召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
M Mの別荘作り (第5幕)
さて、この後は自由時間となるので、各自思い思いの行動をとることにした。と言っても、実は3人共、同じことを考えていたようで、
「先ずは、この近辺の探索やな。
どこに何があるかまだ分からへんもんな!」
とのかすみの言葉の通り、彼らは自分達の購入した山々についてまだ何も知らない。そこで、ちょっとしたハイキングをしようと言うことになった。早速玲は、昼ご飯用に残していた炊飯器のご飯でお握りを作り、後は定番の卵焼きとウィンナーを焼いて、即席の弁当を作った。そして3人は一度それぞれの自宅に戻って着替えをし、再び合流してから早速ハイキングに出掛けることにした。ただしどこに行くにも流石に道が全くないため、小刻みに転移を繰り返しながら進むしかなかったのだが。
「これ、ハイキングちゃうやんかー!」
とかすみは叫ぶが、かと言って、「じゃあ、かすみだけ歩いて来てね!」と言われると、渋々ながら受けざるを得ない。でもそう考えると、何やら遊歩道でも整備した方が良いのかな、と思ったりする。そんなことを玲は2人に相談すると、
「そうですね、どうせ私達だけしか
使わないのであれば、
散歩用に作っても良いかもしれませんね」
と神室霊華は賛同したので、後日改めて遊歩道を作ることにした。ただし、ルートは今日これからのハイキングで決めるつもりである。
ところで、M Mが購入した敷地には、山が3つある。ただしまだ名前がない。そこでかすみが一番高い山を、別荘のある山を、一番小さい山をと名付けた。
「何だよ、かすみ。これじゃあ
僕だけ相撲取りのじゃないかよ?」
しかも一番立派な山を自分の名前にするのはずるくないか、と玲は抗議するが、かすみは
「一応、この敷地はの名義で買うてるしやな、
M Mの代表はうちやから、
そんなんうちが決めるのは当たり前やろ!」
と言いながら玲を睨み付けてくる。その時「あっ、ラハニさんが入ってへん!」とラハニの名前が抜けていることに気づいたかすみは、
「ほな、あれや、最神山を却下で、
ラハニ山にするな!」
と遂に玲の名前が無くなってしまった。もうこうなったらかすみは梃でも動かないことを玲は熟知しているので、お手上げポーズでそのまま黙ってしまった。
そんなことがあった別荘地の山々だが、実はどれも標高としては千メートルは無いので、本格的な登山には向かないところである。ただし、結構急な崖があったりするので、ハイキングだけするのは勿体ない。だが残念ながら、M Mの誰もロッククライミングを嗜むメンバーがいないので、とりあえずこの崖は素通りすることになった。そのうち昼休みを迎えることになったので、彼らが購入した土地の中で一番標高が高い山、通称物部山の山頂に向かうことにした。と言っても眺めが良い訳ではなく、周りは広葉樹林で囲まれた場所であるが、とりあえずそこでランチをしようと言うのだ。
「でもな、玲、こっちの方の木を少し切ったら、
何や見晴らしがよーならへんか?」
とかすみは玲にそう訴えるので、玲は職人を召喚して木を幾つか伐採した。一応その伐採した木は、後でここにウッドデッキを作る材料とすることにした。すると、
「おー、何や、見晴らしええやんか!!」
とかすみが叫んだか、確かに遥か前方にはどこかの街だろうか、建物の集まりが目に入った。
「でも師匠、ここまで遊歩道を通すのは
ちょっと厳しい気もしますね」
と神室霊華が指摘するように、彼らの別荘からここまで山を一つ越えないと来れない。それは流石に歩いて気軽に来るのは厳しい気がするのだった。
「それやったら、転移専用になるんかな~」
とかすみは呟くが、恐らくそうなりそうである。まあ、一応先程伐採した木があるので、それでちょっとしたウッドデッキを作っておくことにした。
「ホンマ、こういう事させるのに、
召喚術って便利やんなー」
とかすみは感想を口にするが、神室霊華はかすみの言葉に大きく頷いた。つい1年前までは漸く召喚術のいろはを知った頃であったが、まさかこういう事が出来るとは想像していなかったのは事実である。
その後歩きと転移を繰り返して敷地全体を見て周った3人は、太陽が西に広がる高い山々の稜線に隠れた頃に別荘に戻って来た。そして玲は早速母屋の暖炉と薪ストーブに薪をくべて火をつけた。やはり高地にある別荘だけあり、この時間でもヒンヤリしている。恐らくこれから更に気温が下がることは予想されるので、早いうちにリビングの暖炉とダイニングの薪ストーブを温めることにしたのだった。そして暫くすると
「私も本格的な暖炉を見るのは初めてですが、
何だか幻想的ですね」
と神室霊華は暖炉に灯る炎を見ながらそんな感想を口にした。部屋の明かりを消すと、暖炉の炎の揺れが丸太の梁に反射して金色の影を作り出したりして、何やら幻想的な光景になったりするのだ。そんな暖炉の炎を見つめながらうっとりした表情のかすみはと言うと
「そやね、焚火とは何かちゃうねんなー」
