召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
M Mの別荘作り (最終幕)
その後続いて、呪いの動画制作委員会の[呪いの動画コレクションースペシャルエディション]を上映した。こちらは2巻セットで各巻1時間の構成である。そして前半は打たせ湯のような滝での白骨死体の発見と心霊スポットとして有名なトンネル、後は物部かすみが向かった廃施設の模様が中心であった。こちらは、どちらかと言うと心霊映像ではなく、事件の起きた背景の描写が中心のようだ。実際に過去の新聞などを調べてどういった事件が起きたのかを報じながら、何故心霊現象が起きるようになったのかへと話が移行して行く。そして
「うわー、あ、あの映像入れてんのか!!」
とかすみが絶句したのが、佐伯えりに絡まれて脇をられている所である。それを見ていたラハニが
「カスミサン、ドウシタンデスカ?」
とかすみに尋ねるが、かすみは答えることが出来ない。そこで神室霊華がフォローではないが
「師匠は、ちょっと脇の下が敏感なんですよ。
それで過剰に反応されたんです」
と柔らかい表現でそう伝えた。ラハニは不思議そうな表情をしながら、ゆっくりと頷いた。その後はいよいよクライマックスである。いわゆる「ラスボス」の登場である。映像でもはっきりとあの男の顔と姿が捉えられているのを見ると、かすみは改めてあの時の様子を思い出して少し身震いするのだった。そしてかすみの「さっさとあの世に行きや!」との決めセリフと共にその怨霊だけでなく、そこにあった事務机も綺麗に消えた様子は、恐らく見ている者達に衝撃を与えであろうか。そして最後に施設の外で白骨化した死体を発見し、全員が駐車場に集まって遅い昼食を摂る所で前半戦は終わった。早速神室霊華が
「師匠のあの決め台詞、
カッコよかったですよ!!」
と手を叩きながらかすみにそう伝えた。かすみも満更ではないものの、少し照れた様子で「いやー、何やろつい口から出た感じやったな」と答えた。一方玲はと言うと、
「全く、あれ程油断するなと言っていても、
これだからな」
とかすみの頭をポンポン叩いてプチ説教を始めた。かすみが意識を失っていた時の映像が暫し流れていたが、映像でも微かにそこに何かが居るのが見て取れた。だが玲と神室霊華、そしてラハニの目には、かすみに何かを訴えようとしている悲壮感漂う霊体達の必死な姿をそこに見ていた。
次に後半のDVDを鑑賞することになったが、こちらは廃工場と最終日の心霊スポットとなっている橋と初日のトンネルの怪異に関する原因究明編が中心である。廃工場の模様は、主に神室霊華が率いるチームが中心となって構成されているが、これは彼女達が異空間に迷い込んだのである意味当然の編集であろう。その辺の事情を知っているかすみであるが、ここぞとばかりに
「何や、玲、映す価値なしで
出てこーへんがな!!」
ヒャッヒャッヒャッと笑いながら玲にツッコミを入れていた。これは先程のお返しであろう。そして映像はいよいよ問題の部屋に向かうのだが、反対の壁にある扉を開けると再び元の場所に戻っている様子を目にしたラハニが「ヒェッ」と短い叫び声をあげた。そして玲は、一瞬だが映像に映っていたその部屋の鏡の所であの時の霊体が手招きしているのを目にした。”そうか、ああやって異空間に誘っていたんだな”と思うと、やはりあいつ故意にやってたのかと思ったりするし、あるいは助けを求めていたのかもしれないとも見える。今となっては本人は成仏したので確認しようがないのだが。その後神室霊華の一行が外に出た時、確かにいくらいに鳴いていたセミの声が全く聞こえてこない。そして神室霊華が自分の車に乗り込む姿が捉えられ、その後映像は不安に怯える学生達に切り替わった。
「実はこの時、
玲さんとカフリングで連絡出来たことに、
嬉しくて泣いてたんですよ」
と恥ずかしそうに神室霊華はそう口にした。かすみは
「そやな、全く違う世界に迷い込んだ時は、
凄く不安やもんな」
とかつて自分も開かずの間の件で体験済みであるから、神室霊華の不安な気持ちが十分理解できるのだった。それから映像は左右2画面で構成された。左側は神室霊華のチーム、右側は玲のチームである。どちらも同じ場所を移動している様子が捉えられているが、各画面の右下に表示される時間はまさに同じ時間を指しているのがわかることから、全く同じ時間同じ場所にいることは見て取れる演出となっている。まあ、これをやらせだと言ってくる連中は一定数いるだろうが、呪いの動画としてはその点は織り込み済みである。
