召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
神室霊華の異世界探求録3の巻: パラレルワールド (最終幕)
この世界に迷い込んだ時に着ていたハイキング時の服装に身を包んだが再び神室邸の応接室に姿を現したのは、神室霊華から今後の方針に関する説明を電話で受けてから2日後の午前のことだった。そして彼が部屋で待つこと5分程した時、応接室の扉が開き、M Mの制服に身を包んだ神室霊華と物部かすみが姿を現した。今日は平日と言うことで、午前中は最神玲が1人で神社業務をするために留守番となり、かすみが神室霊華に同行することになった。そしてまずは神室霊華からかすみを紹介してもらうことになった。ちなみにかすみの役割は、神室霊華のサポート役と言うことになっている。そして、神室霊華は今一度田倉に決意の程を確認した。
「はい、神室様。
私は自分の住んでいた世界に
戻れるのであれば、
寿命位取られても大丈夫です」
と田倉は神室霊華の目をじっと見つめてそう決意を述べた。「では、行きましょうか」と神室霊華の案内に従って3人は神室邸の降霊部屋に向かった。そこには先程神室霊華が設置した降霊転移門が既に用意されているが、残念ながら田倉の目にはただの部屋にしか見えなかった。そのため、
「神室様。これから何処かに向かうと
思ったのですが、ここって
ただ何もない部屋ですよね」
と言うのだが、かすみが「ここから入るねんで」と言ってそのまま歩いて進むと突然消えたため、田倉は驚きの余り腰を抜かしてしまった。「大丈夫ですか?田倉さん」と神室霊華が声を掛けて漸く我に返った田倉は、何とか起き上がりつつ、かすみが消えた空間をじっと見つめていた。そして神室霊華に促されるまま、覚悟を決めて一歩を踏み出した。そして神室霊華も後に続き、3人は霊界に入ったのだった。
田倉は急に目の前が暗くなり、更に霧の濃い世界に迷い込んだことに驚き、隣にいる神室霊華に声を掛けようとした。だが自分の声が聞こえないことで、パニックに陥りそうになった。そんな時神室霊華は、早速円空を呼び出した。
「紀霊華様、物部かすみ様、
そしてメイランド様、
何か御用でしょうか?」
と円空が突然現れて自分の名前を呼ばれたことで、田倉はほぼ意識を失いかけていた。それを見たかすみが
”やば、あいつ気ぃ失いかけてるやんか!”
と言うことで手元にマキザッパを召喚し、それで田倉を一発しばいた。それで何とか気が付いたようで、神室霊華から
「円空さん、こちらの方の住んでいた世界に
この方をお連れしたいのですが、
どこに門を設置すれば良いのか
教えて頂けませんか?」
と円空に尋ねると、「かしこまりました。ただし...」と言うことで、神室霊華は田倉に向かって、
「田倉さん、この方にあなたの寿命の
1年分を差し上げることになります。
それであなたの居た世界への門を
設置することが出来ますが、
如何しますか?」
と田倉に再度質問を投げた。田倉は驚きの連続で正常な思考が出来るのか怪しい所があったが、自分の世界に帰れるのであればと言うの望みのお陰か、大きく頷いて「お願いします」と心中でそう答えた。すると円空が「では、頂戴します」と言って田倉の頭に両手を触れた。そして、「ではこれからご案内します」と言って円空を先頭に3人は後に続いた。暫く進んだところで、「ここになります」と指差した所に神室霊華は早速降霊転移門を設置した。そして念のため外を確認すると、普通に空気がある場所であったので、神室霊華は円空にお礼を言って3人はその降霊転移門に足を踏み入れた。
そこは、ごく普通の、だが結構大きな公園の中である。場所を早速かすみが転移門でサーチすると、
「おー、ここ日本っぽいけど...そっか、
こっちだと亜米利加共和国やったっけ...