と何やら薄っぺらい感想を口にするが、そんなかすみは実はそれどころではなく、彼女の頭の中はラハニの結婚式に着て行く衣装をどうするかで占められていた。ところで玲は何をしているかと言うと、今晩のメインディッシュであるすき焼きの準備中であった。ちなみにメインとなる牛肉は、神室霊華が取り寄せた最高級和牛の霜降り肉である。そして玲は他に添える野菜や焼き豆腐などを食べやすい大きさにカットし、後は割り下とたれを準備するだけであった。そして午後7時を過ぎた頃に、かすみはラハニを迎えに再びアメリカに向かった。そして5分もしない内にかすみがラハニを連れて戻って来たとろこで、早速すき焼きの準備を始めた。
「ラハニさん、起きたばかりだけど食べれる?」
とかすみはラハニに尋ねるが、ラハニは「ダイジョウブデス。ケッコウオナカスイテマス」と言うことであった。彼女としたら、夕食が湯豆腐とアジの開きにご飯とみそ汁だったので、確かに質素とというか軽い感じがしただろう。そしてすき焼き鍋の中で肉と野菜が良い感じに煮立ってきたところで、ダイニングテーブルにおいた卓上コンロの上に鍋を載せて全員で「いただきまーす」と唱えてから取り皿に生卵を割って早速すき焼きを楽しんだ。
「うわ~、この肉、メッチャ柔らかいやん。
流石霊華さんが選んだだけあるな~」
「ソウデスネ。コンナニヤワラカイニク、
タベタコトナイデス」
「うんうん、肉もそうだけど、
焼き豆腐や糸こんにゃくも美味しいね」
「皆さん喜んで頂いて嬉しい限りです」
と4人はそれぞれ感想を述べあいながらすき焼き鍋を突っついた。そしてすき焼きあるあるではないが、大抵「その肉私のや!」、「いや、僕がずっと見ていた肉だ!」などと肉を挟んで喧嘩が始まりそうだが、今宵のすき焼きでは、まだまだ肉が残っているので、その心配は無用である。そしてお喋りしながらすき焼きを楽しんだ4人は、その後各自思い思いのことをして過ごすことになった。
かすみは早速リビングの天井に内蔵している電動式の大スクリーンを降ろし、大好きな新喜劇をプロジェクターで投影して鑑賞を始めた。結局専用シアターとはならなかったが、かすみとしてはこれで大満足である。特に、大音量でも隣近所を気にする必要がないのは嬉しい限りである。そんなかすみを不思議そうに眺めていたラハニは、かすみに誘われて隣に座って、かすみが見ている新喜劇を一緒に見ることにした。最初はよく分からなかったが、かすみの大好きな乳首ドリルが始まると、目を丸くして、「アレハセクハラデハナイノカ?」と訴えだした。かすみは「うーん、セクハラとは真逆な気がすんねんけどなー」と曖昧な答えを返すのだが、そのうちラハニもテンポの良さに感心して、かすみと一緒に笑い出した。一方神室霊華はと言うと、玲と一緒に片付けの最中である。だがかすみとラハニの笑い声が気になるようで、玲から「神室さん、見てきてもいいですよ」と言われると、気恥しいものの、お言葉に甘えてと言うことで、早速かすみの傍にやって来て一緒に見だした。そして30分程してから終わったところで、かすみは
「そや、この間、ジーエックスと
呪いの動画から最新作のDVDが
送られて来てんけど、見てみる?」
と言うことで、かすみは先ずはジーエックスの[心霊怪動画蒐―北海道恐怖編―]を再生した。そのDVDは1時間の長さであるが、殆どはかすみと神室霊華が体験した内容である。ただし、玲とラハニは当然その中身と言うか詳細は知らないので、かすみは早速彼らに対して解説を交えながら見ることにした。するとラハニは、
「エッ、カスミサンキエマシタガ」
と絶句した。そこでかすみが丁度霊道に入った所だと解説すると、ラハニは
「アソコガレイドウナンデスネ」
と感心し出した。やがてかすみが居眠りしてビデオカメラが傾いた時、かすみの後ろで立って見ていた玲が
「ほんと、かすみはどこでも寝れるよな。
羨ましいくらいだよ」
と口にした。それを聞いたかすみは、後ろに居る玲の方に振り向いて
「玲さん、うちのことディスろうとしてるんか?」
と凄んできたが、玲は別にそう言う意図は無く、むしろ
「いやいや、どこでも冷静であるからこそ、
寝れるんじゃないの」
とフォローした。ただし、玲の額には汗が滲みだしていたのだが。それよりもかすみは何か言いくるめられた感じがするものの、まあいいかと言うことでラハニに解説の続きをした。そして最後の霊界へ至る門に入る直前で、やはりここに居る4人はその壮絶な光景を目にしたようで、玲は「これは...」と絶句し、ラハニは「......」と無言であった。かすみが大人しくなったラハニの方を振り返ると、ラハニは口を開けて目が点になったまま気絶していたようである。それ程までにましい数の霊体がめいていたのだった。もし自分達と同じ能力を持つ人がこの映像を見たら卒倒しているのかな、とかすみは想像したが、実際に少なからぬ影響を与えていたようである。そしてこの凄さが幸いしたのか、ジーエックスの心霊怪動画蒐の売れ行きは上がったというのだった。