そしていよいよクライマックスである神室霊華の一行の救出場面となるのだが、その前に神室霊華のチームのメンバー達へのインタビューが差し込まれた。同行していたリポーターの箕山ケイを始め、心霊サークルの学生達も一応目の所にモザイクをかけた状態ではあるが、その時の様子や気持ちを語っていた。神室霊華はこの様子を目にしたのは初めてで、彼女達がどのように感じていたのかを知ったことで、自分の取った行動が間違ってなかったんだということを改めて再認識した。もしあの時絶望に打ちひしがれて自暴自棄になっていたら、この子たち全員もしかしたら命を失っていたかもしれないと思うと、そう考えただけで恐怖で震え出すのだった。そんな神室霊華の様子を目にしたかすみが「霊華さん、寒いんか?」と尋ねるので、神室霊華は今思ったことをかすみに話した。かすみは
「確かにな、冷静さを失くすと
それでアウトやからな。
でもな、冷静さを保つのは
メッチャ大変やと思うで」
よう頑張ったと思うで霊華さん、と神室霊華の強い精神力を褒め称えた。玲も
「うん、最後まで諦めずに、
冷静に判断したのが結果として
良い方向に向いたのは確かだね」
と玲からも褒め称えられると、神室霊華は顔を赤くして「あ、有難うございます」と言いながら俯いてしまった。
そして映像が変わり、神室霊華が無事脱出した場面を玲のチームのカメラマンを務めていたディレクターの藤波のカメラと箕山ケイのカメラの両方の視点でとらえている様子が映し出されるが、見事にその場の臨場感と緊張感を伝えていた。更にその時に撮影していた学生たちの映像も併せて収められており、これだけの映像をフェイクとして作るのは、採算度外視すれば可能だが果たして意味があるか?と言うことを問い掛けているようにも見えた。そして確かにネット上の反応もこの点に絞られた論戦が行われていたのだったが、ここに居る4人はそのことを知る由もないし、そもそも興味はない。
その後は場面が変わって最終日に訪れた心霊スポットの映像となった。まず橋の上から自殺を繰り返す霊体の映像が捉えられており、その後橋の下でも複数体の霊体の存在が映し出されていた。それらの映像に関しては4人は特に何かコメントすることは無く、最後にトンネルに向かう玲達の一行の映像が映し出された。そこはまさに未踏の地を突き進む探検隊の様相を呈していた。かすみは
「うわー、あんなとこ歩いてたんか、君たちは!」
と後ろに居る玲の方を振り向いて嫌悪感丸出しでそう呟いた。玲は
「いやいや、そんな嫌な顔するなよ、かすみ。
結構大変だったけど、面白かったんだよ」
例えばこれ位のヒルがでたりとか、あとマムシもいたなー、などと冗談を飛ばしながら玲はかすみに説明した。勿論マムシは冗談だが、玲の冗談を真に受けたのが神室霊華とラハニである。特に神室霊華は
「マ、マムシって、毒のあるあれですか?」
と真剣な表情で玲に尋ねるが、玲は「すいません、マムシは冗談ですが、ヒルはいましたよ」と頭を搔きながら神室霊華に謝って訂正した。すかさずかすみが、
「全く、玲、話を盛るんやないで!」
と言い終わらない内にマキザッパを召喚して玲を一発しばいた。まあ、これは玲の自業自得である。そして映像の方だが、無事墓石を全て掘りだして元通りにした時、そこに佇む霊体達が安堵の表情を浮かべている様子を4人は見つめていた。
「誰かにここの惨状を知らせたくて
トンネルに出てきたようだけど、
目的が果たせたからかな、まあ、
あれである意味成仏したんだろうね」
「そやな、霊界に行くだけやなくて、
その場で安心できるんやったら、
それも成仏なんやろな」
「でも不思議な感じですね。
あのように安堵の表情を
浮かべる霊体っていうのは」
「ユウレイガコワイトイウイメージハ、
ナクナリマスネ」
4人はそれぞれ思うことをそう口にしたのだった。その後夜も更けてきたので、各自自分達の離れに向かったり、露天風呂に入りに行ったりして、それぞれが好きなように過ごすことにした。なお、ラハニはその後用事があるということで、かすみが彼女をアメリカの自宅まで送って行った。