あーもうややこしい!」
と愚痴を零すが、どうやらパラレルワールドのどこかの国であるようだ。そして神室霊華が何やら見覚えがあるのかある方向に歩き出すので、かすみと田倉はその後をついて行くことにした。そして5分程歩いた時、その公園の名前を記した看板を3人は目にした。そこには[加利福尼亜公園]と書かれていた。それを見たかすみは
「か、かり、ふく、へ、何でやねん!
ちゃうやん。さんやから、に、か。
後は......うーん読めへん。霊華さん分かる?」
とかすみは遂に諦めて神室霊華に振った。神室霊華は「多分カリフォルニアの漢字表記ではないかと思いますが...」と言いながら後ろから来ていた田倉にそう声を掛けた。その時の田倉は、目をかっと見開いたまま微動だにせずその看板を見つめていた。そしてそのうちに、目から大粒の涙が零れてきたが、その涙をぬぐうことなくただじっとその看板を見つめ続けていた。そして
「や、や、やっと、帰ってこれたんだー」
と呟きながらその場にれてしまった。どうやら、彼の故郷のある世界に無事戻れたようだ。ところで、かすみは
「なあ、霊華さん。何でここに
この看板があることを知ってたん?」
との疑問を神室霊華に尋ねた。すると、
「ここはですね、都内でも有名な
公園の1つなんですよ。だから、
もしかしてと思ったのですが...」
どうやら政治や文化などは異なるものの、地理的な状況はこの世界も自分達の世界も変わらないようである。
その後念のために3人は、田倉ではなくメイランドの自宅を確認することにした。もしかして、田倉本人が居るのか、あるいはそこで生活していた痕跡があるのではと考えたのだ。そして歩く事20分程で、彼が住んでいたマンションにやって来た。
「ここです! ここが私が住んでいた所です!」
と言うや否や、先ずは玄関先にあるポストを確認しに向かった。そしてそこには確かに自分の名前が書かれていることを確認すると、安堵の表情を浮かべた。そして3人はオートロック玄関を抜けてそのままメイランドの部屋に向かった。そこもどうやら暗証番号によって部屋の鍵を開錠するシステムのようで、しかも全く同じ番号で開錠された。そして中に足を踏み入れると、そこは典型的な1ルームタイプの部屋であり、更に確かについ先ほどまで誰かが生活していた痕跡があった。例えば、居間のローテーブルに置かれた食べかけのカップ麺からは湯気が立ち昇っていたり、窓際に置かれたテレビは見たことのない番組を放映中であった。それを見たメイランドは、
「ここで暮らしていた田倉さんも、
私と同じように心細かったのでしょうね」
と今はどこにも見当たらない田倉をってそんな感想を口にした。神室霊華は、
「私達も向こうに戻ったら
田倉さんの様子を見ておきますから、
メイランドさんは安心してください」
と伝えた。そしてかすみが「ほな、そろそろ戻ろか?」と神室霊華に声を掛け、神室霊華も頷いたところで、2人はメイランドと別れの挨拶をして外に出た。メイランドは、2人に深々とお辞儀をして見送った後、机の上に置かれている写真盾を手に取った。そこには恋人と一緒に撮った写真が飾られているが、早速メイランドは恋人に連絡を取ることにした。
「ところでな、霊華さん、
折角この世界に来てんから...」
と言われると、やはりあそこに寄らない訳にはいかない。この世界の最神玲がどんな風になっているのかがかすみも神室霊華も凄く気になるのだ。そこで美土路神社を探して早速転移して向かった。
美土路神社の社務所には玲らしき人物が1人で仕事をしていた。だがその風貌を見たかすみと神室霊華は、目を丸くした。そして
「何なん、あいつ。
めっちゃ、ワイルドやんか! ははは」
とかすみが笑いながらそう指摘するように、この世界の玲は茶髪のロン毛で、しかもを蓄えていた、まさにワイルドな印象を彼女達に与えた。早速かすみと神室霊華はその世界の玲をスマホで撮影し、更に
「この世界は言葉が通じんねんから、
ちょい、あっこの玲と話しせえへん?」
とかすみは神室霊華を誘って社務所に向かった。今まで訪れた世界はどこも自分達の言葉が全く通じない世界ばかりであった。だがこの世界は、先程のメイランドもそうだが、基本的に自分達が使う日本語が通じるのだ。そのためかすみは、この世界の玲と会話を試みることにした。
そして10分後、かすみと神室霊華はこの世界の玲と別れて神社の本殿に向かってとぼとぼと歩いている。しかもかすみの顔は生気が無くなったように、沈痛な面持ちであった。何があったのか?
