう言った条件をクリアした上で、更にもう一つの条件が加わる。それは温泉である。これはラハニの送別会で、ラハニが「オンセンガアルトイイデスネ」との案から出たのだが、当然、玲もかすみも、そして神室霊華も、温泉は大賛成である。従って、購入する山林内に必ず温泉が出ることは、ある意味必須条件となったのだった。だが、この温泉、本来は専門の業者に頼んでボーリング調査をしてもらう必要があるのだが、大体千メートルは掘る必要があるようで、その費用も数千万か、あるいはそれ以上するという。だが、そこは召喚術師の集団であるM M、自前でボーリング調査をすることが可能である。そこで候補地をある程度絞った段階で玲は何十カ所ものボーリングを密かに行った。
その結果ある場所で温泉が湧き出ることを確認した。それもかなりの湯量である。そこでかすみに相談して、そこの土地の購入を決めることにした。ちなみに、山林の購入費用は数百万円である。一見高そうだが、山が3つほど含まれる。なぜそんな価格で売られているかと言うと、その場所、アクセスには全く不便極まりないからである。一般的に、林道などの道路に隣接する山林は当然値段が高くなる。一方、玲とかすみが購入を決めた山林は、一部を除き周囲を国有林に囲まれており、そのため簡単に林道を通すことが出来ない。そうなると、普通にそこを購入してもそこに辿り着くのが簡単ではないのである。そのためにどうしても値段が安くなるのだが、かすみはそれを宝くじの当選金(に偽装したお金)を使って現金で購入し早速手続きを行った。一応購入目的は、自然保護と観察と言うことにしている。確か山林内に建物を建てた場合、その届け出をする必要があるらしいが、玲もかすみも役所に何かを届け出るつもりはない。まさに極秘で建設するつもりなのである。
「どうせやったら、秘密基地にせなな!」
とはかすみの言葉である。と言うことで、彼らの別荘と言うか秘密基地計画は、ここから本格的に動き出すことになった。
温泉が出るポイントを押さえて、その直ぐ傍にログハウスを建てることにした。ところで彼らの別荘となるログハウスであるが、実はまだ具体的な図面が描けていない。いや、それ以前に、建てた別荘が問題なく建ち続けられるのか、その点は全く未知数である。つまり、耐震性がどうなのか、と言うことだ。まあ、ログハウスに耐震設計がどこまで必要かは分からないが、キャンプ場にあるような小さな小屋程度であればその必要はなさそうだ。ところが、彼らが建てようとする別荘は、ともすると山荘ではないかと言うような規模にまで膨れ上がっていた。と言うのは、かすみの案を聞いてみると、
「せやなー、うちとしては、
まず自分達3人の部屋やろ、
あっ! ラハニさんを入れな! ほな4人やな。
それとゲストルームを3つくらいかな。
後はリビングとダイニング...
あっ、そや! うちの趣味の部屋も必要や!」
であった。それに対し玲は「かすみ、趣味の部屋ってなんだよ?」と早速その謎の部屋についてツッコミを入れた。すると、
「そんなん決まってるやんか、
うちの洋服のデザイン工房や」
と言うことのようだ。そしてまた何やら思いついたのか
「あっ、あとな、シアタールームも必要やな!!」
と叫んだため、玲は「それ、必要か?」と尋ねると、かすみは
「あ、当たり前や! 200インチ、いやもっと大画面で
新喜劇の映像を流すねん!」
と言うことのようだ。うーん、新喜劇は別として、まあシアタールームに関しては場合によっては地下に作ればいいか、と考えることにした。一方の玲は、
「そうだね、僕はまあ、
基本はかすみの部屋の案で問題ないけど、
アーティファクトを作る工房は欲しいな」
と言う要望を上げた。尤も、工房に関しては、地下に作る予定にしているため、建屋内に必ずしもある必要はない。あるいは、別棟を設けても問題はないと思っている。そして神室霊華からも要望を聞くことにしたが、特にないという。ただし
「温泉は露天風呂が良いですね」
であった。あと出来れば皆でワイワイと入れる混浴だったら素敵ですね、という何やら普段の神室霊華からは想像できないような積極性のある提案がなされた。これにはかすみは、
「はぁ?霊華さん、混浴って
こいつと一緒に入るねんで」
そんなん無理に決まってるやろ、となぜか猛反対し出した。何時もの神室霊華であれば、師匠の意見に逆らわずにそのまま従うのだが、今回はどうやら少し様子が違うようで
「でも師匠、湯衣とかえば
何も問題ありませんよ」
それに脱衣所や洗い場は別々になるから、何も問題はないということを強調した。かすみもまさかここまで神室霊華が主張してくるとは予想しておらず、だが彼女の言い分も分からなくはないので、「まあ、この件は少し考えさせて」と保留になった。
そして3人の意見をまとめると、自分達の部屋+ゲストルームを3部屋程度+リビングとダイニングとキッチン+トイレ、風呂は露天風呂と言う感じとなった。後はこの別荘を2階建てとするか平屋とするかである。あるいは、ゲストルームを離れにして専用風呂を設けてもいい。そんな案を玲が出すと、
「ほな、うちらの部屋の方を離れにして
専用風呂作った方がええんちゃう?」
との逆提案がかすみら出て来た。神室霊華も、
「そうですね、母屋の方をゲストルームにして、
離れが私達の部屋と言うのは、
何だか面白そうですね」
それこそ木立の中にひっそりと建っていると、まるで隠れ家のような感じにもなりそうですしね、と言う何ともロマンチックな表現で賛成して来た。そして、彼らの部屋を離れにすることのメリットが実はあって、それはM Mのメンバーが増えた時に建て増しするだけで済むことである。母屋の中だと、部屋割りを考え直したりと色々と厄介な問題が出てきそうだが、最初から離れとなっていれば、増えた分建て増しするだけで済むのは大きなメリットと言えようか。まあ、土地は幾らでもあるし、場合によっては平地をさらに広げることは問題ない。そして最終的には、建物に関しては2階建てのログハウスにすることに決まった。なお間取りに関しては、かすみに任せることにした。と言うよりも、かすみの実家の伝手で建築士にお願いして図面を描いてもらうことにした。こうすることで、建物の強度を考慮して設計してくれるということらしい。