「まさかな、この世界にうちがおらへんって、
ちょっマジ、ショックやし、へこむわ...」
「でも、あそこの玲さんはかすみさんを見ても
驚きも何もしなかったですものね」
「もしあれが演技やったら、あいつマジでしばいたる!」と息巻くが、心の底ではむなしさと寂しさを感じていた。だが、
「あっ、でも師匠。これで私たちの居る世界に
違う世界の玲さんやかすみさんが
現れないことの理由は分かりましたね」
と神室霊華が指摘するように、実は別の世界の玲やかすみが自分達の世界に現れた痕跡が全くなかったのだ。平日であれば美土路神社で玲もかすみも仕事をしているが、その痕跡は美土路神社にはなかった。そしてこの事実は、自分達が当初考えていたこの世界とあの世界の人間が入れ替わるという説、その説の根底が覆されたことを意味する。なぜなら、今この世界にはかすみがそもそも存在していないからである。だが納得のいかないかすみは、
「ただな、もう一つの可能性があってな、
それはうちがこの世界にいる間は、
元々居たうちの存在が
玲の記憶から消されてるっちゅうことも
あるんちゃうかと思うねんけどな...」
ただしかすみのこの説を裏付ける根拠はどこにも存在しないし、記憶が消されていたという証明はそれこそに思えてならない。ここで2人であれこれ考えても何も進展しないし、それこそ袋小路に突き当たって身動きが取れなくなる。それよりも、もっと重大な事に2人は気づいた。
「そ、そうなると、田倉本人は
どないなってんねやろな?」
であった。尤も、メイランドの自宅を訪れた時、そこには誰かが居た痕跡が残っていたのでまだ望みはある。そこでかすみと神室霊華は急ぎ元の世界に戻るために降霊転移門から霊界に向かった。
さて、何とか元の世界に戻って来たかすみと神室霊華は、やはり田倉本人がどうなったかが気になったので、直ぐにかすみの転移で東京都内のあの公園に向かった。そしてかすみと神室霊華は、その公園の看板を見にやって来た。すると、
「おー、公園ちゃうで、
いの、いのあたま?うーん、
霊華さんこれ何て読むん?」
とかすみは再び神室霊華に助けを求めた。
「ここは井の公園です。
あるいは単に井の頭公園とも呼んでいます。
でもまさか、この公園が別の世界では
加利福尼亜公園とは、不思議ですね」
とかすみに伝えるが、かすみも確かに不思議な感じを受けたのだった。それから2人は田倉が住むマンションまで急ぎやって来た。そのマンションはメイランドが住むマンションと完全にそっくりではないが、階数や部屋数は同じようだ。そして念のためポストを確認するとそこには[田倉]の文字が書かれていた。その時丁度中から住人が外に出てきたので、2人はそのままオートロック玄関を抜けて中に入った。そして問題の部屋の前にやって来た所で神室霊華がインターホンを押した。暫くすると中から「はい」との声が聞こえたので、神室霊華は「田倉友信さんでしょうか?」と尋ね、ここに来た経緯を簡単に伝えた。そして玄関扉が開けられた時、神室霊華とかすみはそこに田倉友信本人の姿を確認したのだった。